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人事担当者向け|くるみん・えるぼし申請の教科書【完全版】
2025.07.23
採用活動で「選ばれる企業」になるための切り札として、「くるみん」「えるぼし」認定の取得を検討している担当者様へ。これらの認定は、働きやすい環境の証明となり、企業の魅力を飛躍的に高めます。実は、この申請には押さえるべき”コツ”があり、それを知っているかどうかで、手間や成功率が大きく変わります。
本記事では、認定取得への最短ルートとなる申請のコツを余すところなくご紹介。ライバル企業に差をつける一歩を踏み出しましょう。
1. くるみん・えるぼし認定は難しくない!プロが教えるマニアックな申請ポイント4選
こんにちは!企業の働きやすさの証である「くるみん」と「えるぼし」の認定取得を目指す担当者の皆さんに向けて、一歩踏み込んだ申請のコツをお届けします。「申請って何だか難しそう…」と感じている方もご安心ください!この記事を読めば、見落としがちな重要ポイントが分かり、自信を持って準備を進められるようになりますよ。
くるみん・えるぼし認定の取得は、決して一部の大企業だけのものではありません。むしろ、中小企業の皆さんこそ、この認定を会社の魅力としてアピールする絶好のチャンスなんです。厚生労働省が管轄するこれらの認定は、国が定めた基準をクリアした証であり、採用活動や企業イメージの向上に絶大な効果を発揮します。
まずは、それぞれの認定制度について簡単におさらいしましょう。この基本をしっかり押さえておくことが、後のマニアックなポイントを理解する近道になりますからね!
くるみん認定とは?子育てサポート企業の証
くるみん認定は、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣から認定を受けることができる制度です。これは、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づいて、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための行動計画を策定し、その計画に定めた目標を達成するなどの一定の要件を満たした企業が受けられます。
シンボルマークの赤ちゃんがおくるみに包まれているデザインは、会社が従業員の子育てを温かくサポートしているイメージを表しています。このマークを自社のウェブサイトや求人票に掲載することで、「この会社は子育てに理解があるんだな」と一目で伝えることができるんです。
くるみん認定には、通常の「くるみん」の他に、より高い水準の取り組みを行っている企業が認定される「プラチナくるみん」、さらに不妊治療と仕事の両立にも取り組む企業向けの「トライくるみん」や「プラチナくるみんプラス」といった種類があります。まずは「くるみん」の取得を目指し、ステップアップしていくのが王道の進め方ですよ。
えるぼし認定とは?女性活躍推進企業の証
一方、えるぼし認定は、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づいて、女性の活躍推進に関する状況が優良な企業が認定される制度です。
えるぼし認定は、5つの評価項目(1.採用、2.継続就業、3.労働時間等の働き方、4.管理職比率、5.多様なキャリアコース)のうち、満たした項目数に応じて3段階の評価が与えられます。星の数が多いほど、より高いレベルで女性が活躍している企業であることの証明になります。一番星(1~2項目を満たす)、二番星(3~4項目を満たす)、そして最高ランクの三番星(5項目全てを満たす)とステップアップしていきます。
さらに、えるぼし認定企業の中でも、より高い水準を満たした企業は「プラチナえるぼし」の認定を受けることができます。えるぼし認定は、女性が能力を発揮しやすい職場環境であることを客観的に示す強力なツールとなるため、特に女性の採用を強化したい企業にとっては見逃せない制度ですね。
両制度の共通点と申請のメリット
くるみん認定とえるぼし認定、どちらも「一般事業主行動計画」の策定・届出・周知・公表が申請の第一歩となる点は共通しています。つまり、両方の認定を同時に目指すことも十分に可能なんです。
これらの認定を取得するメリットは計り知れません。まず、何と言っても公共調達での加点評価が受けられる点は大きいでしょう。官公庁の入札に参加する企業にとっては、受注の可能性を高める直接的なメリットになります。例えば、各府省庁が行う総合評価落札方式の調達では、ワーク・ライフ・バランス等推進企業として加点評価が受けられます。
また、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」といった低利融資制度の対象になる場合もあります。資金調達の面でも有利になる可能性があるのは嬉しいポイントですよね。
そして何より、採用活動における絶大なアピール力です。「くるみん」や「えるぼし」の認定マークは、「この会社は従業員を大切にしている」「働きやすい環境が整っている」という信頼の証です。優秀な人材、特にライフイベントを見据える若い世代や女性にとって、企業選びの重要な判断材料になることは間違いありません。
さあ、基本的な知識はバッチリですね!ここからはいよいよ本題、申請を成功させるためのマニアックなポイントを深掘りしていきましょう!
2. 【くるみん・えるぼし申請のキモ】差がつく!「一般事業主行動計画」の具体的な立て方
くるみん・えるぼし申請の全ての土台となるのが「一般事業主行動計画」です。この計画の出来栄えが、認定の可否を左右すると言っても過言ではありません。ここでは、ただ計画を立てるだけでなく、認定審査で「おっ!」と評価される「計画」にするためのマニアックなコツを解説していきます。
行動計画とは、簡単に言えば「うちの会社は、従業員の働きやすさ向上のために、いつまでに、何を、どうします!」という宣言書のようなものです。この宣言書の内容が具体的で、本気度が伝わるほど、認定の可能性はグッと高まりますよ。
計画期間の絶妙な設定方法
まず最初に悩むのが「計画期間をいつからいつまでに設定するか」ですよね。実はこの期間設定、かなり戦略的に決める必要があるんです。
実績作りの期間を確保する
くるみん認定やえるぼし認定の申請には、「計画期間内の実績」が必要になります。例えば、くるみん認定の男性育休取得率7%以上という基準は、「計画期間内」に達成していなければなりません。
ありがちな失敗が、計画開始日を「届出日」の直前に設定してしまうケースです。例えば、2025年7月に計画を策定し、届出をしたとして、計画期間を「2025年7月1日~2027年6月30日」と設定したとします。この場合、実績として評価されるのは2025年7月1日以降の取り組みになります。もし、その直前の2025年6月に男性社員が育休を取得していても、それは残念ながら実績にはカウントされません。
そこで、マニアックなポイントです。計画開始日は、ある程度遡って設定することが可能です。例えば、2025年7月に計画を策定・届出する場合でも、計画期間を「2025年4月1日~2027年3月31日」のように、届出日より前の日付からスタートさせることができるのです。これにより、すでに達成済みの実績を計画期間内に含めることができ、スムーズな申請につながります。ただし、あまりに遡りすぎると不自然なので、一般的には数ヶ月程度が常識的な範囲でしょう。
計画期間は「2年以上5年以下」で
計画期間は、次世代法・女性活躍推進法ともに「2年以上5年以下」で設定するのがルールです。短すぎると実績を作る時間がありませんし、長すぎると目標が間延びしてしまいます。
おすすめは「2年」または「3年」です。特に初めてくるみん・えるぼし認定に挑戦する企業の場合は、2年計画で一度サイクルを回してみるのが良いでしょう。短期間で目標達成の経験を積むことで、次のステップ(プラチナくるみん等)にも進みやすくなります。例えば、「2025年4月1日~2027年3月31日」といった年度区切りの2年計画は、経理処理や人事評価のサイクルとも合わせやすく、管理がしやすいですよ。
「周知」の証拠、どう残す?
行動計画は、策定しただけではダメで、「社内の全労働者に周知」することが義務付けられています。そして、申請時には「周知したことが客観的にわかる証拠」を提出しなければなりません。「周知しました」と口で言うだけでは、残念ながら認めてもらえないのです。
では、どのような周知方法が「証拠」として有効なのでしょうか?後から証明しやすい具体的な方法と、その記録の残し方をご紹介します。
最強の証拠は「イントラネット掲載」
多くの企業で導入されている社内イントラネットやグループウェアは、周知の証拠作りに最適です。
具体的な方法としては、
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一般事業主行動計画の全文(PDFファイルなど)をイントラネットに掲載する。
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その掲載ページのスクリーンショットを撮る。このとき、「掲載日」や「URL」、「誰が閲覧できるページか」が分かるように撮影するのがポイントです。
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可能であれば、全従業員に「行動計画を掲載しました」という通知を、イントラネットの掲示板機能やメールで一斉送信し、その送信履歴も保管しておくと完璧です。
スクリーンショットは、ただ撮るだけでなく、印刷して「一般事業主行動計画を周知した際の資料」としてファイリングしておきましょう。
アナログだけど確実な「書面配布」と「掲示」
IT環境が整っていない事業所がある場合や、全従業員がPCを使うわけではない職場では、昔ながらのアナログな方法も有効です。
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書面での配布: 全従業員に計画書を印刷して配布します。この場合、「いつ、誰に配布したか」が分かるように、受領サインをもらうのが最も確実な証拠となります。もしくは、配布した日付と対象者を明記した業務報告書を作成し、上長(例:人事部長)の承認印をもらっておくのも良いでしょう。
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事業所での掲示: 従業員が必ず見る場所、例えば事務所の掲示板や食堂、休憩室などに計画書を掲示します。この場合、掲示している様子の写真を撮っておくことが証拠になります。写真には、掲示場所がどこか分かるように周囲の様子も写し込み、撮影日を記録しておきましょう。掲示期間を明記した上で、掲示開始日に写真を撮るのがおすすめです。
研修や説明会での周知も効果的
新入社員研修や管理職研修、全社ミーティングなどの場で、行動計画について説明するのも非常に良い方法です。この場合は、以下の3点を証拠として残しましょう。
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研修資料: 説明に使用したスライドや配布資料そのもの。行動計画の概要や目標が記載されているページを残します。
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議事録: 研修や会議の議事録に、「一般事業主行動計画の周知について」という議題と、説明内容の概要、質疑応答などを記録します。
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参加者名簿: いつ、誰がその説明を聞いたのかを証明するために、参加者のリストは必ず保管しておきましょう。
これらの方法を複数組み合わせることで、より強固な「周知の証拠」となります。くるみん・えるぼしの申請では、こうした地道な記録がものを言うのです。
具体的で測定可能な目標設定のコツ
行動計画の心臓部とも言えるのが「目標設定」です。「女性管理職を増やす」「男性の育休取得を促進する」といった曖EMI(曖昧模糊とした、意味のない)な目標では、計画とは言えません。審査官が見たいのは、誰が見ても達成度が客観的に判断できる、具体的で測定可能な目標です。
定量目標と定性目標を使い分ける
目標には、数値で測れる「定量目標」と、数値化は難しいけれど重要な取り組みである「定性目標」があります。くるみん・えるぼし認定で評価されるためには、少なくとも1つ以上、定量目標を設定することが必須です。
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悪い例(曖昧な目標):
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育児休業を取得しやすい環境を作る。
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女性が活躍できる機会を増やす。
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長時間労働を削減する。
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良い例(具体的で測定可能な目標):
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目標1: 計画期間内に、男性の育児休業取得率を20%以上にする。
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目標2: 2027年3月末までに、管理職(課長級以上)に占める女性の割合を15%以上にする。
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目標3: 計画期間内に、全従業員の月平均所定外労働時間を10時間未満にする。
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いかがでしょうか?良い例は、期間(いつまでに)、対象(誰の)、指標(何を)、水準(どれくらい)が明確ですよね。これが「測定可能」な目標です。
自社の現状分析から目標を立てる
いきなり高い目標を掲げても、達成できなければ意味がありません。まずは自社の現状を正確に把握することから始めましょう。
例えば、女性管理職比率を目標にするなら、まず現在の女性管理職の人数と、管理職全体の人数を調べて比率を計算します。仮に現在8%だったとしたら、「2年後に10%を目指す」というのは現実的な目標かもしれません。そのためには、毎年1人ずつ女性管理職を登用する必要がある、という具体的なアクションプランも見えてきます。
男性の育休取得率も同様です。過去1年間の実績を調べてみましょう。もし0%なら、まずは「取得者1名以上」を目指すのが最初のステップです。そのために、男性社員向けの育休セミナーを開催する(定性目標)といった対策とセットで計画に盛り込みます。
このように、現状分析(As-Is)と、あるべき姿(To-Be)のギャップを埋めるための具体的な数値目標とアクションプランを設定することが、評価される行動計画の秘訣です。
3. 意外な落とし穴?くるみん認定における「男性育休取得率」の正しい計算方法
くるみん認定の大きな関門の一つが、男性の育児休業等取得率です。多くの担当者さんが「うちは取得者ゼロだから無理…」と諦めかけたり、計算方法を間違えて基準を満たせなかったりするケースが後を絶ちません。
しかし、ご安心ください!この計算、実はちょっと複雑なだけで、ルールを正しく理解すれば、意外な形で基準をクリアできる可能性が潜んでいるんです。ここでは、担当者が陥りがちな計算の落とし穴をマニアックに解説します。これを読めば、あなたの会社の隠れた実績が見つかるかもしれませんよ!
「育児休業等」に含まれる休暇の範囲
くるみん認定の計算で使う「育児休業等」という言葉の「等」が、最大のポイントです。これは、育児・介護休業法に定められた「育児休業」だけを指すのではありません。
会社の独自休暇が武器になる!
多くの担当者が見落としているのが、会社が独自に設けている「育児目的休暇」も実績に含められるという点です。例えば、以下のような休暇制度はありませんか?
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配偶者出産休暇(いわゆる「パパ産休」)
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子の看護休暇(法定とは別枠の有給休暇)
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入園式・卒園式休暇
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学校行事参加休暇
これらの休暇が、くるみん認定の「育児休業等」として認められるには、いくつかの条件があります。
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就業規則等に制度として明記されていること: 口約束や慣例ではNGです。就業規則や育児介護休業規程に、休暇の名称、目的、対象者、取得単位などがきちんと書かれている必要があります。
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小学校就学前の子の育児を目的とすること: 休暇の目的が「育児」であることが明確でなければなりません。
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複数日の取得が可能であること: ここがマニアックなポイントです!例えば、「配偶者出産時に連続5日間の休暇を取得できる」という制度の場合、くるみんの基準では取得日数が1日としてカウントされてしまいます。一方、「配偶者出産時に合計5日間の休暇を、出産予定日から1ヶ月の間に分割して取得できる」という制度であれば、実際に取得した日数がカウントされます。例えば、2日と3日に分けて取得した場合、合計5日の取得として認められる可能性があるのです。
もし、あなたの会社に「配偶者出産休暇3日間」という制度があったなら、それを実績としてカウントできるのです。仮に育休取得者がゼロでも、この休暇を取得した男性社員が2人いれば、「取得者数2名」として計算できる可能性があります。諦めるのはまだ早いですよ!
分母・分子の対象者、誰を入れる?
取得率の計算は「(分子)育休等を取得した男性労働者数 ÷ (分母)配偶者が出産した男性労働者数」という式で行います。この分母と分子に誰を含めるのか、という定義が非常に重要で、間違えやすいポイントです。
分母(配偶者が出産した男性労働者数)の正しいカウント方法
分母は、「計画期間内」に配偶者が出産した男性労働者の数です。ここで注意すべき点をリストアップします。
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退職者の扱い: 計算期間中に配偶者が出産したが、その後退職した男性社員も分母に含める必要があります。これは見落としがちなので要注意です!「もう辞めた社員だから…」と除外してしまうと、労働局から指摘が入ります。
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雇用形態: 正社員だけでなく、契約社員やパートタイマーなどの有期契約労働者も、原則として分母に含めます。ただし、日々雇用される者は除きます。自社で雇用する全ての労働者が対象、と覚えておきましょう。
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出向者の扱い:
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自社から他社へ出向している人: 出向元(つまり自社)と出向先の両方で雇用契約がある場合、主に給与を支払っている方の労働者としてカウントします。自社が給与の大部分を支払っているなら、分母に含めます。
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他社から自社へ出向してきている人: 上記と同様、主に給与を支払っているのが自社であれば、分母に含めます。
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申告ベースでOK: 誰の配偶者がいつ出産したか、会社が全てを把握するのは難しいですよね。これは、従業員からの申告(例えば、慶弔金の申請や扶養家族の変更届など)に基づいて把握している範囲で問題ありません。ただし、くるみん申請を機に、社内で出産報告のフローを整備しておくことを強くお勧めします。
分子(育休等取得者数)の正しいカウント方法
分子は、上記の分母の対象者のうち、計画期間内に育児休業または育児目的休暇を取得した男性労働者の数です。
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退職者の扱い: 分母と同様、期間中に育休等を取得した後に退職した人も、分子に含める必要があります。
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複数回取得した場合: 1人の男性が、第1子の育休を取得し、さらに計画期間中に第2子が生まれてその子の育休も取得した場合、これは「1人」としてカウントします。分子はあくまで「人数」でカウントするためです。
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育休と独自休暇の両方を取得した場合: 1人の男性が、育児休業を1ヶ月取得し、さらに会社の独自制度である配偶者出産休暇も3日取得した場合も、カウントは「1人」です。
この分母と分子の定義を正確に理解し、対象者をリストアップすることが、くるみん認定の第一歩です。人事データと睨めっこして、対象者を慎重に洗い出してみてください。もしかしたら、あなたが思っているよりもずっと良い数字が出るかもしれませんよ!
4. えるぼし認定の星を増やす!「女性活躍に関する情報公表」のマニアックなコツ
えるぼし認定は、獲得する「星の数」で評価レベルが変わります。どうせなら、一つでも多くの星を獲得して、三つ星(★★☆)や、その上のプラチナえるぼしを目指したいですよね!その鍵を握るのが、「女性の活躍に関する情報公表」です。
これは、女性活躍推進法に基づき、自社の女性の活躍状況に関する情報を、求職者などがいつでも見られるように公表する義務です。えるぼし認定の申請では、この公表した項目の中から、基準値をクリアした項目の数で星の数が決まります。ここでは、星を増やすための効果的な情報公表のテクニックを深掘りします。
どの項目で勝負する?公表項目の戦略的な選び方
情報公表は、大きく分けて2つのグループの項目から、合計で2項目以上(従業員301人以上の企業の場合。300人以下は1項目以上)を選んで公表する必要があります。
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グループA:職業生活に関する機会の提供に関する実績 (例:採用した労働者に占める女性労働者の割合)
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グループB:職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績 (例:男女の平均継続勤務年数の差異)
この中から、どの項目を選んで公表し、えるぼしの評価項目として申請するかが、星の数を決める戦略のキモになります。
まずは自社の強みを知ることから
やみくもに項目を選ぶのではなく、まずは自社の現状をデータで把握し、「これなら基準をクリアできそうだ」という強みのある項目を見つけ出すことが重要です。人事データを洗い出し、各項目の数値を実際に計算してみましょう。
例えば、長年勤めている女性社員が多いのであれば、「男女の平均継続勤務年数の差異」は有利な項目かもしれません。えるぼし認定の基準では、男性の平均継続勤務年数に0.7を掛けた数値よりも、女性の平均継続勤務年数が大きい場合に基準クリアとなります。仮に男性が12年、女性が9年なら、12年 × 0.7 \= 8.4年 < 9年となり、見事クリアです。
比較的クリアしやすい「狙い目」の項目
「うちの会社、どの項目もパッとしない…」という場合でも、諦めるのは早いです。比較的多くの企業が実績をアピールしやすい「狙い目」の項目がいくつかあります。
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労働者の一月当たりの平均残業時間: これは、えるぼし認定の評価項目「3. 労働時間等の働き方」に関連します。基準は「各月45時間未満」です。働き方改革が進む中で、この基準をクリアしている企業は多いのではないでしょうか。くるみん認定の準備で残業時間データを集計していれば、そのデータをそのまま活用できます。
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有給休暇取得率: こちらも「3. 労働時間等の働き方」に関連し、基準は「70%以上」です。もし全社での達成が難しくても、「部署ごとの有給休暇取得率」を公表し、基準をクリアした部署の実績でアピールすることも可能です。
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育児休業取得率: これはくるみん認定と共通の項目であり、「2. 継続就業」の評価に関連します。えるぼしでは「男女計」の取得率が問われますが、女性の取得率が非常に高い企業が多いため、男性の取得率が低くても、全体として高い数値(基準は70%以上)を達成しやすい項目です。くるみん申請の準備で算出したデータを有効活用しましょう。
これらの項目は、日々の労務管理でデータを把握しやすく、取り組みの成果が数値に現れやすいのが特徴です。まずはこのあたりから自社の状況を確認してみることをお勧めします。
「女性の活躍推進企業データベース」の効果的な活用法
算出した実績値は、自社のウェブサイトに掲載するだけでなく、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」に登録・公表することが強く推奨されています。ここに登録することで、えるぼし認定の申請がスムーズになるだけでなく、会社の魅力を多くの求職者にアピールする絶好の機会になります。
ただ数値を入力するだけではもったいない!
このデータベース、実は単に数値を入力するだけの無機質なものではありません。「事業主からのメッセージ」や「行動計画の概要」などを自由に記述できる欄があるのです。ここを戦略的に活用しない手はありません。
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具体的な取り組みをストーリーで語る: 例えば、「女性管理職比率」の数値を公表するだけでなく、自由記述欄に「当社では、女性社員向けのリーダーシップ研修を年2回実施し、メンター制度を導入した結果、この2年間で女性管理職が3名誕生しました!」といった具体的なストーリーを書き加えましょう。数値の裏にある企業の努力が伝わり、見る人の共感を呼びます。
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写真やグラフで視覚的にアピール: データベースには、企業のPRシート(PDF形式)をアップロードできる機能があります。ここに、社内の様子が分かる写真(例:活躍する女性社員、育休から復帰した男性社員と上司のツーショットなど)や、実績の推移を示すグラフなどを盛り込むと、格段に分かりやすく、魅力的な情報になります。
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キーワードを意識する: 求職者が企業を探す際に検索しそうなキーワード(例:「育休復帰率100%」「時短勤務」「フレックスタイム」など)を、自由記述欄に盛り込んでおくのも、地味ながら効果的なテクニックです。
このデータベースは、未来の優秀な社員候補が見ている可能性が高い場所です。えるぼし認定のためだけでなく、採用ブランディングの一環として、情熱を持って作り込むことを強くお勧めします!
5. 【くるみん・えるぼし】これで完璧!申請書類作成と労働局への提出の裏ワザ
計画を立て、実績をクリアしたら、いよいよ申請です。くるみん・えるぼし認定の申請は、最後の詰めが肝心。せっかく頑張って準備したのに、書類の不備で手戻りが発生しては、時間も労力ももったいないですよね。ここでは、最後のステップでつまずかないために、書類作成と提出に関する実践的な裏ワザをご紹介します。
記載漏れを防ぐ!申請様式のセルフチェックポイント
くるみん・えるぼし認定の申請様式は、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。一見すると複雑そうに見えますが、ポイントを押さえれば大丈夫。提出前に、以下の点を必ずセルフチェックしてください。
共通のチェックポイント
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社印・代表者印の捺印漏れ: これが一番多い、うっかりミスです。申請書には、会社の角印や代表者の実印を押す箇所があります。電子申請の場合でも、電子署名が必要です。提出前に、印鑑や署名が正しい場所に押されているか、必ず確認しましょう。
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行動計画の期間と申請対象期間の一致: 申請書に記入する「行動計画の期間」と、実績を算出した「評価期間」が、策定した行動計画と一致しているか、何度も確認してください。日付が1日でもずれていると、差し戻しの対象になります。
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添付資料の抜け漏れ: 申請書だけでなく、様々な添付資料が必要です。
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一般事業主行動計画の写し
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行動計画を周知したことがわかる資料(イントラネットのスクリーンショット、研修議事録など)
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実績を証明する根拠資料(各指標の計算に用いた対象者リスト、賃金台帳の写しなど)
これらが全て揃っているか、チェックリストを作って確認すると確実です。
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くるみん申請特有のチェックポイント
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男性育休取得率の計算根拠: 申請書に記載した取得率の計算過程がわかる資料を添付する必要があります。「分母(配偶者が出産した男性労働者)のリスト」と「分子(そのうち育休等を取得した男性労働者)のリスト」をExcelなどで作成し、誰が対象で、誰が取得したのかが一目でわかるようにしておきましょう。個人情報にはマスキング処理を忘れずに。
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独自休暇制度の規程: 会社の独自休暇を実績に含める場合は、その制度が明記された就業規則や関連規程の該当ページの写しを必ず添付します。
えるぼし申請特有のチェックポイント
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情報公表の証拠: 「女性の活躍推進企業データベース」に公表した場合は、そのページのスクリーンショットや、自社サイトに掲載した場合はそのURLとページの写しを添付します。公表日が行動計画期間内であることも重要です。
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各評価項目の実績の根拠資料: 申請する評価項目ごとに、基準をクリアしていることを証明する資料が必要です。例えば、「管理職比率」なら組織図と役職者名簿、「残業時間」ならタイムカードの集計データや給与明細の写し(該当部分のみ)などが考えられます。
これらのチェックを丁寧に行うことで、労働局の担当者が審査しやすい、完璧な申請書類が完成します。
労働局との「事前相談」を120%活用するコツ
いきなり完成した書類を郵送(または電子申請)するのも良いですが、私が強く、強くお勧めするのは、管轄の都道府県労働局への「事前相談」です。これは、申請前に担当者に書類をチェックしてもらい、アドバイスをもらえるという、非常にありがたい機会です。これを活用しない手はありません。
事前相談のメリットとは?
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書類の不備を未然に防げる: 専門家である担当者の目でチェックしてもらうことで、自分では気づけなかったミスや、根拠資料の不足などを指摘してもらえます。本申請での手戻りをほぼゼロにできます。
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解釈の難しい部分を確認できる: 「この独自休暇は育休等に含まれますか?」「このケースの労働者は分母に含めますか?」といった、マニュアルだけでは判断に迷う部分を、直接確認できます。これにより、自信を持って申請ができます。
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担当者との良好な関係構築: 事前に顔を合わせて相談することで、こちらの本気度も伝わります。もちろん審査は公平に行われますが、スムーズなコミュニケーションが取れる関係を築いておくことは、決してマイナスにはなりません。
事前相談を成功させるマニアックな準備
ただ「教えてください」と丸腰で行くのではなく、準備を万全にして臨むことで、相談の効果は120%に高まります。
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予約を取る: 労働局の雇用環境・均等部(室)に電話をし、「くるみん・えるぼし認定の事前相談をしたい」と伝えて、必ずアポイントメントを取りましょう。担当者は多忙なので、突然の訪問はNGです。
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持ち物を完璧に揃える:
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記入済みの申請様式(ドラフトでOK)
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添付予定の資料一式(行動計画、周知の証拠、計算根拠資料など)
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質問事項をまとめたメモ
「ここまで準備してきました」という姿勢を見せることが重要です。
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質問リストを用意する: 事前に、確認したい点を具体的にリストアップしておきます。「男性育休取得率の分母のAさんは、Bという理由で対象外と考えていますが、この解釈で合っていますか?」のように、Yes/Noで答えられるクローズドクエスチョンと、自社の状況を説明した上で「この場合、どのような資料を追加すればより分かりやすくなりますか?」といったオープンクエスチョンを織り交ぜると、的確なアドバイスが引き出しやすくなります。
事前相談は、いわば無料のコンサルティングを受けるようなものです。この機会を最大限に活用し、万全の態勢で本申請に臨みましょう!くるみん・えるぼし認定取得は、もう目の前ですよ!
6. まとめ:くるみん・えるぼし取得は計画性が命!担当者の体験談と最終チェックリスト
今回は、くるみん・えるぼし申請の少しマニアックなポイントを4つに絞ってご紹介しましたが、いかがでしたか?「何だかやることが多くて大変そう…」と感じたかもしれません。しかし、一つ一つのステップを分解して、計画的に準備を進めれば、決して難しいことではありません。重要なのは、何と言っても「事前準備」と「計画性」です。
最後に、この記事の要点を振り返りつつ、皆さんの申請準備を力強く後押しする、私の体験談とオリジナルのチェックリストをお届けします!
【担当者体験談】私がハマった落とし穴と成功の秘訣
これは、私が以前、中小企業の人事担当者として初めて「くるみん認定」に挑戦した時のお話です。当時、私たちの会社では、男性の育児「休業」の取得者はゼロ。男性社員は多かったものの、配偶者が出産しても、数日間の有給休暇を取るのが慣例でした。
「男性育休取得率7%なんて、絶対に無理だ…」。私は完全に諦めムードでした。社長からも「くるみん認定、取れたらいいな」とは言われていましたが、具体的な協力が得られるわけでもなく、孤独な戦いでした。
そんな時、藁にもすがる思いで参加した社会保険労務士さん向けのセミナーで、「独自休暇も実績になる」という話を聞いたのです。「まさか!」と思い、急いで会社の就業規則を確認しました。すると、そこには「配偶者が出産した際、特別有給休暇として3日間を付与する」という一文があったのです!私が入社するずっと前からある規定で、誰もその価値に気づいていませんでした。
これはいけるかもしれない!私は色めき立ち、過去1年間の特別休暇の申請記録を洗い出しました。すると、対象となる男性社員8人のうち、なんと5人がこの休暇を取得していたのです!
しかし、次なる壁は労働局への説明でした。本当にこの実績で認められるのか不安だった私は、勇気を出して労働局に事前相談のアポを取りました。ボロボロの就業規則と、手書きでまとめた取得者リストを持って相談に臨んだ私に、担当者の方はとても丁寧に教えてくれました。「この規定なら、育児目的休暇として認められますよ。ただ、申請時には対象者と取得日がわかる一覧表を、もう少し綺麗にまとめて添付してくださいね」と。
この一言で、私の目の前はパッと明るくなりました。その後、アドバイス通りに資料を整備し、無事に申請。約2ヶ月後、労働局から「認定決定通知書」が届いた時の感動は、今でも忘れられません。諦めかけていた「くるみんマーク」が、自社のウェブサイトに掲載された時は、本当に嬉しくて、少し泣いてしまいました。
この経験から私が学んだのは、「諦めずに情報を集めること」と「専門家を頼ること」の重要性です。あなたの会社にも、まだ気づかれていない「お宝」が眠っているかもしれませんよ!
【独自コンテンツ】くるみん・えるぼし申請・最終確認チェックリスト
さあ、最後の仕上げです!申請書類を封筒に入れる(または送信ボタンを押す)前に、この最終チェックリストで抜け漏れがないか確認してくださいね。
□ 行動計画は完璧?
□ くるみん認定:育休取得率の計算は正しい?
□ えるぼし認定:評価項目と公表はOK?
□ 申請書類・全般
このリストが全てチェックで埋まったなら、あなたは自信を持って申請できます!
くるみん・えるぼし取得のその先へ
くるみん・えるぼし認定は、取得がゴールではありません。それは、あなたの会社が「従業員を大切にし、誰もが働きやすい職場を目指し続ける企業である」という社会への宣言です。認定を維持し、さらにプラチナくるみんやプラチナえるぼしといった高みを目指すことで、企業の価値はさらに向上していくでしょう。
この記事が、あなたの会社のくるみん・えるぼし認定取得への道のりを、少しでも明るく照らすことができたなら、私にとってこれ以上の喜びはありません。頑張ってください!心から応援しています!

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。