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採れたては格別!家庭で楽しむくるみの栽培入門

2025.10.14
採れたては格別!家庭で楽しむくるみの栽培入門

「自宅の庭で収穫した、採れたてのくるみを味わってみたい」そう思ったことはありませんか?香ばしくて栄養満点のくるみを自分で栽培できたら素敵ですよね。しかし、何から始めればいいのか、そもそも家庭で育てられるのか、疑問も多いはず。

この記事では、くるみの苗木の選び方から、植え付け、日々の管理、そして収穫のコツまで、初心者の方が気になるポイントを徹底解説します。「くるみの栽培は難しい」というイメージが、きっと変わりますよ。

1. 自家製くるみは絶品!家庭で楽しむくるみ栽培の始め方

こんにちは!くるみ栽培の世界へようこそ!この記事を読んでくださっているあなたは、「お家で美味しいくるみを収穫してみたいなぁ」なんて、素敵な夢をお持ちなのではないでしょうか?お店で買うくるみももちろん美味しいですが、自分で育てたくるみの味は、それはもう格別なんですよ!あの硬い殻をパカっと割った瞬間の感動と、口いっぱいに広がる新鮮な風味…一度味わったら、きっと忘れられなくなります。

でも、「くるみの栽培って、なんだか専門的で難しそう…」「広い土地がないとダメなんじゃない?」なんて不安に思うかもしれません。大丈夫です!ポイントさえしっかり押さえれば、家庭でも十分にくるみ栽培を楽しむことができるんです。実は、くるみの木は比較的丈夫で、日本の気候にも合っているんですよ。

この記事では、あなたの「くるみ栽培、始めてみたい!」という気持ちを全力でサポートするために、最初のステップである品種選びから、くるみが元気に育つための土づくり、一年間の具体的なお手入れ方法、そして多くの人がつまずきがちな「実がならない!」といったお悩みの解決策まで、具体的かつ、ちょっとマニアックな視点も交えながら徹底的に解説していきます。

私自身も、試行錯誤しながらくるみ栽培を楽しんでいる一人です。その中で得た知識や、時には失敗から学んだリアルな情報もたっぷりお伝えしますね。この記事を読み終える頃には、あなたも「私にもできそう!早く苗木を探しに行きたい!」とワクワクしているはず。さあ、一緒にくるみ栽培マスターへの第一歩を踏み出しましょう!

2. くるみ栽培の第一歩!どの品種を選ぶ?

くるみ栽培を成功させるための最初の、そして最も重要なステップが「品種選び」です。スーパーで売っているのはほとんどが「カシグルミ」という種類ですが、実は日本で栽培できるくるみには、それぞれ個性豊かな仲間たちがいるんですよ。自分の住んでいる地域の気候や、どんな風に栽培したいか、そしてどんな味のくるみを食べたいかによって、選ぶべき品種は変わってきます。ここでは、特に日本の家庭菜園で人気があり、育てやすい代表的な3つの品種を、それぞれのマニアックな特徴とともにご紹介します!

なぜ品種選びがそんなに大切なの?

「どれを植えても、くるみはくるみでしょ?」と思うかもしれませんが、実は品種によって樹の大きさ、実がなるまでの年数、病気への強さ、そしてもちろん殻の硬さや味まで、全く違うんです。例えば、とても大きくなる品種を選んでしまうと、お庭のスペースに収まらなくなって後から大変なことになったり、殻が硬すぎて割るのに一苦労…なんてことも。最初にあなたの栽培環境や目的に合った品種をじっくり選ぶことが、後々の「こんなはずじゃなかった…」を防ぎ、楽しいくるみ栽培ライフに繋がる大切なポイントなんです。

家庭菜園向け品種①:ヒメグルミのマニアック解説

日本に自生する「オニグルミ」の変種で、まさに日本の気候に最適なのがこの「ヒメグルミ」です。名前の通り、他のくるみに比べて樹も実も小ぶり(姫サイズ)なのが最大の特徴。そのため、比較的コンパクトなスペースでも栽培しやすいという大きなメリットがあります。

ヒメグルミの魅力と注意点

  • 大きさ:樹高は5〜10m程度と比較的高くならず、実も直径2〜3cmほどと可愛らしいサイズです。

  • 殻の割りやすさ:オニグルミよりは割りやすいですが、カシグルミに比べると硬めです。ただ、その分、鳥などの食害に遭いにくいという利点もあります。割る際には、殻の合わせ目に沿って金槌で叩くと綺麗に割れますよ。

  • 味の特徴:濃厚でコクが強く、香りが非常に良いのが特徴です。その風味は「一度食べたら他のくるみが物足りなくなる」と言われるほど。脂肪分が多く、クリーミーな味わいは、お菓子作りよりも、そのままお酒のおつまみにするような食べ方が最高です!

  • 栽培の難易度:日本の在来種に近いため、病害虫に強く、特別な手入れをしなくても元気に育ってくれることが多いです。耐寒性も強いので、東北や北海道などの寒い地域での栽培にも向いています。ただし、実がなるまでには植え付けから5〜8年ほどかかる、少し気長な付き合いが必要な品種です。

家庭菜園向け品種②:カシグルミ(シナノグルミ)の魅力

一般的に「西洋グルミ」とも呼ばれ、私たちがお店でよく目にするのがこの「カシグルミ」です。長野県で品種改良された「シナノグルミ」という品種が特に有名で、商業栽培の主流となっています。

カシグルミの魅力と注意点

  • 大きさ:樹高は10〜15m以上になることもあり、ヒメグルミに比べると広いスペースが必要です。実は大ぶりで、直径4〜5cmほどになります。

  • 殻の割りやすさ:殻が薄くて割りやすいのが最大のメリット!手で力を加えるだけで割れる品種(テウチグルミ)もこのカシグルミの仲間です。お子さんと一緒に収穫して割る楽しみも味わえますね。

  • 味の特徴:ヒメグルミに比べると、味はあっさりとしていて、渋みが少なく、えぐみが少ないのが特徴です。クセがないので、サラダのトッピングやお菓子作り、パン生地への練り込みなど、どんな料理にも合わせやすいオールラウンダーと言えます。

  • 栽培の難易度:比較的早く、植え付けから3〜5年で実をつけ始めるのが嬉しいポイント。ただし、ヒメグルミに比べると病気(特に黒斑病など)にやや弱い傾向があります。また、冷涼な気候を好むため、夏の高温多湿が厳しい地域では少し栽培が難しいかもしれません。

品種別特徴マニアック比較表

ここで、ご紹介した2つの品種に、殻が手で割れることで有名な「テウチグルミ」も加えた3品種の特徴を比較表にまとめてみました。あなたの理想のくるみ栽培に一番近いのはどの品種か、チェックしてみてください!

特徴 ヒメグルミ カシグルミ(シナノグルミ) テウチグルミ
原産 日本 ヨーロッパ・アジア カシグルミの変種
樹の大きさ 小〜中(5〜10m) 大(10〜15m以上) 中(8〜12m)
実の大きさ 小さい 大きい 大きい
殻の硬さ 硬い 薄い 非常に薄い(手で割れる)
味わい 濃厚・クリーミー あっさり・上品 あっさり・甘みあり
収穫までの年数 5〜8年 3〜5年 4〜6年
耐病性 強い 普通 普通
耐寒性 非常に強い 強い 強い
おすすめの用途 そのまま食べる、おつまみ 料理、製菓・製パン 生食、お子様と楽しむ
マニアック情報 野生種に近く、栄養価が高いとの研究も 日本では長野県東御市が一大産地 収穫量はやや少なめな傾向

3. くるみがスクスク育つ栽培環境づくり!

あなたの運命のくるみの品種が決まったら、次はそのくるみがのびのびと元気に育つための「お家」を用意してあげる番です。くるみ栽培において、植え付ける場所の環境、特に「日当たり」「風通し」、そして最も重要な「土壌」を整えることは、今後の成長を大きく左右する、まさに基礎工事のようなもの。「くるみ栽培は土づくりで9割決まる」と言われるほど、このステップは重要なんです。ここでは、プロの栽培家も実践するような、ちょっとマニアックな環境づくりのこだわりポイントを詳しく解説していきますね!

日当たりと風通しが栽培成功の鍵

くるみの木は、光合成をたくさんして栄養を作るために、たっぷりの日光を必要とします。植え付け場所を選ぶ際は、1日を通してできるだけ長く直射日光が当たる、お庭の南側などが理想的です。最低でも1日に6時間以上は日が当たる場所を選んであげましょう。日照不足になると、枝がひょろひょろと弱々しく育ってしまい、花付きや実付きが悪くなる一番の原因になります。

そして、日光と同じくらい大切なのが「風通し」です。空気がよどんで湿気が多い場所では、カビが原因となる病気(特に炭疽病など)が発生しやすくなります。建物や塀のすぐそばは避け、枝葉の間を心地よい風が通り抜けるような、開けた場所を選んであげてください。適切な剪定で風通しを良くしてあげることも重要ですが、それはまた後ほど詳しく解説しますね。

くるみが好む土壌とは?基本の土づくり

くるみの木は、水はけが良く、かつ適度な保水性があり、栄養分を豊富に含んだふかふかの土を好みます。根が深く広く伸びるため、植え付け前には土を深く耕して、根がスムーズに成長できる環境を作ってあげることが大切です。

植え付け前の土壌改良

  1. 穴を掘る:植え付ける場所を決めたら、直径・深さともに最低でも70cm〜1mほどの大きな穴を掘ります。これは、苗木の根鉢の2〜3倍の大きさが目安です。

  2. 土壌改良材を混ぜる:掘り上げた土に、腐葉土や堆肥(牛ふん堆肥やバーク堆肥など)をたっぷりと混ぜ込みます。量の目安は、掘り上げた土全体の3割程度です。これにより、土がふかふかになり、水はけと保水性のバランスが格段に良くなります。

  3. 元肥を入れる:さらに、緩やかに効果が持続する「緩効性化成肥料」や、有機肥料(油かすなど)を元肥として混ぜ込みます。これで、くるみが植え付け直後から元気に成長するための栄養を確保できます。

このひと手間をかけるだけで、根の張りが全く違ってきます。大変な作業ですが、くるみの木への最初のプレゼントだと思って、ぜひ頑張ってみてください!

【プロの技】日本の土壌に合わせたpH調整術

ここが少しマニアックなポイントです。植物にはそれぞれ好む土の酸度(pH)があり、くるみはpH6.0〜7.0の「弱酸性〜中性」の土壌を最も好みます。しかし、日本の土壌は雨が多いため、土の中のアルカリ性の成分が流されて「酸性」に傾きがち(pH5.0〜5.5程度)なのが一般的です。

土壌が酸性に傾きすぎると、くるみが必要な栄養素(特にリン酸やマグネシウムなど)をうまく吸収できなくなり、成長が悪くなってしまいます。そこで重要になるのが、植え付け前に土のpHを調整してあげる作業です。

pH調整の具体的なステップ

  1. 土壌酸度計で測定:まずは、植え付け予定地の土のpHを測ってみましょう。土壌酸度計は、園芸店やホームセンターで1,000円〜3,000円程度で購入できます。

  2. 石灰資材で中和:測定した結果、pHが6.0よりも低い酸性だった場合は、「苦土石灰(くどせっかい)」や「有機石灰」といったアルカリ性の石灰資材を土に混ぜ込みます。苦土石灰は、酸度を調整すると同時に、くるみの成長に必要なマグネシウムも補給できるので特におすすめです。

  3. 散布量の目安:製品のパッケージに記載されている使用量を参考にしますが、一般的に1平方メートルあたり100g〜150g(軽く一握り〜二握り)を土の表面にまんべんなく撒き、よく耕して土と混ぜ合わせます。

  4. タイミング:この作業は、植え付けの最低でも2週間〜1ヶ月前に行うのが理想です。石灰が土と馴染むまでに少し時間がかかるためです。

土のpHを適切に管理することは、目には見えにくい部分ですが、くるみ栽培の成功率を格段に上げてくれるプロの技。ぜひチャレンジしてみてください。

4. 【年間作業カレンダー】くるみ栽培のお手入れ術

くるみの木を植えたら、あとは収穫を待つだけ…というわけにはいきません。美味しい実をたくさんつけてもらうためには、一年を通して季節に合わせたお世話をしてあげることが大切です。でも、安心してください。毎日つきっきりで作業が必要なわけではありません。それぞれの季節で「これだけはやっておきたい」というポイントを押さえておけば大丈夫です。ここでは、くるみ栽培のプロが行う春夏秋冬の作業を、分かりやすくカレンダー形式でご紹介しますね!

春(3月~5月):植え付けと芽吹きの季節

冬の寒さが和らぎ、新しい命が芽吹く春。くるみ栽培のスタートに最適な季節です。

植え付け

  • 時期:本格的に暖かくなる前の3月中旬〜4月上旬が植え付けのベストシーズンです。この時期に植えることで、根が活動を始めるタイミングと合い、スムーズに根付きやすくなります。

  • 方法:前章で準備した土に、苗木の根鉢を崩さないようにそっと植え、たっぷりと水を与えます。植え付け後は、木が倒れないように支柱を立ててあげると安心です。

肥料(追肥)

  • 時期:新芽が伸び始める3月頃に、今年1年元気に成長するための「追肥」をします。これは「芽出し肥(めだしごえ)」とも呼ばれます。

  • 種類と量:窒素・リン酸・カリがバランス良く配合された化成肥料や、有機肥料(油かす、鶏ふんなど)を、木の周囲に掘った溝に施します。量は、木の年齢や大きさによって変わりますが、成木(5年以上)で1本あたり500g〜1kg程度が目安です。肥料の与えすぎは逆効果になることもあるので注意しましょう。

夏(6月~8月):成長期!水やりと病害虫対策

梅雨に入り、気温がぐんぐん上がる夏は、くるみの木が最も成長する時期です。

水やり

  • 頻度:地植えの場合、根付いてしまえば基本的に雨水だけで十分ですが、何週間も雨が降らず、土がカラカラに乾いている場合は、朝夕の涼しい時間帯にたっぷりと水を与えましょう。特に、植え付けてから2〜3年の若い木は、乾燥に弱いので注意が必要です。

  • ポイント:水のやりすぎは根腐れの原因になります。土の表面が乾いているのを確認してから水やりをするのが基本です。

病害虫対策

  • 注意すべき病害虫:高温多湿になるこの時期は、葉に黒い斑点ができる「炭疽病」や、アブラムシ、カイガラムシなどが発生しやすくなります。

  • 対策:まずは、日当たりと風通しを良くしておくことが最大の予防になります。病気や害虫を初期段階で発見するために、こまめに葉の裏などを観察する習慣をつけましょう。発生してしまった場合の詳しい対策は、次の章で解説します。

秋(9月~11月):待ちに待った収穫の時期

夏の終わりから秋にかけて、いよいよ待ちに待った収穫シーズンがやってきます!

収穫

  • 時期:品種にもよりますが、9月中旬から10月下旬頃が収穫のピークです。

  • 収穫のサイン:実を包んでいる緑色の外果皮(がいかひ)に亀裂が入り、自然に木から落下し始めたら収穫の合図です。木を揺すって落ちてくる実を集めたり、高枝切り鋏を使ったりして収穫します。

お礼肥(おれいごえ)

  • 時期:収穫が終わった10月〜11月頃に、「お礼肥」を施します。これは、実をたくさんつけて疲れた木に「一年間ありがとう、お疲れ様」という気持ちを込めて与える肥料です。

  • 目的:来年の花芽の形成を助け、樹勢を回復させる重要な役割があります。春と同じように、化成肥料や有機肥料を与えましょう。

冬(12月~2月):来年のための重要作業「剪定」

葉がすべて落ち、木が休眠期に入る冬は、くるみ栽培において非常に重要な「剪定(せんてい)」の適期です。

剪定の目的と重要性

  • 目的:剪定には、①樹形を整える、②日当たりと風通しを良くして病害虫を防ぐ、③栄養が効率良く実に届くようにして、収穫量を増やす、という3つの大きな目的があります。

  • 時期:木の活動が完全に止まっている12月〜2月に行います。この時期以外に太い枝を切ると、切り口から樹液が止まらなくなり、木が弱ってしまう原因になるので絶対に避けましょう。

マニアックな剪定の基本テクニック

  • 切るべき枝(忌み枝)

    1. 枯れ枝:病害虫の住処になるので、見つけたら必ず根元から切り落とします。

    2. 内向き枝・交差枝:木の中心に向かって伸びる枝や、他の枝と交差している枝は、風通しを悪くする原因です。

    3. ひこばえ:木の根元から生えてくる細い枝は、本体の栄養を奪うので見つけ次第切ります。

    4. 徒長枝(とちょうし):上に向かって勢いよくまっすぐ伸びる枝は、花や実がつきにくいので、根元から切るか、短く切り詰めます。

  • ポイント:一度にたくさんの枝を切りすぎると、木がダメージを受けてしまいます。全体の2〜3割程度の枝を切ることを目安に、「少し物足りないかな?」くらいで止めておくのが成功のコツです。切り口には、病原菌の侵入を防ぐために「癒合剤(ゆごうざい)」を塗っておくと安心ですよ。

5. くるみ栽培の「困った!」を解決!

愛情を込めてくるみを育てていても、時には「あれ?」と思うようなトラブルに見舞われることもありますよね。「何年も育てているのに、全然実がならない…」「葉っぱに黒い斑点が出てきたけど、これって病気?」など、栽培しているからこそ出てくるお悩みはつきものです。でも、大丈夫。原因と対策を正しく知っておけば、慌てずに対処できます。この章では、くるみ栽培でよくあるお悩みをQ\&A形式で、専門的な視点も交えながら分かりやすく解決していきます!

Q1. 何年も育てているのに、実がなりません…

これは、くるみ栽培で最も多くの人が直面するお悩みかもしれません。考えられる原因はいくつかありますが、最も大きな原因は、くるみが持つ「自家不和合性(じかふわごうせい)」という少しマニアックな性質にあります。

自家不和合性ってなに?

簡単に言うと、「自分の花粉では受粉して実を作ることができにくい」という性質のことです。くるみは一本の木に雄花(おばな)と雌花(めばな)の両方を咲かせますが、多くの品種では、雄花の花粉が飛ぶ時期と、雌花が受粉できる時期が微妙にズレているんです。これを専門用語で「雌雄異熟(しゆういじゅく)」と言います。これは、より多様な遺伝子を残すために、植物が進化の過程で身につけた賢い仕組みなんですね。

解決策はあるの?

はい、解決策はあります!

  1. 異なる品種をもう1本植える(混植)
    最も確実な方法は、開花時期が少し違う、別の品種のくるみを近くに植えてあげることです。例えば、カシグルミを育てているなら、受粉樹としてヒメグルミを植える、といった具合です。異なる品種の花粉がお互いに行き来することで、受粉の確率が劇的にアップします。お庭のスペースに余裕があれば、ぜひ検討してみてください。

  2. 人工授粉にチャレンジ!
    「もう1本植えるスペースはないよ!」という場合は、「人工授粉」という方法があります。雄花が咲いて花粉が出始めたら、その花粉を綿棒や柔らかい筆先にそっと付けます。そして、雌花の先端が赤く開いているタイミングを狙って、優しくちょんちょんと花粉をつけてあげるのです。少し手間はかかりますが、この作業で実付きが大きく改善されることがあります。まるで自分が恋のキューピッドになったような、楽しい作業でもありますよ。

Q2. 葉や実に黒い斑点ができました…

梅雨時期から夏にかけて、葉や緑色の実に黒い斑点がポツポツと現れたら、それは「炭疽病(たんそびょう)」というカビが原因の病気かもしれません。放置しておくと、斑点がどんどん広がって葉が枯れたり、実が落ちたりする原因になります。

炭疽病の症状と原因

  • 症状:最初は小さな黒い斑点ですが、次第に拡大し、同心円状の輪紋が見られるようになります。湿度が高いと、病斑部に鮭ピンク色のネバネバした胞子の塊ができることもあります。

  • 原因:病原菌はカビの一種で、雨風によって胞子が運ばれ、感染を広げます。特に、風通しが悪く、湿度が高い環境で発生しやすくなります。地面に落ちた病気の葉の中で菌が越冬し、翌年の発生源になるため、注意が必要です。

対策と予防法

  1. 被害にあった葉や実はすぐに取り除く:病気の葉や実を見つけたら、感染が広がる前にすぐに摘み取って、畑の外で処分(焼却するか、土に深く埋める)しましょう。

  2. 風通しを良くする:冬の剪定を適切に行い、枝葉が混み合っている場所をなくして、風通しを良くしておくことが最大の予防になります。

  3. 薬剤散布:病気が発生してしまった場合や、毎年のように発生して困っている場合は、薬剤の使用も有効です。梅雨入り前などの発生しやすい時期に、予防的に殺菌剤を散布します。「ダコニール1000」や「トップジンM水和剤」などの薬剤が、くるみの炭疽病に登録があり、効果的です。使用の際は、必ず製品ラベルの指示に従って、正しい希釈倍率と使用回数を守ってください。

Q3. 白い綿のような虫がついています…

枝や幹に、白い綿や貝殻のようなものがビッシリと付着していたら、それは「カイガラムシ」という害虫の仕業です。この虫は、植物の樹液を吸って木を弱らせるだけでなく、排泄物が原因で葉が黒くなる「すす病」を誘発することもある、とても厄介な害虫です。

カイガラムシの生態と被害

  • 生態:成虫になると、硬い殻やロウ物質で体を覆っているため、薬剤が効きにくいのが特徴です。繁殖力が非常に高く、一度発生するとあっという間に広がってしまいます。

  • 被害:樹液を吸われることで、木の生育が悪くなります。また、カイガラムシの甘い排泄物を求めてアリが集まってきたり、その排泄物を栄養源にして黒いカビ(すす病)が発生し、光合成を妨げたりします。

駆除方法

  1. 物理的にこすり落とす:発生が少ない初期段階であれば、歯ブラシやヘラのようなもので、とにかくこすり落とすのが最も確実で安全な方法です。

  2. 幼虫の時期に薬剤を散布する:カイガラムシの幼虫はまだ殻で覆われていないため、薬剤が効きやすいです。幼虫が発生する5月〜7月頃を狙って、カイガラムシに効果のある殺虫剤(例えば「スミチオン乳剤」など)を散布するのが効果的です。

  3. 冬にマシン油乳剤を散布する(休眠期防除):落葉して木が休眠している冬の時期に、「マシン油乳剤」という薬剤を散布する方法も非常に効果的です。これは、油の膜でカイガラムシを窒息させて駆除する薬剤で、越冬している成虫や卵に高い効果を発揮します。翌春の発生を大きく抑えることができる、プロの農家も実践する予防策です。

6. 【栽培家直伝】収穫したくるみは格別!

長い時間をかけて大切に育ててきたくるみが、ついに収穫の時を迎える…これは、栽培家にとって最高の瞬間ですよね!でも、喜びも束の間。「この硬い殻、どうやって割るの?」「収穫したくるみ、どうやって保存すれば長持ちするの?」といった、収穫後ならではの疑問も出てくるはず。この章では、収穫したくるみを最後まで美味しくいただくための、割り方から保存法、そして私自身が体験したマニアックな食べ比べレポートまで、収穫後の楽しみ方を余すことなくお伝えします。自家製くるみの感動的な美味しさを、存分に味わい尽くしましょう!

収穫したてのくるみの下処理

木から落ちたばかりのくるみは、まだ緑色(熟すと黒っぽくなる)の湿った外果皮に包まれています。この外果皮にはアクが多く、手で触るとかぶれたり、服に付くと取れないシミになったりするので、必ずゴム手袋をして作業しましょう。

  1. 外果皮を取り除く:水を張ったバケツの中に入れ、ブラシなどを使ってゴシゴシと洗い流します。数日間、水に浸けておくと果皮が腐ってきて、より簡単に取り除けるようになります。

  2. 洗浄と乾燥:綺麗になったくるみ(私たちがよく知る硬い殻の状態)を、タワシなどを使って水でよく洗い、表面の汚れを落とします。その後、風通しの良い日陰で、表面が乾くまで1〜2日ほど乾かします。

硬い殻を安全に割る方法

くるみ栽培の最後の難関、それは「殻割り」です。特にヒメグルミのような殻の硬い品種は、コツを知らないと本当に大変。でも、ご安心ください。家庭にある道具でも、安全に綺麗に割る方法がありますよ。

金槌を使った割り方のコツ

用意するものは、金槌と、まな板(古くて丈夫なもの)、そして軍手です。

  1. くるみの尖っている方を上にして、まな板の上にしっかりと立てます。

  2. 尖っている先端部分を、金槌で軽く、コンコンと数回叩きます。

  3. すると、殻の合わせ目の部分(縫合線)に少しずつヒビが入ってきます。

  4. ヒビが広がってきたら、くるみを横にして、合わせ目に沿って優しく叩くと、パカっと綺麗に二つに割ることができます。
    いきなり強く叩くと実まで砕けてしまうので、「優しく、的確に」がポイントです!

おすすめのくるみ割り器

「もっと楽に、安全に割りたい!」という方には、専用の「くるみ割り器(ナッツクラッカー)」が断然おすすめです。様々なタイプがありますが、私のおすすめは、ネジ式で圧力をかけて割るタイプのものです。これなら、力の弱い方でも硬いヒメグルミの殻を安全に割ることができますし、力の加減がしやすいので、中の実を傷つけずに取り出しやすいんです。一つ持っておくと、一生モノの相棒になりますよ。

美味しさを長持ちさせる保存テクニック

収穫したてのくるみは水分を多く含んでいるため、そのまま保存するとすぐにカビが生えてしまいます。美味しさを長持ちさせるには、しっかりと乾燥させることが何よりも重要です。

  1. 天日干し:ザルやネットにくるみを広げ、風通しの良い場所で、時々転がしながら1週間〜10日ほど天日干しします。

  2. 乾燥のサイン:くるみを振ってみて、中でカラカラと音がするようになったら、十分に乾燥したサインです。

  3. 保存:しっかりと乾燥させたくるみは、ネットなどに入れて風通しの良い冷暗所に吊るしておけば、殻付きのままなら1年以上は保存可能です。殻を割った後の「むき身」は、酸化しやすいため、密閉容器に入れて冷蔵庫や冷凍庫で保存し、できるだけ早く食べるようにしましょう。

【実食レポ】ヒメグルミ vs カシグルミ 食べ比べ

最後に、私が実際に自宅で栽培し、収穫した「ヒメグルミ」と「カシグルミ(シナノグルミ)」の味を、マニアックな視点で比較した体験談をお届けします!どちらも本当に美味しいのですが、その個性は全く違っていて、毎年この食べ比べをするのが私の密かな楽しみなんです。

比較項目 ヒメグルミ カシグルミ(シナノグルミ)
香り ★★★★★(濃厚で香ばしい、木の実らしい野生的な香り) ★★★☆☆(穏やかで優しい、上品な甘い香り)
甘み ★★★☆☆(噛みしめると広がる、凝縮された甘み) ★★★★☆(クセのない、すっきりとした軽やかな甘み)
コク・濃厚さ ★★★★★(まるでバターのよう。クリーミーで後を引くコク) ★★☆☆☆(あっさりとしていて、油分は少なめに感じる)
食感 カリッとした歯ごたえが強く、食べ応えがある サクッとした軽い歯触りで、柔らかい
渋皮の風味 わずかな渋みが、全体の味を引き締める良いアクセントに 渋みはほとんど感じられず、非常に食べやすい

私の個人的な感想ですが、ヒメグルミは「飲むように食べる」というよりは、「一粒をじっくり味わう」タイプのくるみです。 ローストして塩を少し振るだけで、最高級のおつまみになります。ウイスキーや赤ワインとの相性は抜群ですね。一方、カシグルミは、そのクセのなさと上品な甘さが魅力。 どんな食材とも喧嘩しないので、サラダに入れたり、パウンドケーキに混ぜ込んだりと、料理のレパートリーを広げてくれます。朝食のヨーグルトとハチミツに加えるのが、私の一番のお気に入りです。

このように、品種によって全く違う魅力があるのが、くるみ栽培の奥深いところ。あなたもぜひ、ご自身で育てた愛情たっぷりのくるみを収穫して、その格別な味わいを体験してみてください。きっと、これまでのくるみのイメージが覆るような、感動的な出会いが待っていますよ!

WRITING
西村恭平
西村恭平 Nishimura Kyohei

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。