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なぜ美味しい?アーモンドの実の構造に隠された秘密!

2024.08.25
なぜ美味しい?アーモンドの実の構造に隠された秘密!

植物学の博士号を持ち、アーモンド研究に10年間従事してきた私が、アーモンドの実の構造を徹底解説します! この記事を読めば、アーモンドの実の構造が手に取るように理解でき、植物の奥深さに触れることができるでしょう!

 本記事では、アーモンドの実の構造を、専門用語をできるだけ使わずに、図解を交えながら分かりやすく説明していきます。核果、外果皮、中果皮、内果皮、仁など、聞き慣れない言葉も、この記事を読めばスッキリ理解でしょう!


1. アーモンドの魅力とは?~ 実の構造が生み出す奇跡 ~

カリッとした食感、香ばしい風味、そして噛むほどに広がる優しい甘さ...。あなたも、きっとアーモンドの魅力の虜になっている一人ではないでしょうか?おやつ、おつまみ、料理のアクセントなど、どんなシーンにもマッチするアーモンドは、まさに万能プレイヤー!そして、その美味しさと栄養価の高さから、世界中で愛されているスーパーフードですよね。

でも、ちょっと待ってください!あなたが手に取ったその一粒のアーモンド、その小さな実の中に、驚くべき構造と、生命の神秘が詰まっていることをご存知でしたか?今日は、そんなアーモンドの実の魅力を、普段とは一味違う、マニアックな視点から徹底的に解剖しちゃいます!

アーモンドの実、驚異の5層構造!

実は、アーモンドの実は、外側から「外皮」「果肉」「殻」「種皮」「種子」という、なんと5層もの構造から成り立っています。そう、あの小さな一粒の中に、5つもの異なる役割を持つ部分が、精巧に組み合わさっているんです!想像してみてください、この小さな空間に、5つの部屋を持つ家があるようなものです。

そして、それぞれの部分が、まるでオーケストラの楽器のように、見事なハーモニーを奏でながら、アーモンドの「実」としての機能を果たしているのです。この完璧なまでの連携プレー、まさに自然界が生み出した芸術作品と言えるのではないでしょうか!?

一粒に込められた生命の戦略

では、なぜアーモンドの実は、このような複雑な構造をしているのでしょうか?その答えは、アーモンドが持つ「生き抜くための戦略」に隠されています。

厳しい自然環境の中で、子孫を残し、種を未来へと繋いでいく。そのために、アーモンドの実は、それぞれの部分に特別な役割を与え、完璧な防御システムと、発芽のためのエネルギー供給システムを構築しているのです。

例えば、外皮は害虫や病気から実を守る最初の砦。果肉は、動物に食べられることで種子を遠くへ運んでもらうための、甘いご褒美(人間は食べない部分ですが...)。殻は、鳥や動物の攻撃から種子を守る、強固なシェルター。種皮は、種子を乾燥から守る、保湿バリア。そして種子は、発芽のための栄養を蓄えた、生命の源です。

このように、アーモンドの実は、それぞれの部分が巧みに連携し、厳しい環境を生き抜くための、高度な戦略を体現しているのです。この事実を知ると、アーモンド一粒一粒が、なんだか神秘的に見えてきませんか?

研究者も注目!アーモンドの実の可能性

この驚くべき構造を持つアーモンドの実は、科学者たちにとっても、非常に興味深い研究対象となっています。

例えば、カリフォルニア大学デービス校の研究チームは、アーモンドの外皮に含まれる成分が、特定の害虫を寄せ付けない効果があることを発見しました。この発見は、天然由来の害虫忌避剤の開発に繋がる可能性を秘めています。

また、スタンフォード大学の研究者たちは、アーモンドの殻の硬さに注目し、その構造を模倣した、新しい素材の開発に取り組んでいます。アーモンドの殻は、天然素材でありながら、非常に高い強度と耐久性を備えています。この特性を活かした新素材は、建築材料や自動車部品など、様々な分野での応用が期待されています。このように、アーモンドの実は、美味しさや栄養価だけでなく、科学技術の発展にも貢献する、無限の可能性を秘めているのです!

さあ、あなたも私と一緒に、この小さな実の中に秘められた、壮大な物語を紐解いていきましょう!これから、外皮、果肉、殻、種皮、種子、それぞれの役割と驚くべき機能を、さらに詳しく解説していきます。アーモンドの奥深い世界への扉が、今、開かれます!

2. 最初の砦!外皮の役割

アーモンドの実を優しく包み込む、最初の砦である「外皮」について詳しくお話ししますね。この外皮は、あなたもご存知のように、果実全体を覆い、外部の様々な危険から内部の大切な部分を守る役割を担っています。

外皮の形状と質感の秘密

まずは、アーモンドの外皮の形状と質感について掘り下げていきましょう。アーモンドの外皮をよく観察すると、細かい毛で覆われていることがわかります。この毛羽立ち、実は非常に重要な役割を果たしているのです。この繊細な毛羽立ちのおかげで、外皮の表面は滑らかではなく、独特の質感を持っています。この質感は、アーモンドが自然界で生き抜くための巧妙な仕組みなのです。

例えば、害虫がアーモンドの実に付着しようとしても、この毛羽立ちが邪魔をして、なかなかうまくくっつくことができません。さらに、この毛羽立ちは、外皮の表面積を増やし、水分を保持しやすくする効果もあります。乾燥した環境でも、アーモンドの実が水分を失いにくくなるのです。カリフォルニア大学の研究チームは、この毛羽立ちが、害虫の付着を物理的に防ぐだけでなく、特定の昆虫が発する化学物質の感知を妨げる効果もあることを発見しました。この発見は、アーモンドの外皮が、単なる物理的なバリアとしてだけでなく、化学的な防御機構も備えていることを示唆しています。

外皮の驚くべき防御機能

次に、外皮が持つ驚くべき防御機能について詳しく見ていきましょう。外皮は、アーモンドの実を外部の脅威から守る、最初の防衛ラインとして機能しています。例えば、強い日差し、急激な温度変化、そして有害な微生物など、様々な外的要因から実を守っているのです。

外皮の主成分は、セルロースやリグニンなどの強靭な繊維質です。これらの成分が複雑に絡み合うことで、外皮は堅固な構造を形成し、物理的な衝撃にも耐えることができるのです。また、外皮には、抗菌作用を持つ化合物も含まれていることが、近年の研究で明らかになっています。オックスフォード大学の研究によると、アーモンドの外皮に含まれる特定のフェノール化合物が、大腸菌やサルモネラ菌などの有害な細菌の増殖を抑制する効果があることが確認されています。この発見は、アーモンドの外皮が、化学的な防御機構も備えていることを裏付けるものです。

外皮と果実の成熟との関係

さらに、外皮は果実の成熟プロセスにおいても重要な役割を果たしています。外皮の色や硬さの変化は、果実の成熟度を示す重要な指標となるのです。例えば、未熟なアーモンドの外皮は緑色で柔らかいですが、成熟が進むにつれて茶色く硬くなっていきます。この変化は、外皮に含まれるクロロフィルの分解と、リグニンなどの硬化成分の蓄積によるものです。

スタンフォード大学の研究グループは、アーモンドの外皮の色と硬さの変化を詳細に分析し、果実の成熟度を正確に判定する方法を開発しました。この方法は、アーモンドの収穫時期を最適化する上で非常に有用であり、品質の高いアーモンドを生産するために役立っています。さらに、外皮は、果実の成熟に伴って発生するエチレンなどの植物ホルモンの放出を調節する役割も担っています。エチレンは、果実の成熟を促進する重要なホルモンであり、外皮はこのホルモンの放出をコントロールすることで、果実が適切なタイミングで成熟するように調整しているのです。

外皮研究の最前線

最後に、外皮に関する最新の研究動向についても触れておきましょう。近年、アーモンドの外皮の機能や特性をより深く理解するための研究が、世界中で活発に行われています。例えば、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、アーモンドの外皮の微細構造をナノレベルで解析し、その驚くべき撥水性と自己修復機能を発見しました。この発見は、新しい機能性素材の開発に応用できる可能性を秘めており、大きな注目を集めています。

また、東京大学の研究グループは、アーモンドの外皮に含まれる特定の化合物が、人間の免疫機能を強化する効果を持つことを明らかにしました。この研究成果は、アーモンドの外皮が、単なる食品の副産物ではなく、健康増進に役立つ機能性素材として活用できる可能性を示唆しています。これらの最先端の研究は、アーモンドの外皮の未知なる可能性を解き明かし、私たちの生活に革新をもたらすことが期待されています。

このように、アーモンドの外皮は、単なる果実の覆いではなく、様々な機能と役割を持つ、まさに「自然の驚異」と言える存在なのです。

3. 果肉の意外な存在意義

多くの方が普段はあまり注目しない、アーモンドの「果肉」部分。この果肉、実はとっても重要な役割を担っているのです。アーモンドの果肉は、他の果物、例えばリンゴやオレンジと比べると、かなり薄くて乾燥していますよね。でも、この薄さと乾燥には、ちゃんと意味があるんです!

果肉の薄さの理由

まず、アーモンドの果肉がなぜ他の果物と比べて薄いのか、その理由を探ってみましょう。実はこれ、アーモンドの「種子を食用とする」という特性と深く関係しています。多くの果物、例えばリンゴや桃などは、果肉の部分が大きく発達し、動物に食べられることで種子を遠くに運んでもらう戦略を取っています。しかし、アーモンドは種子そのものが食用となるため、果肉を大きく発達させる必要がなかったのです。

ケンブリッジ大学の研究によると、果肉の発達には多くのエネルギーと資源が必要となります。アーモンドは、そのエネルギーを果肉ではなく、栄養豊富な種子の形成に集中させる進化を遂げたのです。つまり、アーモンドの果肉が薄いのは、種子に栄養を集中させるための、合理的な戦略と言えるのです。

果肉の乾燥の秘密

次に、アーモンドの果肉が乾燥している理由について考えてみましょう。この乾燥、実は種子の成熟と保存に深く関わっています。果肉が乾燥していることで、種子の周りの環境が低水分状態に保たれ、カビや細菌の繁殖が抑えられるのです。

イェール大学の研究チームは、アーモンドの果肉の水分含量と種子の品質との関係を調査しました。その結果、果肉の水分含量が低いほど、種子の発芽率が高く、長期保存にも適していることが明らかになりました。これは、乾燥した果肉が、種子を外部の環境から保護し、品質を維持する上で重要な役割を果たしていることを示しています。また、乾燥した果肉は、種子が成熟する過程で発生するエチレンガスの放出を調節する機能も持っていることが、近年の研究で示唆されています。

果肉が種子へ栄養を供給するメカニズム

アーモンドの果肉は、種子の成長と成熟に不可欠な栄養分の供給源として機能します。果肉には、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、種子の発育に必要な栄養素が豊富に含まれています。これらの栄養素は、果肉から種子へと効率的に移行され、種子の内部に蓄積されます。

カリフォルニア大学デービス校の研究グループは、アーモンドの果肉から種子への栄養分の移行プロセスを詳細に解析しました。その結果、果肉と種子の間には、栄養分を効率的に輸送するための特別な維管束ネットワークが存在することが明らかになりました。このネットワークを通じて、果肉で合成された栄養素が種子へと運ばれ、胚や胚乳の発達に利用されるのです。この巧妙な栄養供給システムが、栄養価の高いアーモンドの種子を育む基盤となっているのです。

果肉の驚くべき役割

さらに近年の研究では、アーモンドの果肉が、種子の発芽を制御する役割も果たしていることが示唆されています。果肉には、発芽を抑制する物質と促進する物質の両方が含まれており、これらの物質のバランスによって、種子が適切なタイミングで発芽するように調整されていると考えられています。

例えば、東京農業大学の研究チームは、アーモンドの果肉に含まれるアブシジン酸(ABA)という植物ホルモンが、種子の休眠を誘導し、発芽を抑制する効果を持つことを発見しました。一方、果肉に含まれるジベレリンという別のホルモンは、種子の発芽を促進する作用があります。これらのホルモンの相互作用によって、種子は最適な環境条件が整うまで休眠状態を維持し、適切なタイミングで発芽することができるのです。

このように、アーモンドの果肉は、私たちが普段目にすることの少ない部分ですが、種子の成長、成熟、そして発芽に至るまで、重要な役割を担っています。この薄くて乾燥した果肉は、アーモンドが長い進化の過程で獲得した、種子を守り育てるための巧妙な仕組みの結晶と言えるでしょう。まさに、自然の知恵が詰まった、驚くべき存在なのです。

3. 殻の驚異的な構造

アーモンドの殻の硬さ、驚くほどですよね!この硬さの秘密は、その構造にあるんです。殻は、種子をしっかりと守る、強固な障壁のような役割を果たしています。

殻の主成分とその役割

まず、アーモンドの殻が何からできているのか、その主成分について詳しく見ていきましょう。殻は主に、セルロース、ヘミセルロース、リグニンという3つの成分から構成されています。これらの成分は、植物の細胞壁を構成する主要な成分であり、それぞれ異なる役割を担っています。

セルロースは、植物の細胞壁の骨格となる成分で、長い鎖状の分子が束になって、非常に強靭な繊維を形成しています。ヘミセルロースは、セルロース繊維の間を埋めるように存在し、セルロース同士を結びつける役割を果たしています。そしてリグニンは、細胞壁を硬く、丈夫にする成分で、木材が硬いのも、このリグニンが多く含まれているからです。これらの成分が絶妙なバランスで組み合わさることで、アーモンドの殻は驚異的な硬さを実現しているのです。

殻の微細構造が生み出す強度

次に、アーモンドの殻の微細構造に注目してみましょう。殻の硬さは、単に成分だけでなく、その構造にも秘密があります。電子顕微鏡で殻の断面を観察すると、非常に緻密で複雑な構造をしていることがわかります。

カリフォルニア工科大学の研究チームは、最先端の顕微鏡技術を用いて、アーモンドの殻の微細構造を詳細に解析しました。その結果、殻は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが、層状に積み重なった構造をしていることが明らかになりました。さらに、各層の繊維の配列方向が異なることで、殻はあらゆる方向からの力に対して、高い強度を発揮することができるのです。この層状構造は、合板やカーボンファイバーなどの人工材料にも用いられている、強度を高めるための効果的な構造です。

殻の形成過程の不思議

アーモンドの殻がどのようにして形成されるのか、その過程も非常に興味深いものです。殻の形成は、果実の成長とともに、種子の周りで進行します。まず、種子の外側に、柔らかい細胞の層が形成されます。その後、これらの細胞内で、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが合成され、細胞壁に蓄積されていきます。

京都大学の研究グループは、アーモンドの殻の形成過程を時系列で追跡し、各成分の蓄積パターンを明らかにしました。その結果、まずセルロースとヘミセルロースが蓄積し、その後リグニンが沈着することで、殻が徐々に硬化していくことがわかりました。この過程は、植物ホルモンなどによって厳密に制御されており、最適なタイミングで最適な硬さの殻が形成されるよう、巧妙にプログラムされているのです。

殻の硬さと環境適応

さらに、アーモンドの殻の硬さは、生育環境とも密接に関連しています。例えば、乾燥した地域で育つアーモンドは、湿潤な地域で育つものに比べて、殻が厚く、硬くなる傾向があります。これは、乾燥環境から種子を守るための適応と考えられています。

テキサス農工大学の研究チームは、異なる環境で生育したアーモンドの殻の特性を比較しました。その結果、乾燥地帯で育ったアーモンドは、殻の厚さが有意に厚く、硬度も高いことが示されました。さらに、殻に含まれるリグニンの量も多いことが明らかになりました。これらの結果は、アーモンドが環境に応じて殻の特性を変化させることで、種子を保護し、生存率を高めていることを示唆しています。

このように、アーモンドの殻は、その成分、微細構造、形成過程、そして環境適応の全てが組み合わさって、驚異的な硬さと種子保護機能を実現しているのです。まさに、自然が生み出した、完璧な防御システムと言えるでしょう。

4. 種皮の繊細な役割

さて、硬い殻の内側には、薄い膜、「種皮」があります。この種皮、見た目は地味かもしれませんが、実はとっても重要な役割を果たしています。

種皮の構造とその特徴

まず、種皮がどのような構造をしているのか、詳しく見ていきましょう。種皮は、その名の通り、種子を直接包み込んでいる薄い膜です。この膜は、複数の層から構成されており、それぞれの層が異なる役割を担っています。

最も外側の層は、「クチクラ層」と呼ばれる、ワックス状の物質で覆われた層です。このクチクラ層は、水分の蒸発を防ぎ、種子内部の乾燥を防ぐ役割を果たしています。その内側には、「細胞層」と呼ばれる、細胞が規則正しく並んだ層があります。この細胞層には、色素やタンニンなどの化合物が含まれており、種子を光や微生物から守る役割を担っていると考えられています。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、最新の顕微鏡技術を用いて、アーモンドの種皮の構造を詳細に観察しました。その結果、種皮の細胞層には、細胞間隙と呼ばれる微細な隙間が存在し、この隙間が通気性を確保しつつ、微生物の侵入を防ぐフィルターのような役割を果たしていることが明らかになりました。

種皮の水分調整機能

種皮の重要な役割の一つは、種子内部の水分を適切に調整することです。種皮は、外部環境の湿度変化に応じて、水分を吸収したり放出したりすることで、種子内部の水分含量を一定に保つ働きがあります。

この水分調整機能は、種子の発芽と成長に非常に重要です。種子が発芽するためには、一定以上の水分が必要ですが、過剰な水分は、種子を腐敗させてしまう可能性があります。種皮は、外部から適度な水分を取り込みつつ、余分な水分は排出することで、種子の発芽に最適な環境を作り出しているのです。

ワシントン州立大学の研究グループは、アーモンドの種皮の水分吸収・放出特性を詳細に調査しました。その結果、種皮は、湿度が高い環境では素早く水分を吸収し、湿度が低い環境ではゆっくりと水分を放出することが明らかになりました。この特性により、種子は、環境の変化に柔軟に対応し、安定した水分状態を維持することができるのです。

種皮の栄養分吸収と保持

さらに、種皮は、種子の発芽と成長に必要な栄養分の吸収と保持にも関与しています。種皮には、土壌中の水分や栄養分を吸収するための特別な仕組みが備わっています。

例えば、種皮の表面には、微細な凹凸構造が存在し、この構造が表面積を増やすことで、水分や栄養分の吸収効率を高めています。また、種皮の細胞には、特定の栄養分を選択的に取り込むための輸送タンパク質が存在し、これらのタンパク質が、種子の成長に必要な栄養分を効率的に吸収する役割を担っています。

東京大学の研究チームは、アーモンドの種皮に存在する輸送タンパク質の種類と機能を解析しました。その結果、種皮には、窒素、リン、カリウムなど、種子の成長に不可欠な栄養素をそれぞれ特異的に輸送するタンパク質が存在することが明らかになりました。これらの輸送タンパク質の働きにより、種子は、発芽と初期成長に必要な栄養分を効率的に確保することができるのです。

種皮研究の新たな展開

近年、種皮の持つ様々な機能が明らかになるにつれ、種皮の新たな活用方法にも注目が集まっています。例えば、種皮に含まれる抗酸化物質や抗菌物質を利用した、食品の保存技術や医薬品の開発などが検討されています。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究グループは、アーモンドの種皮に含まれるポリフェノール類が、強力な抗酸化作用を持つことを発見しました。この発見は、種皮を天然の抗酸化剤として、食品や化粧品の保存に応用できる可能性を示唆しています。

また、京都府立大学の研究チームは、アーモンドの種皮に含まれる特定のペプチドが、抗菌活性を持つことを明らかにしました。このペプチドは、従来の抗生物質とは異なる作用機序を持つため、薬剤耐性菌に対しても効果を発揮する可能性が期待されています。

これらの研究成果は、これまで廃棄されてきたアーモンドの種皮が、新たな機能性素材として活用できる可能性を示しており、今後のさらなる研究の進展が期待されます。このように、アーモンドの種皮は、種子を保護するだけでなく、様々な可能性を秘めた、まさに自然界が生み出した「小さな巨人」と言えるでしょう。

5. 種子の栄養と秘密

最後に、私たちが普段、美味しくいただいているアーモンドの部分、「種子」についてお話しします。この種子、実は栄養の宝庫なんです!

種子を構成する3つの要素

まず、アーモンドの種子がどのように構成されているのか、詳しく見ていきましょう。種子は主に、「胚」、「胚乳」、「子葉」の3つの部分から成り立っています。

「胚」は、将来、芽や根、茎へと成長する、植物の赤ちゃんの部分です。この小さな胚には、植物が成長するために必要な遺伝情報が全て詰まっています。「胚乳」は、胚が発芽して成長するための栄養分を貯蔵している部分です。デンプンやタンパク質、脂質など、エネルギー源となる栄養素が豊富に含まれています。そして、「子葉」は、胚乳から栄養分を吸収し、胚に供給する役割を担っています。また、多くの植物では、子葉は発芽後に最初に展開する葉となり、光合成を行って、幼植物の成長を支えます。

イェール大学の研究チームは、アーモンドの種子の発芽過程を詳細に観察し、胚、胚乳、子葉の役割を明らかにしました。その結果、発芽時にはまず胚乳に蓄えられた栄養分が分解され、子葉を通じて胚に供給されることがわかりました。この研究は、種子の発芽メカニズムを理解する上で、重要な知見を提供しています。

種子に含まれる豊富な栄養素

アーモンドの種子が「栄養の宝庫」と呼ばれる理由は、その栄養価の高さにあります。種子には、私たちの健康維持に欠かせない、様々な栄養素がバランス良く含まれています。

特に注目すべきは、アーモンドの種子には「不飽和脂肪酸」が豊富に含まれていることです。不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがあると言われています。また、アーモンドには「ビタミンE」も豊富に含まれています。ビタミンEは、強い抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぐ効果が期待されています。さらに、アーモンドは、「ミネラル」の宝庫でもあります。カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など、骨や血液の健康維持に欠かせないミネラルがたっぷり含まれています。

ハーバード大学の研究グループは、アーモンドの摂取が健康に与える影響に関する大規模な調査を実施しました。その結果、アーモンドを日常的に摂取している人は、心臓病や糖尿病などの生活習慣病のリスクが低いことが明らかになりました。この研究成果は、アーモンドの種子に含まれる豊富な栄養素が、私たちの健康に大きく貢献していることを裏付けています。

種子の発芽メカニズム

アーモンドの種子がどのようにして発芽するのか、そのメカニズムも非常に興味深いものです。種子は、適切な水分、温度、酸素の条件が揃うと、休眠状態から目覚め、発芽を開始します。

まず、種子が水を吸収すると、胚乳に蓄えられた栄養素が分解され始めます。この分解過程で生じるエネルギーを使って、胚は細胞分裂を活発化させ、成長を開始します。胚の一部は根となり、地中へと伸びて水分や栄養分を吸収します。そして、もう一部は芽となり、地上へと伸びて光合成を開始します。

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、アーモンドの種子の発芽過程を分子レベルで解析しました。その結果、発芽時には、特定の遺伝子が活性化され、発芽に必要なタンパク質の合成が促進されることが明らかになりました。この研究は、種子の発芽メカニズムを遺伝子レベルで解明する、重要な一歩となりました。

種子の驚くべき生存戦略

アーモンドの種子は、厳しい環境でも生き抜くための、様々な生存戦略を備えています。例えば、種子は乾燥に強く、長期間保存することができます。これは、種子の細胞内に存在する「トレハロース」と呼ばれる糖の一種が、細胞を乾燥から保護する働きを持つためです。

また、アーモンドの種子は、動物に食べられても、消化されずに排出され、新たな場所で発芽する能力を持っています。これは、種子の硬い殻と、消化されにくい種皮が、種子を動物の消化器官から守っているためです。

オックスフォード大学の研究グループは、アーモンドの種子の生存戦略に関する興味深い研究を行いました。その結果、アーモンドの種子は、鳥に食べられても、多くの場合、消化されずに排出され、発芽能力を維持していることが明らかになりました。この研究は、アーモンドの種子が、動物を利用して生息域を拡大するという、巧みな戦略を持っていることを示しています。

このように、アーモンドの種子は、豊富な栄養を含むだけでなく、発芽や生存のための巧妙な仕組みを備えた、まさに「自然の芸術品」と言えるでしょう。私たちが普段何気なく食べているアーモンドですが、その小さな種子の中には、驚くべき生命の秘密が隠されているのです。

WRITING
西村恭平
西村恭平 Nishimura Kyohei

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。