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なぜか感動する「くるみ」のコード進行、その秘密を解き明かす!

2025.08.16
なぜか感動する「くるみ」のコード進行、その秘密を解き明かす!

Mr.Childrenの名曲「くるみ」。聴くたびに胸が熱くなる、あの感動の秘密を知りたくありませんか?実は、多くの人を惹きつける「くるみ」の感動の裏には、巧みに使われた4つのコード進行が隠されています。

この記事では、なぜこの曲のコードが私たちの心を揺さぶるのか、その理由を初心者にも分かりやすく解説します。曲に込められた想いを、コードという新たな視点から深く味わってみましょう。

1. 【くるみ解説①】物語の始まりを告げる、切なくも美しいコード「Cadd9」

Cadd9とは一体どんなコード?

「ねえ くるみ」という、あのあまりにも有名な歌い出し。この最初のフレーズだけで、一瞬にして曲の世界に心を鷲掴みにされてしまいますよね。この魔法のような瞬間に、実は「Cadd9(シー・アドナインス)」という、とても美しい響きを持つコードが使われているんです。

構成音とキラキラした響きの秘密

まず、Cadd9というコードがどんなものか、少しだけ音楽理論のお話をさせてくださいね。通常のCメジャーコードは、「ド・ミ・ソ」という3つの音で構成されています。これは、明るくて安定感のある、とても基本的な響きですよね。

そこへ、「add9」、つまり「9番目の音を追加する」というのがCadd9なんです。「ド」の音から数えて9番目の音は、1オクターブ上の「レ」の音になります。つまり、Cadd9は「ド・ミ・ソ・レ」という4つの音で構成されるコードなのです。

この「レ」の音が加わるだけで、不思議なことが起こります。元のCコードが持つ明るさに、どこか切ない浮遊感と、キラキラと輝くような透明感がプラスされるんです。ただ明るいだけじゃない、ただ悲しいだけでもない。希望の光と、過ぎ去った日への郷愁が同居したような、複雑で豊かな感情を表現できるのが、このCadd9というコードの最大の魅力と言えるでしょう。

ギターでの押さえ方と響きのコツ

もしあなたがギターを弾かれるなら、Cadd9の押さえ方もぜひチェックしてみてください。一般的なCコードのフォームから、人差し指(2弦1フレット)を離し、代わりに小指で1弦3フレットを押さえるフォームなどがよく使われます。ポイントは、開放弦である3弦の「ソ」と2弦の「シ」の音を綺麗に鳴らすこと。そして、追加された「レ」の音(このフォームだと2弦の3フレットの場合もあります)が、他の音に埋もれずに、ちゃんと聴こえるようにピッキングの強さを調整することです。この繊細な響きこそが、『くるみ』の冒頭のアルペジオで、私たちの心を惹きつけてやまないMr.Children『くるみ』コードの正体なんです。

『くるみ』におけるCadd9の感動的な役割

では、このCadd9が『くるみ』という楽曲の中で、具体的にどのような役割を果たしているのでしょうか。

イントロと歌い出しが描く原風景

『くるみ』は、アコースティックギターのアルペジオで静かに始まります。このイントロで繰り返し奏でられるのが、まさにCadd9を中心としたコード進行です。この時点で、聴き手はまだ歌詞の物語を知りません。しかし、Cadd9の持つ切なくも美しい響きが、「これから始まる物語は、きっと感動的なものに違いない」という予感を抱かせてくれます。

そして、桜井和寿さんの優しい歌声で「ねえ くるみ」と入ってくる瞬間。ここでもCadd9が鳴らされています。このコードの響きが、まるで心の中にいる誰か(それが未来の自分なのか、過去の恋人なのか、あるいは全く別の誰かなのかは分かりませんが)に、そっと語りかけるような、親密で、少し切ない雰囲気を完璧に作り出しているんです。このCadd9というコードがあったからこそ、私たちは最初のたった一言で、この曲の主人公と同じ場所に立つことができるんですね。

桜井和寿が描く情景とコードのリンク

桜井さんのソングライティングの凄さは、歌詞の世界観とコードの響きを完璧に一致させるところにあります。例えば、「C」という明るいコードだけでは、この曲の持つ複雑な感情、つまり過去への後悔や未練と、それでも前を向こうとする希望が入り混じった感情は表現しきれなかったでしょう。

Cadd9というコードを選ぶことで、彼は音の力だけで「希望と切なさが同居する世界」を描き出したのです。これは、まるで映画監督が、特定のフィルターを使って映像に独特の質感を与える作業に似ています。桜井さんはCadd9という音のフィルターを通して、『くるみ』という物語の原風景を見せてくれているのかもしれません。

J-POPの名曲とCadd9コード

実はこのCadd9、Mr.Childrenの他の楽曲や、J-POPの様々な名曲でも効果的に使われています。例えば、同じくMr.Childrenの『しるし』のイントロでも、このadd9系のコードが印象的に使われ、切ない物語の始まりを告げています。

また、スピッツの代表曲である『ロビンソン』のあの有名なアルペジオでも、add9系のコードがその浮遊感あふれるサウンドの核となっています。このように、Cadd9は多くのアーティストに愛され、聴き手の心に残る名シーンを演出し続けているのです。『くるみ』で使われるCadd9は、まさにJ-POPの歴史の中でも屈指の名演と言えるコードなのです。

2. 【くるみ解説②】滑らかな展開を生む名脇役!コード「G/B」の役割

オンコード(分数コード)を理解しよう

次にご紹介したいコードは、「G/B(ジー・オン・ビー)」という少し変わった名前のコードです。楽譜を見ると分数のように見えることから「分数コード」や「オンコード」と呼ばれています。これは一体、どのような役割を持っているのでしょうか?

「G/B」の正体と音楽的な意味

「G/B」という表記は、「Gのコードを演奏しながら、一番低い音(ベース音)はB(シ)の音を弾いてくださいね」という指示を表しています。通常、Gコードを弾くとき、最も低い音はルート音(根音)であるG(ソ)の音になります。しかし、ここではあえてGではなくBの音をベースに指定しているのです。

なぜ、こんなことをするのでしょうか?それは、コードとコードの「繋がり」を、より滑らかで美しくするためなんです。特に、『くるみ』で頻繁に登場する「C → G/B → Am7」というコード進行は、この効果が最大限に発揮される、まさに黄金の流れと言えるでしょう。

ベースラインの魔法「クリシェ」

この「C → G/B → Am7」という進行の、ベース音の動きに耳を澄ませてみてください。

  • Cコードのベース音は「 (C)」

  • G/Bコードのベース音は「 (B)」

  • Am7コードのベース音は「 (A)」

いかがでしょうか。「ド → シ → ラ」と、ベースの音がまるで階段を一段ずつ下りていくように、非常に滑らかに動いているのが分かりますか?このように、同じメロディやフレーズを保ちながら、一部の音だけが順次進行していく手法を「クリシェ」と呼びます。このクリシェが生まれることで、曲の展開にドラマチックな流れが生まれ、聴いている人は無意識のうちに心地よさを感じるのです。G/Bは、この美しいベースラインを生み出すための、まさにキーパーソンと言えるコードなのです。

ギターでG/Bを綺麗に鳴らすには

ギターでこのG/Bを押さえるのは、少しコツがいるかもしれません。一般的な押さえ方は、Cコードのフォームから、薬指を6弦3フレットから5弦2フレットの「シ」の音に移動させ、人差し指で他の弦を押さえる形です。この時、一番低い音である5弦の「シ」の音がしっかりと鳴り、6弦が鳴らないようにミュートするのがポイントです。このG/Bというコードをマスターできると、あなたのギター演奏は格段に表現力が豊かになりますよ!

『くるみ』のストーリーテリングとG/B

このG/Bが生み出す滑らかなベースラインは、『くるみ』の物語を語る上で、なくてはならない存在です。

歌詞の心情変化とベースの下降ライン

例えばAメロ、「希望の数だけ失望は増える それでも明日を夢見る」といった歌詞の部分で、この「C → G/B → Am7」の進行が使われています。希望を抱きながらも、どこか少しずつ沈んでいくような、あるいは過去を振り返りながら一歩ずつ進んでいくような、そんな繊細な心の動きが、この「ド→シ→ラ」と下っていくベースラインによって完璧に表現されているとは思いませんか?

もしここでG/Bを使わずに、通常のGコードを弾いてしまうと、ベース音は「ド→ソ→ラ」と跳躍してしまい、あの滑らかな流れが失われてしまいます。たった一音の違いですが、このG/Bというコードがあるかないかで、曲がリスナーに与える印象は全く違ったものになっていたはずです。

プロデューサー小林武史氏の存在

Mr.Childrenサウンドを語る上で欠かせないのが、長年プロデューサーを務めてきた小林武史さんの存在です。彼の編曲、特にピアノやストリングスのアレンジは、こうしたコード進行の美しさをさらに際立たせています。

ストリングスとの絡みで際立つベースライン

『くるみ』の音源をよく聴いてみると、この「ド→シ→ラ」というベースラインを、ギターだけでなくピアノやチェロなどのストリングスがユニゾンでなぞっているのが分かります。これにより、ベースラインの美しさがより強調され、楽曲全体に重厚感と感動的なストーリー性が生まれているのです。小林武史さんは、このG/Bというコードが持つポテンシャルを最大限に引き出し、私たちリスナーの耳に最も心地よく届くように調理してくれている、まさに凄腕のシェフのような存在ですね。この緻密なアレンジこそが、Mr.Childrenの楽曲が多くの人々の心を打ち続ける理由の一つなのです。

3. 【くるみ解説③】サビ前の“タメ”がすごい!感情を揺さぶるコード「Gsus4」

なぜGsus4は気持ちを高ぶらせるのか

さあ、いよいよサビへと向かう、最も感情が高ぶる瞬間に使われるコードの登場です!その名は「Gsus4(ジー・サスフォー)」。このコードは、リスナーの心を巧みに揺さぶり、期待感を最大限にまで高めてくれる、天才的な仕掛け人なんですよ!

サスペンデッドコード(sus4)の音楽理論

「sus4」とは「suspended 4th」の略で、「4番目の音で吊るされた」といった意味合いを持ちます。一体どういうことでしょうか?

通常のGメジャーコードは、「ソ・シ・レ」という3つの音で構成されています。この中の3番目の音である「シ」の音は、コードの明るい響きを決定づける重要な音です。Gsus4では、この「シ」の音を一時的にお休みさせて、代わりに4番目の音である「ド」の音を入れます。つまり、構成音は「ソ・ド・レ」となるわけです。

この「ド」の音がクセモノなんです。この音は、隣の「シ」の音に非常に強く「戻りたい!」と感じさせる性質を持っています。そのため、Gsus4というコードは、どこか宙ぶらりんで、不安定で、聴いている人に「早く解決してほしい!」という緊張感や焦燥感を与える響きになるのです。

不安定から安定へ「解決」する快感

そして、このGsus4の次に、本来のGコード(ソ・シ・レ)がジャーン!と鳴らされた瞬間を想像してみてください。不安定だった「ド」の音が、あるべき場所である「シ」の音に落ち着くことで、私たちはとてつもない解放感と安心感、そして「快感」を得ることができます。

この「不安定(Gsus4)→ 安定(G)」という流れは、音楽におけるカタルシス(精神の浄化作用)を生み出す、非常に強力なテクニックです。カナダのマギル大学の研究によれば、音楽によって誘発される「期待感」とその「解決」が、人間の脳内で快感物質であるドーパミンの放出を促すことが示唆されています。Gsus4というコードは、まさにこの脳の仕組みを利用して、私たちの感情を揺さぶっていると言えるでしょう。

『くるみ』のサビを最高に盛り上げる仕掛け

『くるみ』では、このGsus4が、まさに神がかったタイミングで使われています。

「みー」の伸ばしとGsus4のシンクロ

最も分かりやすいのが、Bメロからサビへ移る直前。「くるみ」という名前が出てくる、あのフレーズです。

「出会いの数だけ別れは増える それでも希望に胸は震える」

「十字路に出くわすたび 迷いもするだろうけど」

「今も僕の背中を押すんだ 聞こえる? 『未来』という名のノートの thème song が」

「ねぇ く・る・みー」 ← ココです!

この「みー」と歌を伸ばしている、まさにその瞬間に、バックの演奏は「Gsus4」を鳴らしています。歌詞の上ではまだサビに入っていませんが、音の世界ではすでに「これからサビが来るぞ!」という壮大な”タメ”が作られているのです。この一瞬の緊張感があるからこそ、私たちは息を呑み、次の展開を固唾を飲んで見守ることになります。

サビのGコードへの解決が生むカタルシス

そして、桜井さんの「希望の数だけ失望は増える」という力強い歌声と共にサビが始まり、コードがGsus4からGへと解決します。この瞬間の解放感たるや、凄まじいものがありますよね!まるで、ずっと張り詰めていた糸が心地よく解き放たれるような、あるいは、暗いトンネルを抜けてパッと明るい景色が広がったような、そんな感覚を覚えるはずです。

このGsus4 → Gという流れは、単なるコード進行という枠を超えて、『くるみ』という曲の感動を何倍にも増幅させる、魔法のようなコードの仕掛けなのです。この一瞬のタメと解放があるからこそ、私たちは何度聴いても、このサビで心を揺さぶられてしまうのですね。

Gsus4を使いこなすアーティストたち

この強力な武器であるsus4コードは、もちろん桜井和寿さんのお得意のテクニックの一つです。Mr.Childrenの楽曲では、『終わりなき旅』のサビ前「息を切らしてさ」の「さー」の部分など、リスナーの感情を高ぶらせたい様々な場面で効果的に使われています。

また、他のアーティストに目を向けても、B’zの『ultra soul』のサビ前の「そして羽ばたく」の直前や、DREAMS COME TRUEの『何度でも』のサビ「何度でも何度でも」の直前など、数々の名曲でこのsus4が感動的なシーンを演出しています。もしあなたが好きな曲があったら、サビの直前にどんなコードが使われているか、ぜひ耳を澄ませてみてください。もしかしたら、そこにも魔法のコード、sus4が隠れているかもしれませんよ。

4. 【くるみ解説④】クライマックスを彩る!開放感あふれるコード「Fadd9」

Fadd9がもたらす圧倒的な多幸感

物語がいよいよクライマックスに差し掛かり、全ての感情が昇華されていくような、壮大な感動シーン。そこで輝きを放つのが、4つ目のコードである「Fadd9(エフ・アドナインス)」です。このコードは、曲に圧倒的な開放感と多幸感をもたらし、私たちの心を希望の光で満たしてくれます。

通常のFコードとの響きの違い

Fadd9も、この記事の最初にご紹介したCadd9と同じ「add9」系のコードです。基本的なFメジャーコードは「ファ・ラ・ド」という構成音で、少しだけ哀愁を帯びた、落ち着いた響きを持っています。ギター初心者にとっては、人差し指で全ての弦を押さえる「バレーコード」のFは、最初の壁として立ちはだかる、少し手強いコードでもありますよね。

Fadd9は、この「ファ・ラ・ド」に9番目の音である「ソ」を追加した「ファ・ラ・ド・ソ」という構成音になります。この「ソ」の音が加わるだけで、コードの響きは劇的に変化します。Fが持っていた少し影のある雰囲気が和らぎ、代わりに、空がパーッと晴れ渡るような、明るく、どこまでも広がっていくような開放感が生まれるのです。まるで、窓を開け放って新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むような、そんな心地よさを感じさせてくれるのがFadd9というコードの魅力です。

なぜ「add9」は開放的なのか?倍音の観点から

少し専門的な話になりますが、add9コードが持つ開放感の秘密は「倍音」に関係していると言われています。一つの音を鳴らすと、その音の整数倍の周波数を持つ「倍音」という小さな音が同時に鳴っています。この倍音の響きが、音の豊かさやキャラクターを決めるのです。

add9で加えられる9th(9番目)の音は、ルート音(根音)の倍音の中でも特に心地よく響きやすい音の一つです。そのため、add9コードは響きが豊かになり、より複雑で広がりのあるサウンドを生み出します。特にFadd9の場合、Fコードが持つ少し詰まったような響きに、高くて明るい「ソ」の音が加わることで、音のレンジが一気に広がり、あの独特の開放感に繋がるのです。

『くるみ』の感動のフィナーレとFadd9

このFadd9は、『くるみ』の物語のエンディングに向けて、感動を最高潮に高めるために、非常に効果的に配置されています。

大サビ「良かった事だけ思い出して」での使用

このFadd9というコードが最も印象的に使われるのが、曲の終盤、大サビの「良かった事だけ思い出して やけに年老いた気持ちになる」というフレーズです。それまでのサビでは使われていなかったこのFadd9が、ここで満を持して登場します。

この歌詞を聴いてみてください。過去には辛いことや後悔もたくさんあった。でも、最終的には「良かった事」を思い出すことで、少しだけ穏やかな気持ちになっている。そんな、全ての過去を受け入れ、肯定するような、大きな優しさと慈しみに満ちた心境が歌われていますよね。

この心境の変化を、音楽的に表現しているのがFadd9なのです。もしここが通常のFコードだったら、どこかまだ哀愁や未練が残る響きになってしまったかもしれません。しかし、Fadd9の持つ明るく開放的な響きが使われることで、主人公が過去のすべてを乗り越え、未来に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている、そんな希望に満ちた情景が、私たちの目の前に鮮やかに広がるのです。

壮大なアレンジとFadd9の相性

この大サビの部分では、ギターやピアノだけでなく、壮大なストリングスや幾重にも重なったコーラスが加わり、楽曲のボルテージは最高潮に達します。Fadd9というコードは、こうした多くの楽器が重なる壮大なアレンジと非常に相性が良いのです。それぞれの楽器が奏でる音がFadd9の豊かな響きの中で混ざり合い、一つの大きな音の波となって、リスナーを感動の渦へと巻き込んでいきます。

ライブ会場で、この大サビをオーディエンス全員で大合唱する光景を想像してみてください。Fadd9の持つ多幸感あふれる響きが、会場全体を包み込み、そこにいるすべての人々の心を一つにする。そんな奇跡的な瞬間を生み出す力さえ持っているのが、このFadd9という輝かしいコードなのです。

5. 【体験談】『くるみ』のコードを意識して弾いてみた!

ギターで奏でる『くるみ』の新たな感動

ここまで4つの重要な『くるみ』のコードを解説してきましたが、やはり音楽は理屈だけじゃないですよね!そこで私自身、今回解説したポイントを一つ一つ噛み締めながら、改めてギターで『くるみ』を弾き語りしてみました。いやもう、これが本当に大変なことになったんです!

今まで何百回と弾いてきたはずのこの曲が、まるで初めて聴く曲のように、新鮮な感動をもって心に迫ってきました。コードの一つ一つが持つ意味や役割を理解するだけで、こんなにも演奏の没入感が変わるのかと、正直、鳥肌が止まりませんでした。

「G/B」のベース音を慈しむように

特に感動が深かったのは、やはり「G/B」の存在です。これまでは「CからAm7への繋ぎのコード」くらいにしか意識していませんでしたが、「ド→シ→ラと滑らかに下っていくベースラインを、聴いている人に心地よく届けるんだ」という使命感を持って弾いてみると、左手の指使いから右手のピッキングまで、すべてが変わりました。

ベース音である5弦2フレットの「シ」の音を、他の弦の音よりも少しだけ強く、そして慈しむように弾いてみる。たったそれだけのことで、コード進行がまるで一つの流れるような物語を語り始めるんです。Aメロの歌詞の切ない心情と、この下降していくベースラインがリンクして、思わず胸が熱くなりました。これは、ただ楽譜通りに弾いているだけでは絶対に味わえない感覚です。この『くるみ』のコードの奥深さに、改めて気づかされました。

Gsus4で感情を“タメて”から解放する快感

そして、サビ前の「Gsus4」。これも意識するかしないかで大違いでした!「ねぇ くるみー」の「みー」の部分で、思いっきりGsus4の不安定な響きを強調し、一瞬の間(ま)を作るように意識してみました。自分自身で「早くサビに行きたい!」という焦燥感を最大限に高めてから、サビの頭のGコードをジャーン!と鳴らす。

この瞬間のカタルシス!もう、最高に気持ちが良いんです!自分で感動の波を作り出し、その波に乗ってサビを歌い上げるような感覚。演奏している自分が、一番この曲に感動しているんじゃないかと思うくらいでした(笑)。このGsus4という『くるみ』のコードは、弾き手にとっても最高のスパイスになってくれることを実感しました。

あなたも『くるみ』の世界に没入しよう

この記事を読んでくださっているあなたにも、ぜひこの感動を体験してみてほしいんです。楽器を演奏する方はもちろん、演奏しない方も、次に『くるみ』を聴く機会があったら、ちょっとだけ耳を澄ませてみてください。

ヘッドホンで聴き比べてほしいポイント

ぜひ、良い音質のヘッドホンやイヤホンで聴いてみることをお勧めします。

  • イントロのアルペジオ: Cadd9のキラキラした「レ」の音は聴こえるでしょうか?

  • Aメロ: C→G/B→Am7の流れで、ベースの音が「ド→シ→ラ」と下がっていくのを感じられますか?ピアノやチェロも同じ動きをしていますよ。

  • サビ直前: 「ねぇ くるみー」で、一瞬だけ世界が緊張感に包まれるようなGsus4の響きに気づけるでしょうか?

  • 大サビ: 「良かった事だけ思い出して」で、Fadd9が鳴らされた瞬間に、目の前の視界がパッと開けるような開放感を感じられますか?

これらの『くるみ』のコードが持つ役割を意識して聴くだけで、きっと今まで以上に楽曲の構造が立体的に聴こえてきて、桜井和寿さんと小林武史さんが仕掛けた音楽の魔法に、もっと深く気づくことができるはずです。

ライブ映像で見るメンバーの演奏

さらに深く楽しみたい方は、ぜひライブ映像もチェックしてみてください。DVDやBlu-rayで、ギターを弾く桜井さんや田原さんの指使いを見てみるのも面白いですよ。特に、オンコードであるG/Bを押さえるときの複雑な指の形や、Fadd9を押さえるときの優しい表情など、映像で見るからこそ伝わってくる情報がたくさんあります。メンバーの演奏姿からも、一つ一つの『くるみ』のコードに込められた感情が伝わってくるかもしれません。

6. 総まとめ!感動の秘密を握るMr.Children『くるみ』コード比較表

さて、ここまでMr.Childrenの名曲『くるみ』の感動の秘密を、4つの重要な『くるみ』のコードから紐解いてきました。いかがでしたでしょうか?最後に、今回ご紹介したコードたちが、それぞれどんな役割を持っているのか、一目でわかるように比較表にまとめてみました!

コード名 使われる主な場面 与える印象・役割
Cadd9 イントロ、Aメロ 切なさ、浮遊感、物語の始まりを告げる
G/B Aメロ、Bメロ 滑らかな流れ、物語をスムーズに進行させる
Gsus4 サビ前 期待感、タメ、感情の揺さぶりと解放
Fadd9 大サビ、アウトロ 開放感、多幸感、クライマックスを彩る

この表を見るだけでも、それぞれの『くるみ』のコードがいかに緻密に計算され、効果的に配置されているかが分かりますよね。

コード進行が物語る『くるみ』の深層

この4つのコードの流れを追うだけでも、『くるみ』という楽曲が持つ物語の構造が見えてきます。

  1. Cadd9で、どこか切なくも美しい過去の情景(物語の始まり)が提示され、

  2. G/Bが作る滑らかなベースラインに乗って、物語がスムーズに(時には少し感傷的に)進行し、

  3. Gsus4という一瞬の緊張(タメ)を経て、サビで感情が解放され、

  4. 最後にはFadd9という大きな希望と開放感に包まれて、物語がクライマックスを迎える。

まるで一本の長編映画のように、巧みに練られたストーリーが、この『くるみ』のコード進行の中には隠されているのです。歌詞だけでなく、コード進行そのものが物語を語っている。これこそが、Mr.Childrenの音楽が持つ、計り知れない深みなのではないでしょうか。

音楽を聴くのがもっと楽しくなるヒント

今回、『くるみ』を題材にコードの役割について少しマニアックにお話ししてきましたが、この視点は、あなたが好きな他の曲を聴くときにも、きっと役立つはずです。

好きな曲のコードを調べてみよう

もし、あなたが「この曲のこの部分で、いつもグッとくるんだよな」と感じるフレーズがあったら、ぜひスマートフォンやパソコンで「(曲名) コード」と検索してみてください。もしかしたら、そこにもGsus4のような「タメ」のコードや、Fadd9のような開放的なコードが隠されているかもしれません。そのコードの役割を知ることで、あなたがなぜその曲のその部分に心を動かされるのか、その理由が少しだけ分かるかもしれませんよ。

コード進行から作曲者の意図を読み解く

音楽は、ただメロディと歌詞だけでできているわけではありません。その土台となるコード進行には、作曲者のたくさんの意図や感情が込められています。コードという、いわば「音楽の設計図」を少しだけ読み解けるようになると、音楽を聴く楽しみは、何倍にも、何十倍にも広がっていきます。

ぜひあなたも、今日から少しだけ『くるみ』のコードのような、曲を支えるコードの響きに耳を傾けてみてください。きっと、今まで気づかなかった新しい発見と、より深い感動が、あなたを待っていますよ!

WRITING
西村恭平
西村恭平 Nishimura Kyohei

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。