クルミ
クルミの花とは?開花時期や花言葉、特徴をわかりやすく解説
2025.10.08
美味しい「クルミ」の実はよく知られていますが、その「花」がどんな姿かご存知ですか?実は、クルミの花は多くの人がイメージするような華やかな姿ではなく、少し変わったユニークな特徴を持っています。
この記事では、クルミの花が咲く季節や、あまり知られていない雌花と雄花の違い、そして「知性」という素敵な花言葉まで、あなたが抱く「クルミの花」の疑問に全てお答えします。読み終わる頃には、きっと誰かに話したくなるクルミの豆知識が増えていますよ。
1. クルミに花は咲くの?意外と知らない基本情報と開花時期
こんにちは!あなたの知的好奇心をくすぐる情報をお届けする、自称「身近な不思議ハンター」の私です!突然ですが、あなたは「クルミの花」と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか?おそらく、多くの方が香ばしくて美味しい「実」のことは知っていても、「どんな花が咲くの?」と首を傾げるのではないでしょうか。それもそのはず、クルミの花は桜やチューリップのように華やかではないので、私たちの目に留まる機会がとっても少ないんです。でも実は、クルミの木にもちゃんと可愛らしい(そして、ちょっと変わった)花が咲くんですよ!
この記事では、そんな意外と知られていないクルミの花の世界を、マニアックな視点からとことん深掘りしていきます。これを読めば、あなたもきっと誰かに話したくなるクルミ博士になれるはず!まずは、クルミの花がいつ、どこで、どんな風に咲くのか、その基本情報から一緒に見ていきましょう。
クルミの花が咲く季節とその特徴
クルミの花が私たちの前に姿を現すのは、春、まさに新緑が目にまぶしい4月下旬から5月にかけての時期です。桜の花が散り、葉桜が美しい季節になると、クルミの木も静かに芽吹き始めます。そして、その新しい葉っぱが展開すると同時に、ひっそりと花を咲かせるんです。これが、クルミの花が目立たない理由の一つでもあります。鮮やかな緑の葉の中に紛れるようにして咲くので、意識して探さないとなかなか見つけることができません。
日本で栽培されているクルミには、主に「ペルシャグルミ」を改良した「シナノグルミ」や、日本古来の「オニグルミ」「ヒメグルミ」など、いくつかの種類があります。これらの種類によって、開花時期も少しずつ異なります。例えば、日本で最も生産量が多い長野県東御市などで栽培されているシナノグルミは、5月上旬から中旬頃が開花のピークです。一方、北海道や東北地方の山間部に自生するオニグルミは、少し遅れて5月中旬から6月上旬にかけて花を咲かせることが多いですね。あなたが住んでいる地域や、見かけるクルミの種類によって、花のシーズンも変わってくるのが面白いところです。
なぜ私たちはクルミの花を見たことがないの?
クルミの花が目立たない理由は、葉に隠れてしまうことだけではありません。実は、クルミの花には、私たちが「花」と聞いてイメージするような、カラフルな「花びら(花弁)」がないんです。専門的には「無花被花(むかひか)」と呼ばれ、花びらや萼(がく)が退化してしまっています。そのため、全体的に緑色や褐色といった地味な色合いをしており、景色に溶け込んでしまうんですね。
これは、クルミの生存戦略と深く関わっています。多くの植物が美しい花びらで蝶や蜂などの昆虫を誘き寄せて受粉を手伝ってもらうのに対し、クルミは「風」を利用して受粉する「風媒花(ふうばいか)」です。虫を呼ぶ必要がないため、派手な花びらや甘い蜜を作るためのエネルギーを節約し、その分、たくさんの花粉や実を作ることにコストをかけている、というわけなんです。なんとも合理的で賢い選択ですよね!
クルミの木はどこにある?観察できる場所
「そんなに面白い花なら、ぜひ見てみたい!」と思ったあなた。クルミの木は、意外と私たちの身近な場所にも生えていることがありますよ。主な産地である長野県や青森県、岩手県などでは、畑や果樹園で栽培されている姿を見ることができます。特に、長野県の東御市は日本一のクルミ産地として有名で、毎年約140トンものクルミが収穫されています。こうした地域では、栽培されているクルミの木を観察するチャンスがあるかもしれません。
また、日本に自生しているオニグルミは、全国の河川敷や沢沿い、日当たりの良い山林などで見つけることができます。例えば、多摩川や荒川の河川敷、奥多摩の渓流沿いなど、少し自然の多い場所へ散策に出かけると、思いがけず大きなクルミの木に出会えることがあります。公園の植栽として植えられているケースもありますから、春のお散歩がてら、ぜひ近所の木々を注意深く観察してみてください。もしかしたら、今まで気づかなかっただけで、あなたのすぐそばにもクルミの花が咲いているかもしれませんよ。
2. 長く垂れ下がるのが特徴!クルミの「雄花」をマニアック解説
さて、クルミの花の基本がわかったところで、次はいよいよそのマニアックな姿に迫っていきましょう!クルミの木には、実は「雄花(おばな)」と「雌花(めばな)」という2種類の花が、同じ一本の木に咲くんです。これを「雌雄同株(しゆうどうしゅ)」と言います。そして、この2つの花は全く異なる形をしているのが、クルミの花観察の最大の面白さなんです。まずは、誰でも簡単に見つけられる「雄花」から、じっくりと観察していきましょう。
春先にクルミの木を見上げると、枝から緑色の紐のようなものが、まるでブドウの房のようにたくさん垂れ下がっているのを見つけることができます。長さは10cmから15cmほどにもなり、風にゆらゆらと揺れるその姿は、一見すると「イモムシ?」と思ってしまうかもしれません(笑)。これこそが、クルミの「雄花」の集まりである「雄花序(ゆうかじょ)」なんです。
雄花序の構造をミクロの世界で見てみよう
この1本の長い雄花序をよーく観察してみてください。実はこれ、1つの花ではなく、数百個もの小さな雄花がびっしりと集まってできている集合体なんです。専門的には「尾状花序(びじょうかじょ)」と呼ばれ、ヤナギやカバノキの仲間にも見られる形状です。この形状は、風に揺れることで効率よく花粉を遠くまで飛ばすのに非常に適しています。
もしルーペや虫眼鏡を持っていたら、ぜひ雄花の一つ一つを拡大して見てみてください。一つの雄花は、数枚の苞(ほう)と呼ばれる葉が変形した器官に守られるようにして、その中に数個から十数個の雄しべ(葯)が収まっています。この小さな葯の中に、クルミの子孫を残すための大切な花粉がぎっしりと詰まっているのです。一つの雄花序には数百の雄花があり、一本の木には数え切れないほどの雄花序がつくわけですから、そこから放出される花粉の量は、まさに天文学的な数字になります。想像するだけで、ちょっと鼻がムズムズしてきそうですね!
花粉を飛ばすための驚くべき生存戦略
クルミの雄花は、ただぶら下がっているだけではありません。そこには、花粉を効率的に風に乗せるための、驚くべき仕組みが隠されています。雄花序が成熟すると、葯の壁が乾燥して裂け、中の花粉が一斉に空気中に放出されます。この現象を「裂開(れっかい)」と言います。クルミの雄花序は垂れ下がっているため、花粉は重力に従って下に落ちながら、同時に風に乗って水平方向へと拡散していきます。
また、雄花序は非常に柔軟で、わずかな風でもよく揺れるようにできています。この揺れが、まるで「はたき」のように、葯の中から残っている花粉を叩き出し、より広範囲に飛散させる手助けをします。スギ花粉が風の強い日に大量に飛散するのと同じ原理ですね。クルミの花粉アレルギーというのはあまり聞きませんが、これだけの量の花粉が飛んでいると考えると、植物の生命力の力強さを感じずにはいられません。
役目を終えた雄花のその後
花粉をすべて放出し終えた雄花序は、その役目を終え、やがて枝からポロリと落ちてしまいます。開花時期にクルミの木の下を歩いていると、地面に緑色の紐のようなものがたくさん落ちているのを見かけることがあります。これが、雄花序の残骸です。もしこれを見つけたら、それは「この木にはクルミの花が咲いていたんだな」という確かな証拠になります。
雌花を見つけるのが難しい場合でも、この落ちた雄花序を手がかりにすれば、クルミの木の存在に気づくことができます。拾い上げて観察してみると、花粉を出し切って少しカサカサになった雄花の構造がよくわかりますよ。花が咲いている瞬間だけでなく、その後の姿にも注目してみると、植物の営みに対する理解がより一層深まりますね。
3. 小さくて赤い柱頭が目印!見つけにくいクルミ「雌花」のヒミツ
さて、ダイナミックで分かりやすい雄花とは打って変わって、次にご紹介する「雌花(めばな)」は、まるでかくれんぼの名人のように、ひっそりと、そしてとっても見つけにくい姿をしています。しかし、この小さな雌花こそが、やがてあの美味しいクルミの実に成長する、非常に大切な部分なんです。その秘密のヴェールを、一緒にそっとめくってみましょう!
雌花を探すには、まずクルミの木の枝先に注目する必要があります。雄花が去年の枝から垂れ下がるのに対して、雌花はその年に新しく伸びた緑色の枝(新梢:しんしょう)の先端に、ちょこんと顔を出します。大きさは本当に小さく、全体でもわずか5mm~10mm程度しかありません。しかも、一つの先端に1個から、多くても3~4個ほどしかつかないため、見つけるにはかなりの集中力と根気が必要です。私も初めて探したときは、どこにあるのか分からず、30分以上も枝先とにらめっこしてしまいました(笑)。
小さな宝石!雌花の美しい姿
苦労して雌花を見つけたときの感動は、ひとしおです!その姿は、まるで小さな宝石のよう。雌花の先端部分をよく見てみると、鮮やかな赤色や濃いピンク色をした、羽毛のようなものが2本、Vの字のように開いているのが分かります。これこそが、雌しべの先端にある「柱頭(ちゅうとう)」と呼ばれる部分です。
この柱頭は、雄花から飛んできた花粉をキャッチするための、いわば「アンテナ」の役割を果たしています。普段は緑色の苞(ほう)に包まれて硬く閉じていますが、受粉の準備が整うと、この赤いアンテナをパッと開き、風に乗ってやってくる花粉を今か今かと待ち構えるのです。緑色の新芽の先端で輝くこの鮮やかな赤色は、本当に美しく、生命の神秘を感じさせてくれます。この小さな赤い柱頭を見つけることが、クルミの雌花観察の醍醐味と言えるでしょう。
なぜ柱頭は赤くてフサフサしているの?
では、なぜクルミの雌花の柱頭は、こんなにも鮮やかな赤色をしているのでしょうか?その正確な理由はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの説が考えられています。一つは、この赤い色素(アントシアニン)が、植物にとって有害な紫外線から、受粉に重要な柱頭の細胞を守る役割を果たしているという説です。空に向かって咲く雌花は、太陽の光を直接浴びやすいですからね。
また、柱頭の表面が羽毛のようにフサフサしているのにも、明確な理由があります。これは、空気中を漂う微細な花粉を、より効率的に、そして確実にキャッチするための工夫です。表面積を増やすことで、まるでマジックテープのように、通りかかった花粉を絡め取ることができるのです。風という不確実なものに受粉を委ねるクルミにとって、一つでも多くの花粉を捕まえるための、まさに死活問題。この小さな雌花の形には、子孫を残すための緻密な計算と工夫が凝縮されているんですね。
雌花を見つけるための観察テクニックとコツ
さあ、あなたもこの小さな赤い宝石を探してみたくなったでしょう?ここで、私が実践している雌花探しのテクニックをこっそりお教えします。
まず、観察に最適な時期は、雄花がぶら下がり始めてから数日後~1週間後くらいが狙い目です。多くのクルミの品種では、雄花の方が少し早く咲き始めるからです。
次に、観察する場所です。高い木の枝先を見るのは大変なので、なるべく若木や、枝が低い位置まで伸びている木を探しましょう。河川敷などに生えているオニグルミは、比較的低い位置に枝があることが多いのでおすすめです。
そして、必須アイテムが「双眼鏡」や「カメラのズーム機能」です。肉眼で見つけるのは至難の業なので、これらのアイテムを駆使して、緑色の新芽の先端を一つ一つ丁寧にチェックしていきます。焦らず、じっくりと探すのがポイントです。「あった!」と思ったら、その赤い柱頭の美しさを写真に収めてみてください。きっと、素敵な思い出になりますよ。このマニアックな雌花探し、一度成功するとハマってしまうこと間違いなしです!
4. 風が運ぶ恋物語。クルミの花のユニークな受粉方法とは?
クルミの雄花と雌花、それぞれの個性的な姿を見てきましたが、この二つが出会わなければ、美味しいクルミの実は生まれません。しかし、彼らの間を取り持つのは、蝶や蜂のようなロマンチックな仲人ではありません。クルミが選んだパートナーは、目に見えない「風」。そう、クルミは「風媒花」という、風に受粉を託すユニークな戦略をとる植物なのです。ここでは、クルミの花が繰り広げる、風が運ぶ壮大な恋物語を紐解いていきましょう。
雄花から放出された無数の花粉は、風に乗って数キロメートル先まで旅をすると言われています。そして、その中のほんの一握りの幸運な花粉だけが、雌花の赤い柱頭にたどり着くことができるのです。これは、まるで広大な海の中からたった一つの目的地を探し当てるような、奇跡的な出会いと言えるかもしれません。
なぜ虫ではなく「風」を選んだのか?
多くの植物が、蜜や香りで昆虫を惹きつけ、体に花粉をつけて運んでもらう「虫媒花」の戦略をとっています。その方が、特定の相手に確実に花粉を届けられる可能性が高いからです。ではなぜ、クルミは非効率にも思える「風」を選んだのでしょうか?
その理由の一つは、クルミのような樹木が花を咲かせる早春の時期にあります。この季節は、まだ気温が低く、昆虫の活動が活発でない日も多いのです。昆虫の気分や天候に左右されて受粉のチャンスを逃すよりも、常に吹いている風に任せた方が、より確実だと考えたのかもしれません。
また、先ほども触れましたが、虫を呼ぶための派手な花びらや蜜を作るには、多くのエネルギーが必要です。クルミはそのエネルギーを節約し、代わりに大量の花粉と、栄養豊富な大きな実を作ることに投資しています。いわば「選択と集中」ですね。たくさんの実をつけるクルミにとって、これは非常に合理的な生存戦略なのです。
自家受粉を避けるための賢い仕組み「自家不和合性」
ここで一つ、興味深い疑問が浮かびます。同じ木に雄花と雌花が咲くなら、自分の花粉で受粉してしまう「自家受粉」が起きてしまいそうですよね。しかし、自家受粉ばかりを繰り返していると、遺伝的な多様性が失われ、病気や環境の変化に弱い、ひ弱な子孫ばかりになってしまう可能性があります。
そこで、クルミは自家受粉を避けるための、非常に賢い仕組みを持っています。その名も「自家不和合性(じかふわごうせい)」。これは、遺伝的に自分の花粉が雌しべについても、受精が成立しないようにブロックするシステムです。まるで、自分と同じIDのカードキーでは扉が開かないようになっているようなものですね。この仕組みは、多くの果樹や野菜にも見られ、例えばリンゴやナシなども自家不和合性の性質を持っています。そのため、リンゴ農家は異なる品種の木を一緒に植えて、お互いの花粉で受粉させる「混植」を行っているのです。
この研究は、東京大学大学院農学生命科学研究科など、多くの研究機関で進められており、S遺伝子と呼ばれる特定の遺伝子が関与していることが分かっています。植物が持つこの巧妙な遺伝的メカニズムには、本当に驚かされます。
もう一つの工夫「雌雄異熟」という時間差作戦
さらに、クルミは自家受粉を避けるためにもう一つの保険をかけています。それが「雌雄異熟(しゆういじゅく)」という、雄花と雌花の開花タイミングをずらす作戦です。
クルミの品種には、雄花が先に咲いて花粉を飛ばし、その後に雌花が咲く「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」のタイプと、逆に雌花が先に咲いて受粉準備を整え、その後に雄花が咲く「雌性先熟(しせいせんじゅく)」のタイプがあります。
例えば、自分の木が雄性先熟だった場合、自分の雄花が咲いている時期には、まだ自分の雌花は咲いていません。そして、自分の雌花が咲く頃には、自分の雄花はもう花粉を飛ばし終わっています。これにより、物理的な時間差が生まれ、自家受粉の確率をさらに低くしているのです。なんという用意周到さでしょう!
このため、クルミを安定して収穫するためには、雄性先熟と雌性先熟の品種を組み合わせて植えることが非常に重要になります。例えば、長野県で栽培される「シナノグルミ」は雄性先熟の代表的な品種ですが、受粉樹として雌性先熟の「テウチグルミ」などが一緒に植えられることが多いんですよ。
5. クルミの花言葉ってある?知性と豊穣のシンボルとしての側面
植物について学ぶとき、多くの人が気になるのが「花言葉」ではないでしょうか。その花に込められた意味を知ると、より一層愛着が湧いてきますよね。では、これまで見てきたユニークなクルミの花には、一体どんな花言葉があるのでしょうか?ここでは、クルミの花言葉と、古くから人々の生活と密接に関わってきたクルミが持つ、文化的な側面について深く掘り下げていきたいと思います。
結論から言うと、残念ながら、クルミの「花」そのものに限定された、特定の有名な花言葉というのは、現在のところ一般的には存在しないようです。桜の「優美な女性」や、バラの「愛」のように、花自体の姿や香りから付けられることが多い花言葉ですが、クルミの花は地味で目立たないため、人々の詩的なインスピレーションを掻き立てる機会が少なかったのかもしれませんね。
実に込められた言葉「知性」と「豊穣」
しかし、がっかりするのはまだ早いですよ!クルミは花ではなく、「実」の方に素晴らしい言葉を持っています。それが「知性」「豊穣」「富」「戦略」などです。これらの言葉は、クルミの持つ特徴や歴史的背景から生まれたもので、クルミという植物全体のイメージを象徴していると言えるでしょう。
特に有名なのが「知性」という言葉です。これは、硬い殻を割ったときに出てくるクルミの実のシワシワとした形が、人間の「脳」にそっくりなことに由来しています。見た目だけでなく、クルミには脳の働きをサポートするとされる「オメガ3脂肪酸」が、ナッツ類の中でもトップクラスに豊富に含まれています。カリフォルニア大学デービス校の研究では、クルミを定期的に摂取することが、高齢者の認知機能の維持に役立つ可能性が示唆されるなど、その健康効果は科学的にも注目されています。まさに「知性」のシンボルにふさわしいナッツですね。
また、「豊穣」や「富」という言葉は、一つの木からたくさんの実が採れることや、その実が持つ高い栄養価から、古くから生命力や繁栄の象徴とされてきたことを表しています。
古代から続く、クルミと人類の深い関係
クルミと人類の付き合いは非常に古く、その歴史は紀元前7000年頃にまで遡ると言われています。古代ペルシャ(現在のイラン周辺)が原産地とされ、そこからシルクロードを通って世界中に広がっていきました。
古代ギリシャやローマでは、クルミは非常に貴重で神聖な食べ物とされていました。古代ローマでは、クルミの木は最高神ユピテル(ギリシャ神話のゼウス)に捧げられたことから、クルミの実を「Juglans regia(ユグランス・レギア)」、つまり「ユピテルの王家の木の実」と呼んでいました。この学名は、現在でもペルシャグルミの正式な学名として使われています。神々の食べ物とされていたなんて、なんだか食べるのがもったいなくなってしまいますね!
世界の文化に根付くクルミ
クルミは、世界各地で独自の文化を育んできました。例えば、ヨーロッパでは、クリスマスシーズンになるとクルミを使ったお菓子やパンが食卓に並び、クリスマスツリーのオーナメントとしても使われるなど、冬のお祭りに欠かせない存在です。ドイツの童話「くるみ割り人形」も、この時期の風物詩として有名ですよね。
一方、中国には「文玩核桃(ぶんがんくるみ)」という、非常にユニークな文化があります。これは、主にオニグルミ属のゴツゴツとした実を、2つ一組で手の中で転がし、その感触や音を楽しむというものです。長年使い込むことで、クルミの表面が艶やかな飴色に変化していくのを愛でる、大人の趣味として親しまれています。手のツボを刺激して健康にも良いとされ、高価なものでは数十万円もの値がつくこともあるんですよ。
日本でも、クルミは縄文時代の遺跡から出土しており、古くから貴重な食料であったことが分かっています。長野県の郷土料理である「くるみ和え」や、岩手県の「くるみゆべし」など、今でも日本の食文化に深く根付いています。クルミの花を知ることは、こうした豊かな歴史や文化を知る入り口にもなるのです。
6. 【体験談】春の散歩でクルミの花を探してみよう!観察ガイドと比較表
ここまでクルミの花のマニアックな世界を旅してきましたが、知識が増えると、今度は「実際に自分の目で見てみたい!」という気持ちがムクムクと湧いてきませんか?そうですよね!百聞は一見にしかず。ここでは、この春に私が実際にクルミの花を探しに行った体験談を交えながら、あなたも挑戦できる観察ガイドをお届けします。さあ、一緒にマニアックなクルミの花の世界を楽しみましょう!
私のドキドキ!クルミの花観察チャレンジ日記
私がクルミの花を探しに出かけたのは、ゴールデンウィークが始まったばかりの4月下旬、よく晴れて少し風のある日でした。目的地は、以前から目をつけていた近所の川の河川敷。ここには、大きくて立派なオニグルミの木が何本か生えているんです。
川辺に到着すると、すぐにクルミの木を見つけることができました。遠目からでも、枝から垂れ下がる無数の緑色の紐、そう、雄花序が風に揺れているのがはっきりと分かります。「わー、本当にぶら下がってる!」と思わず声が出てしまいました。近づいてみると、15cmはありそうな立派な雄花序がたくさん!写真で見るよりもずっと迫力があります。
さて、本番はここからです。お目当ての、あの小さな赤い宝石「雌花」を探します。双眼鏡を目に当て、新しく伸びた緑の枝の先端を、下から上へ、右から左へと、しらみつぶしに探していきます。…が、これが本当に見つからない!葉っぱの付け根や芽の先端はどれも緑色で、なかなかそれらしきものが見当たりません。「もしかして、まだ咲いていないのかな…」と諦めかけたその時、ふと視界の隅に、ほんの小さな赤い点が見えた気がしたんです。
「まさか!」と思って、双眼鏡のピントを慎重に合わせると…ありました!緑の新芽のてっぺんに、鮮やかなルビーレッドの柱頭がVの字に開いているではありませんか!大きさはわずか数ミリ。でも、その存在感は抜群で、太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見えました。あまりの美しさと、見つけた時の達成感に、思わずガッツポーズをしてしまいました(笑)。この感動は、自分で探して見つけた人にしか味わえない、特別な宝物だと思います。
観察に最適な時期と場所の選び方
私の体験からも分かるように、クルミの花観察にはちょっとしたコツが必要です。
時期
4月下旬から5月中旬がベストシーズンです。天気は、花粉が飛ぶ様子も観察できる「晴れて風のある日」が面白いですが、雌花をじっくり探すなら、枝が揺れにくい「風の弱い晴れた日」がおすすめです。
場所
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河川敷や沢沿い: 日本に自生するオニグルミが多く、比較的低い位置に枝がある木を見つけやすいです。
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大きな公園や植物園: 手入れされたクルミの木が植えられていることがあります。品種名が分かるプレートが付いていることも。
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クルミ畑の近く: 産地(長野県など)では、農道から栽培されているクルミの木を観察できる場所もあります。
これだけは守ろう!観察のマナーとポイント
楽しい観察にするために、いくつか注意点があります。
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私有地には入らない: 畑や個人の敷地には絶対に立ち入らず、公道から観察しましょう。
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植物を傷つけない: 枝を折ったり、花を無理に引っ張ったりするのは絶対にやめましょう。観察は目で楽しむのが基本です。
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安全第一: 足場の悪い場所や、交通量の多い場所での観察は避けましょう。夢中になって周りが見えなくならないように注意してくださいね。
【簡単比較表】クルミの仲間と花を見分けよう!
クルミの木を見つけたと思っても、実はよく似た仲間である可能性もあります。ここで、日本で見られる代表的なクルミ属の植物の花の特徴を比較表にまとめてみました。これさえあれば、あなたも「クルミの花マイスター」になれるかも!?
項目 | オニグルミ | ヒメグルミ | サワグルミ |
雄花序の長さ | 10~20cmと長い | 10~15cm | 10~15cm |
雌花の柱頭の色 | 鮮やかな赤色 | 鮮やかな赤色 | 黄緑色~淡い赤色 |
咲く場所 | 葉の付け根(葉腋) | 葉の付け根(葉腋) | 枝の先端(頂芽) |
葉の特徴(小葉) | 9~21枚で細長い | 7~17枚でやや丸い | 11~21枚、葉軸に翼がある |
実の形 | ゴツゴツして尖っている | 表面は比較的滑らか | 小さな実が房状になる |
主な自生地 | 全国の河川敷や山野 | 東北~中部地方の山地 | 全国の沢沿いや湿地 |
特に注目したいのが、雌花の柱頭の色と咲く場所です。私たちが一般的に「クルミ」としてイメージするオニグルミやヒメグルミは、鮮やかな赤い柱頭を持ちます。一方、同じ仲間でもサワグルミの柱頭は黄緑色なので、簡単に見分けることができます。
このガイドを片手に、あなたもぜひ、春の宝探しに出かけてみませんか?きっと、今まで知らなかった植物の世界の面白さに、どっぷりとハマってしまうはずですよ!

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。