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一度は訪れたい京都の名店!洋食「くるみ」の絶品ランチ4選
2025.10.26
古都・京都の風情ある街並みに佇み、地元の人々から世代を超えて愛され続ける洋食店「くるみ」。その温かい雰囲気と、どこか懐かしいのに新しい絶品の洋食は、多くの食通を虜にしてきました。
この記事では、そんな名店「くるみ」の数あるメニューの中から、特におすすめしたい逸品を徹底解説。なぜこの店が選ばれ続けるのか、その秘密が料理の中に隠されています。
1. 京都の洋食好きが通う名店「キッチン くるみ」
長年愛される、その歴史と温もり
京都という街は、千年以上の歴史が息づく一方で、新しい文化も柔軟に受け入れてきました。そんな古都の片隅、例えば多くの観光客で賑わう四条河原町の喧騒から少し離れた、地元の人々が日常的に行き交う静かな路地に、洋食の名店「キッチン くるみ」はひっそりと、しかし確かな存在感を放って佇んでいます。
創業は昭和45年(1970年)。先代の店主が「京都の人々の日常に、心から美味しいと思える洋食を届けたい」という一心で開いた小さなお店がその始まりでした。当時はまだ、家庭で本格的な洋食を食べる機会も少なかった時代。そんな中で「くるみ」が提供する、丁寧に作られたハンバーグやオムライスは、地元の人々の心と胃袋を瞬く間につかんだのです。店名の「くるみ」は、硬い殻の中に美味しい実が詰まっている様子と、お客様を温かく「包み込む」ようなお店でありたいという、二つの想いを込めて名付けられたと聞きます。
以来、半世紀以上にわたって、この京都の地で変わらぬ味を守り続けてきました。代替わりを経た今も、その厨房には先代から受け継がれたレシピと、料理への真摯な姿勢が脈々と息づいています。私が訪れた日も、親子三代で訪れているであろうご家族が、思い出話に花を咲かせながら食事を楽しんでいました。京都に住む人々にとって「くるみ」は、単なる飲食店ではなく、家族の歴史の1ページを彩る大切な場所なのかもしれません。
扉を開ければ、そこは昭和レトロな空間
カラン、とドアベルが鳴る音に迎えられ、一歩足を踏み入れると、そこはまるで時が止まったかのような、温かい昭和レトロの世界が広がっています。磨き上げられたダークブラウンの木製カウンター、少し色褪せたチェック柄のテーブルクロス、そして壁には京都の風景を描いたであろうセピア色の写真や、常連客から贈られたであろう可愛らしい絵画が飾られています。
店内は決して広くはありません。カウンター席が7席ほどと、4人掛けのテーブル席が3つ。そのコンパクトさが、かえって店主との距離を近く感じさせ、アットホームな雰囲気を醸し出しています。厨房からは、ジュージューと何かを焼く心地よい音と、デミグラスソースの香ばしくも甘い香りが漂ってきて、席に着いた瞬間から食欲が最高潮に達してしまいます。
使い込まれて角が丸くなった椅子に腰を下ろすと、ふっと心が安らぐのを感じます。奇をてらった装飾は何一つありませんが、すべての調度品が長年大切に使われてきたことが伝わってきて、まるで親しい友人の家に招かれたかのような、不思議な居心地の良さに包まれるのです。この空間こそが、「キッチン くるみ」が京都で長年愛され続ける理由の一つなのでしょう。
なぜ「くるみ」は京都で選ばれるのか
京都には、星の数ほどの飲食店が存在します。伝統的な京料理の老舗から、最新のトレンドを取り入れたレストランまで、その選択肢は無限大です。その中で、なぜ多くの人々が「キッチン くるみ」の洋食を求めて足を運ぶのでしょうか。
一つは、先ほども触れた「変わらない味」への絶対的な信頼感でしょう。いつ訪れても、あの頃食べた感動がそこにある。その安心感が、人々を惹きつけてやみません。また、その料理は、決して派手さはありませんが、一つ一つの素材選びと、気の遠くなるような丁寧な下ごしらえに裏打ちされた「本物の味」です。例えば、料理に使われる野菜は、店主が毎朝、京都の中央市場まで足を運び、自身の目で見て納得したものだけを仕入れるというこだわりようです。
そしてもう一つ、特筆すべきはそのコストパフォーマンスの高さです。これほどまでに手間暇をかけた料理でありながら、価格は驚くほど良心的。これは、「美味しい洋食を、お腹いっぱい食べて幸せな気持ちになってほしい」という、創業以来変わらないお店の哲学の表れに他なりません。京都の食通たちが最終的にこの「くるみ」に戻ってくるのは、味、雰囲気、そして価格という三つの要素が、奇跡的なバランスで調和しているからに違いありません。
2. 肉汁の洪水!京都「くるみ」の看板メニュー「特製ハンバーグ」
合挽き肉の黄金比率と繋ぎの秘密
国産牛とブランド豚の出会い
「キッチン くるみ」のハンバーグを前にして、まず驚かされるのはそのふっくらとした厚みと、ナイフを入れた瞬間に溢れ出す圧倒的な肉汁です。この肉汁の洪水の源泉は、徹底的にこだわり抜かれた合挽き肉の配合比率にあります。
店主にお話を伺ったところ、使用しているのは国産黒毛和牛のA4ランクのネック(首肉)と、京都府内で育てられたブランド豚「京丹波高原豚」のバラ肉。牛肉は赤身の旨味が強く、豚肉は脂の甘みと融点の低さが特徴です。その配合比率は、牛肉7に対して豚肉3。この「7:3」という比率こそが、牛肉のしっかりとした食感と肉々しい旨味を感じさせつつ、豚肉のジューシーな脂が全体をまろやかにまとめ上げる、まさに黄金比率なのです。
さらに驚くべきは、その挽き方。通常、合挽き肉は一度に挽いてしまいますが、「くるみ」では、牛肉は旨味を閉じ込めるために8mmの粗挽きに、豚肉は滑らかな食感と脂の甘みを引き出すために5mmの細挽きにと、別々の粗さで挽いているのです。この一手間が、口の中で肉の存在感をしっかりと感じさせながらも、決して硬くならず、ふんわりととろけるような独特の食感を生み出しているのです。
玉ねぎの甘みを最大限に引き出す炒め方
ハンバーグの味わいを左右するもう一つの重要な要素が、繋ぎとして使われる玉ねぎです。多くの店では、食感を残すために軽く炒める程度ですが、「くるみ」のこだわりは尋常ではありません。
使用するのは、淡路島産の玉ねぎ。その糖度は一般的な玉ねぎの1.5倍とも言われ、熱を加えることで驚くほどの甘みに変化します。その玉ねぎを粗みじんにした後、厚手の銅製フライパンに入れ、まずは中火で水分を飛ばしながら透明になるまで炒めます。そして、ここからが真骨頂。火力を極弱火に落とし、焦がさないように細心の注意を払いながら、木べらで絶えず混ぜ続けること、なんと45分。
すると、あれほど白かった玉ねぎは、美しい琥珀色に変わり、キャラメリゼされて甘い香りを放ち始めます。この「あめ色玉ねぎ」こそが、ソースに頼らずとも肉だね自体に深いコクと自然な甘みを与える、最大の功労者なのです。この工程を毎日欠かさず行うというのですから、その情熱には頭が下がる思いです。
ふっくら感を演出するパン粉と卵
肉と玉ねぎを繋ぐ役割を果たすパン粉と卵にも、一切の妥協はありません。パン粉は、ふっくらとした焼き上がりになるよう、近所のベーカリーに特注しているという生パン粉を使用。それを、ただ混ぜ込むのではなく、あらかじめ京都・美山牛乳に10分ほど浸しておくのです。これにより、パン粉が肉汁をたっぷりと吸い込み、焼き上げてもパサつくことなく、しっとりジューシーな仕上がりになるのです。
卵は、京都府船井郡京丹波町にある「みずほファーム」の、濃厚な味わいが特徴の「葉酸たまご」を贅沢に使用。この卵が、肉だね全体に豊かなコクを与え、力強い肉の旨味を見事にまとめ上げています。
数日仕込みの秘伝デミグラスソース
ベースとなるフォン・ド・ヴォー
「くるみ」のハンバーグを語る上で、この秘伝のデミグラスソースを避けては通れません。その仕込みは、なんと5日間にも及ぶという、まさに職人技の結晶です。
すべての基本となるのが「フォン・ド・ヴォー」。仔牛の骨とスジ肉をオーブンで香ばしく焼き上げた後、玉ねぎ、人参、セロリといった香味野菜と共に寸胴鍋に入れ、水を加えてアクを取りながら、弱火でコトコトと煮込むこと丸2日間。この工程で、骨の髄から溶け出したゼラチン質と、野菜の旨味が凝縮された、黄金色の出汁が完成します。このフォン・ド・ヴォーこそが、ソースに深いコクと奥行きを与える土台となるのです。
赤ワインがもたらす深いコクと香り
フォン・ド・ヴォー作りの傍ら、別の鍋ではソースの色と香りの要となる工程が進められます。小麦粉をバターでじっくりと炒めて作る「ブラウンルー」に、大量の赤ワインを注ぎ、アルコールを飛ばしながら煮詰めていきます。使用するワインは、渋みが穏やかで果実味豊かなフランス・ブルゴーニュ産のもの。この赤ワインが、ソースにフルーティーな酸味と芳醇な香りを加え、味わいを一層複雑で魅力的なものへと昇華させるのです。
ここに、裏ごししたフォン・ド・ヴォーと、完熟トマトを煮詰めて作った自家製のトマトフォンデュを加え、さらに2日間、火にかけ続けます。焦げ付かないよう、鍋の底から丁寧にかき混ぜ、煮詰まってはフォン・ド・ヴォーを足し…という作業を繰り返すことで、ソースは徐々に濃度を増し、漆黒の輝きを放ち始めるのです。
仕上げの隠し味
最終日、5日目。いよいよソースが完成します。最後に加えられるのが、ほんの少しのビターチョコレートと、京都の老舗醸造所の醤油。チョコレートがカカオのほろ苦い香りとコクを加え、醤油が全体の味を引き締め、日本人の舌に馴染む、どこか懐かしい味わいを生み出すのだそうです。こうして完成したデミグラスソースは、濃厚でありながら決してしつこくなく、ハンバーグの肉の旨味を最大限に引き立てる、唯一無二の存在となるのです。
最高の焼き加減!鉄板の上で踊る肉汁
丁寧に成形されたハンバーグは、まず高温に熱した厚さ2cmの鉄板で、両面に一気に焼き色を付けます。この工程で表面のタンパク質を凝固させ(メイラード反応)、旨味たっぷりの肉汁を内部に完全に閉じ込めるのです。
その後、鉄板ごと200℃のオーブンへ。ここで約8分間、じっくりと中まで火を通していきます。オーブンで焼くことで、熱が均一に伝わり、外は香ばしく、中はふっくらとした理想的な状態に仕上がります。焼き上がりの合図は、ハンバーグの中心部がぷっくりと膨れ上がり、表面に透明な肉汁が滲み出てきた瞬間。このタイミングを見極めるのが、長年の経験で培われた職人の勘なのです。
焼き上がったハンバーグは、熱々の鉄皿に乗せられ、目の前で例のデミグラスソースがかけられます。ジュワッという音と立ち上る湯気、そしてソースの焦げる香ばしい匂い。この五感を刺激する演出もまた、「くるみ」のハンバーグが人々を魅了してやまない理由の一つと言えるでしょう。
3. ふわとろ卵の向こう側へ!「くるみ」の絶品オムライスの隠し味とは?
奇跡の食感を生む卵へのこだわり
京都・美山町の平飼い卵
洋食の華ともいえるオムライス。「キッチン くるみ」のオムライスは、チキンライスをすっぽりと覆う、鮮やかな黄色のドレスをまとっています。スプーンでそっと切れ目を入れると、内側から半熟の卵がとろりと流れ出し、見る者の心を鷲掴みにします。この奇跡的な“ふわとろ”食感の主役は、言うまでもなく卵です。
「くるみ」が使用しているのは、京都府のほぼ中央に位置する自然豊かな美山町で、ストレスのない環境で育てられた鶏が産む平飼いの有精卵。その名も「うちゅうの夜明け」。鶏たちは、非遺伝子組み換えのトウモロコシや、地元で採れた米ぬか、おからなどを配合した自家製の発酵飼料を食べて育ちます。そのため、この卵は黄身の色が非常に濃く、箸でつまんでも崩れないほどの弾力と、雑味のない濃厚なコクを持っているのが特徴です。
このプレミアムな卵を、一人前のオムライスに贅沢にも3個使用。注文が入ってから、冷蔵庫から取り出したばかりの冷たい卵をボウルに割り入れ、白身を切るように、しかし混ぜすぎないように、菜箸で15回だけかき混ぜます。この「15回」という数字が、白身のコシを残しつつ、黄身と程よく混ざり合い、加熱した際に絶妙な半熟感を生み出すための、長年の研究の末にたどり着いた最適解なのだそうです。
絶妙な半熟を操る職人の火加減
卵液には、美山牛乳と、コクを出すための生クリームを少量加えます。そして、いよいよ職人技が光る焼きの工程へ。火にかけるのは、使い込まれた直径20cmの鉄製フライパン。まずは強火でフライパンを煙が出る直前まで熱し、そこにバターと多めのサラダ油を投入。油がバターの焦げ付きを防ぎ、卵を滑りやすくする役割を果たします。
熱々のフライパンに卵液を流し込むと、「ジューッ!」という音とともに、縁から一気に固まっていきます。ここからはまさに秒単位の戦い。フライパンを絶えず揺すりながら、菜箸で素早く全体をかき混ぜ、半熟のスクランブルエッグ状にします。そして、卵の8割が固まった絶妙なタイミングで火から下ろし、フライパンの柄をトントンと叩いて卵を先端に寄せ、美しい紡錘形に整えていくのです。この間、わずか30秒。この一連の流れるような作業から生み出されるオムレツは、外側は薄くしっかりと焼かれているのに、内側はクリームのようにとろりとした、完璧な状態に仕上がっています。
チキンライスに隠された味のハーモニー
鶏肉の部位と下ごしらえ
ふわとろの卵を受け止めるチキンライスもまた、主役級のこだわりが詰まっています。具材の鶏肉には、柔らかくジューシーな鳥取県産の「大山どり」のもも肉を使用。皮を取り除き、余分な脂肪を丁寧に処理した後、1.5cm角にカットします。これを、塩、胡椒、そして少量の白ワインで下味を付けておくことで、肉の臭みが消え、ふっくらと仕上がるのです。
玉ねぎとマッシュルームは、バターでじっくりとソテーし、甘みと香りを引き出しておきます。ご飯は、少し硬めに炊いた京都丹後産のコシヒカリを使用。お米一粒一粒がソースをまとっても、べちゃっとしないようにするためです。
ケチャップだけじゃない!味の決め手は…
チキンライスの味付けのベースは、もちろんトマトケチャップです。しかし、「くるみ」では、市販のケチャップをそのまま使うことはありません。酸味と甘みのバランスが異なる3種類のケチャップを独自にブレンドし、そこに自家製のトマトソースと、ハンバーグのデミグラスソースを作る過程で出るフォン・ド・ヴォーを少量加えるのです。
これにより、単なるケチャップ味ではない、複雑で奥行きのある味わいが生まれます。そして、全体の味を引き締める“隠し味”として投入されるのが、なんと赤味噌。ほんの少量加えることで、発酵食品特有のコクと塩味がプラスされ、味にぐっと深みが増すのだとか。この意外な組み合わせこそ、「くるみ」のチキンライスが、どこか懐かしいのに他では決して味わえない、唯一無二の存在である理由なのです。
デミグラスソースとのマリアージュ
完成したチキンライスの上に、先ほどのふわとろオムレツをそっと乗せ、中央にナイフで切れ込みを入れれば、とろりとした黄金の絨毯が広がります。そして、その上からかけられるのが、あの特製デミグラスソースです。
ただし、オムライスにかけるソースは、ハンバーグのものと全く同じではありません。卵の繊細な風味を邪魔しないよう、フォン・ド・ヴォーで少しだけ濃度を伸ばし、バターを加えてまろやかさをプラスするという、細やかな調整が施されています。
濃厚なコクがありながらも、後味はすっきりとしたデミグラスソース。卵の優しい甘みと、複雑な旨味を持つチキンライス。これら三位一体となった時、口の中はまさに至福の空間と化します。スプーンが止まらなくなる、とはまさにこのこと。京都が誇る洋食の名店「くるみ」の、計算され尽くした一皿です。
4. これぞ職人技!京都の洋食店「くるみ」で味わう”サクとろ”カニクリームコロッケ
衣のサクサク感を生み出す二つの要素
粗さが違う二種のパン粉
洋食店の実力が如実に表れるメニュー、それがカニクリームコロッケです。「キッチン くるみ」のカニクリームコロッケは、まずその見た目の美しさに目を奪われます。きつね色に揚がった俵型のコロッケは、衣の剣立ちが見事で、いかにもサクサクしていそうな雰囲気を醸し出しています。
その食感の秘密は、パン粉にあります。使用しているのは、なんと粗さの違う2種類の生パン粉。一つは、ザクザクとした力強い食感を生み出すための粗挽きのパン粉。もう一つは、口当たりを軽くし、油切れを良くするための細挽きのパン粉。この二つを「6:4」の割合でブレンドすることで、最初のひと噛みで「サクッ!」という小気味よい音が響き、その後は軽やかな食感が続くという、理想的な衣が生まれるのです。
さらに、バッター液(小麦粉、卵、水を混ぜたもの)にくぐらせた後、この特製パン粉を付ける際にも工夫があります。一度付けた後、軽く手で押さえて衣を密着させ、5分ほど冷蔵庫で休ませるのです。この工程により、揚げている最中に衣が剥がれてしまう「衣泣き」を防ぎ、中のクリームが流れ出すのを防ぐ効果があるそうです。
油の温度管理と揚げ時間
完璧な衣を最高の状態で仕上げるためには、揚げる際の油の温度管理が極めて重要になります。中のクリームは既に火が通っているため、高温で短時間で揚げるのがセオリーですが、それだけでは表面だけが焦げてしまいます。
「くるみ」では、二度揚げという手法を取っています。まず、170℃の中温の油で、コロッケを投入してから1分30秒。ここで表面を固め、衣に薄く揚げ色を付けます。そして一度油から引き上げ、3分間休ませて余熱で中までじっくりと火を通します。この間に、油の温度を180℃まで上げ、再びコロッケを投入。そこから30秒間、高温で揚げることで、衣に含まれた余分な水分を飛ばし、あの感動的なサクサク感を生み出すのです。この緻密な時間管理と温度調整こそ、まさに職人技と言えるでしょう。
濃厚ベシャメルソースの秘密
北海道産バターと牛乳のコク
カニクリームコロッケの命は、何と言っても中のベシャメルソースです。「くるみ」のベシャメルソースは、驚くほど滑らかでクリーミー。そのベースとなる材料は、北海道根釧地区の生乳を100%使用した発酵バターと、同じく北海道産の濃厚な牛乳です。
厚手の銅鍋に発酵バターを溶かし、そこに同量の小麦粉を加えて、焦がさないように木べらで丁寧に炒めていきます。この「ルー」を作る工程が非常に重要で、ここで粉っぽさが残ってしまうと、仕上がりの舌触りが悪くなってしまいます。弱火でじっくりと5分ほど、ルーがサラサラの状態になるまで火を入れるのがポイントです。
そこに、人肌に温めた牛乳を少しずつ加えては、泡立て器で素早く混ぜ合わせる、という作業を繰り返します。一度に大量の牛乳を加えるとダマになりやすいため、この手間を惜しまないことが、シルクのようになめらかなベシャメルソースを作るための秘訣なのです。
カニの風味を凝縮するひと手間
主役であるカニには、甘みが強く繊維がしっかりとした鳥取県境港産の紅ズワイガニの身を、惜しげもなく使用しています。しかし、「くるみ」のこだわりはそれだけではありません。なんと、カニの身だけでなく、その殻からも出汁を取っているのです。
カニの殻をオーブンで香ばしく焼き、香味野菜と共に煮出して作る「フュメ・ド・クラブ(カニの出汁)」。この旨味のエキスを、牛乳の一部と置き換えてベシャメルソースに加えることで、口に入れた瞬間にカニの芳醇な香りが鼻腔を突き抜ける、非常に風味豊かなソースが完成するのです。さらに、ソテーした玉ねぎの甘みと、隠し味に加える少量のナツメグが、全体の味を引き締め、カニの風味を一層引き立てています。
滑らかさを保つための冷却時間
たっぷりのカニの身と合わせたベシャメルソースは、バットに流し入れ、表面にぴったりとラップをして、冷蔵庫で一晩(約8時間)かけてゆっくりと冷やし固めます。急激に冷やすと水分が分離してしまい、食感が損なわれるため、この「待つ」時間も美味しさには欠かせない工程です。
翌日、しっかりと固まったソースを1個あたり80gに切り分け、丁寧に俵型に成形していきます。この時、手の温度でソースが溶け出さないよう、手早く作業を進める必要があります。一つ一つ愛情を込めて成形されたコロッケは、最高の状態で揚げられるその時を待つのです。京都の洋食店「くるみ」でしか味わえない、手間暇の結晶がここにあります。
5. 懐かしいのに新しい!「くるみ」のナポリタンが愛され続ける理由
もちもち食感!2.2mmの極太麺
メニューに「スパゲッティ ナポリタン」の文字を見つけると、なんだか無性に嬉しくなるのは私だけでしょうか。昔ながらの洋食店の定番でありながら、その実力は千差万別。「キッチン くるみ」のナポリタンは、そんな期待を遥かに超える、まさに逸品です。
まず特徴的なのが、その麺。使用しているのは、ボルカノ社製の2.2mmという極太のスパゲッティです。この太さが、もちもちとした独特の食感と、食べ応えを生み出しています。そして、特筆すべきはその茹で方。アルデンテが良しとされるイタリアンパスタとは一線を画し、表示時間よりも2分長く茹で、一度冷水で締めた後、サラダ油を絡めて一晩寝かせるという「寝かせ麺」にしているのです。
この工程により、麺の表面のデンプン質が変化し、ソースが絡みやすくなるだけでなく、炒めた時にアルデンテとは違う、日本人好みの香ばしくもっちりとした食感が生まれます。京都の老舗洋食店「くるみ」がたどり着いた、ナポリタンのための最適解がこの極太寝かせ麺なのです。
甘みと酸味の絶妙なケチャップソース
複数のケチャップをブレンド
ナポリタンの味の心臓部であるケチャップソース。「くるみ」では、もちろん自家製です。しかし、それは単にトマトを煮詰めたものではありません。ベースとなるのは、完熟トマトの甘みが強いカゴメの「特級ケチャップ」と、酸味とスパイス感が特徴的なハインツの「トマトケチャップ」。この二つを「7:3」の割合でブレンドすることで、甘みと酸味、そして香りのバランスが取れた、深みのある味わいを生み出しています。
さらに、生のトマトを湯むきして種を取り、じっくり煮詰めた自家製のフレッシュトマトソースを加えることで、フレッシュな酸味と旨味をプラス。これにより、ケチャップだけでは出せない、瑞々しさと奥行きが生まれるのです。このソースを火にかけ、軽く煮詰めて水分を飛ばし、旨味を凝縮させておくのが「くるみ」流です。
隠し味はバターと生クリーム
この特製ケチャップソースを、炒めた具材と麺に絡めていくわけですが、最後の仕上げに魔法のひと手間が加えられます。それが、有塩バターと少量の生クリーム。
バターを加えることで、ソース全体に豊かなコクと香りがプラスされ、ケチャップの角が取れて味がまろやかになります。また、生クリームは、ソースの酸味を和らげ、麺とソースの一体感を高める効果があります。この二つの隠し味が、単なる「ケチャップ炒め」ではない、レストランでしか味わえない、ワンランク上のナポリタンへと昇華させているのです。昔懐かしい味わいの中に、プロの技が光る瞬間です。
シャキシャキ感を残す具材の火入れ
ナポリタンの魅力は、麺とソースだけでなく、個性豊かな具材とのハーモニーにもあります。「くるみ」のナポリタンの具材は、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、そして厚切りのベーコンという王道のラインナップ。しかし、その火の入れ方には緻密な計算が隠されています。
まず、厚切りのベーコンをフライパンでじっくりと炒め、旨味のある脂を引き出します。その脂を利用して、次にスライスした玉ねぎを投入。玉ねぎがしんなりとして甘みが出てきたところで、マッシュルームを加えます。そして、最も重要なのがピーマンを入れるタイミング。食感を残したいピーマンは、麺を入れる直前に加え、さっと炒めるだけ。これにより、ソースが絡んでもなお、シャキシャキとした心地よい食感と、爽やかな苦味を残すことができるのです。
すべての具材を別々のタイミングで加えることで、それぞれの素材が持つ最高の食感と風味を引き出す。この細やかな配慮こそが、「くるみ」のナポリタンが多くの京都人を虜にする理由なのでしょう。一口食べれば、甘酸っぱいソースの香りと共に、様々な具材の食感が口の中で楽しいシンフォニーを奏でます。
6. 【実食まとめ】京都「くるみ」で一番のおすすめは?4大メニューを徹底比較!
私が心を奪われた、あのメニュー
さて、ここまで京都の名店「キッチン くるみ」が誇る4つの絶品メニューを、マニアックな視点で解説してきました。特製ハンバーグ、絶品オムライス、カニクリームコロッケ、そして懐かしのナポリタン。正直に言って、どれも甲乙つけがたい、主役級の美味しさでした。
厨房から漂う香りに誘われ、最初に注文したのは、やはり王道の「特製ハンバーグ」。熱々の鉄皿で運ばれてきたハンバーグにナイフを入れた瞬間、じゅわ〜っと溢れ出す肉汁に思わず「うわぁ…」と声が漏れてしまいました。一口食べると、粗挽き牛肉の力強い旨味と、あめ色玉ねぎの深い甘み、そして5日間かけて作られたというデミグラスソースの複雑なコクが一体となって、口の中が幸せで満たされます。これはもう、洋食の王様と呼ぶにふさわしい一皿です。
次にいただいた「絶品オムライス」は、まさに芸術品。スプーンで開いた瞬間の、あのとろりとした半熟卵の光景は、動画に撮っておきたくなるほどでした。卵の優しい甘さと、隠し味の赤味噌が効いたコク深いチキンライス、そしてそれらをまとめる特製ソースのバランスが完璧。どこか懐かしいのに、家庭では絶対に真似できないプロの味に、ただただ感動するばかりでした。
そして、洋食店の真価が問われる「カニクリームコロッケ」。衣のサクサク感たるや、これまで食べてきたコロッケの中でも間違いなくナンバーワンです。そして、中から溢れ出す熱々のベシャメルソースの滑らかさと、カニの風味の豊かさ!火傷なんて気にしていられません。夢中で頬張ってしまいました。
最後の「懐かしのナポリタン」は、良い意味で期待を裏切られました。もちもちの極太麺に、甘みと酸味のバランスが絶妙なソースがよく絡み、食べ応え抜群。シャキシャキのピーマンが良いアクセントになっていて、あっという間に完食。ああ、京都に来てよかった、「くるみ」に出会えてよかった、と心から思える一皿でした。
あなたにぴったりの一皿はどれ?比較表
ここまで読んでくださったあなたは、「結局どれが一番おすすめなの?」と思っているかもしれません。そこで、私が独断と偏見で作成した比較表で、あなたにぴったりの一皿を見つけるお手伝いをさせてください!
| メニュー名 | 濃厚こってり度 | ボリューム満足度 | 懐かし安心度 | 大人リッチ度 | こんなあなたにおすすめ! |
| 特製ハンバーグ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | とにかくお肉が食べたい!肉汁に溺れたいあなたへ |
| 絶品オムライス | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ふわとろ食感が大好き!王道洋食で癒されたいあなたへ |
| カニクリームコロッケ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | 職人技を堪能したい!上品で濃厚な味わいを求めるあなたへ |
| 懐かしのナポリタン | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | 童心に帰りたい!もちもち麺をお腹いっぱい食べたいあなたへ |
いかがでしょうか?
ガッツリと洋食の王様を味わいたいなら「特製ハンバーグ」、優しく幸せな気持ちに包まれたいなら「絶品オムライス」がおすすめです。少し贅沢な気分で、職人技の結晶を堪能したいなら「カニクリームコロッケ」は外せませんし、どこか懐かしい味に心もお腹も満たされたいなら「懐かしのナポリタン」で決まりですね!
京都で洋食に迷ったら「くるみ」へ
どのメニューを選んでも、そこには店主の愛情とこだわり、そして半世紀以上も京都の人々に愛されてきた歴史の味が詰まっています。もしあなたが京都を訪れ、「本当に美味しい洋食が食べたいな」と思ったなら、迷わず「キッチン くるみ」の扉を開けてみてください。
そこには、あなたの心とお腹を温かく満たしてくれる、最高の体験が待っています。観光で訪れるのはもちろん、地元京都の方にも改めてその魅力を再発見してほしい、心からそう思える素晴らしいお店でした。きっとあなたも、「くるみ」のファンになること間違いなしですよ!
大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。

