糖質制限

糖尿病予防に効果的な糖質制限!正しいやり方と注意点

2024.12.28
糖尿病予防に効果的な糖質制限!正しいやり方と注意点

「糖尿病と診断されたけど、具体的にどうすれば…?」

糖尿病と糖質制限の関係に悩むあなたへ。この記事では、糖尿病予防・改善のための糖質制限について、具体的な方法から注意点まで、専門家が徹底解説します。


1. 糖質制限と糖尿病におけるインスリンの働きを徹底解説

糖質って、甘くて美味しいですよね!ケーキやパスタ、ご飯など、ついつい食べ過ぎてしまうことも…でも、この糖質が私たちの体の中でどうなって、血糖値にどんな影響を与えるか、あなたはご存知ですか? 詳しく解説していきますね!

糖質の消化・吸収とグルコース

実は、糖質は体内で消化・吸収されると、最終的に「グルコース」という物質になります。このグルコースが血液中に入ると、血糖値が上昇するんです。

もう少し詳しく説明しますね。私たちが食事から摂る糖質には、様々な種類があります。例えば、果物に含まれる果糖、砂糖に含まれるショ糖、ご飯やパン、麺類などに含まれるデンプンなど。これらはそれぞれ、単糖類、二糖類、多糖類というグループに分けられます。

単糖類は、これ以上分解できない最小単位の糖質で、ブドウ糖(グルコース)や果糖などがあります。二糖類は、単糖類が2つ結合したもので、砂糖(ショ糖)や乳糖など。多糖類は、単糖類がたくさん結合したもので、デンプンや食物繊維などがあります。

これらの糖質は、口から入ると、唾液や胃液、腸液などの消化酵素によって分解されます。例えば、デンプンは唾液に含まれるアミラーゼという酵素によって分解され、最終的に小腸でグルコースに分解されて吸収されます。砂糖(ショ糖)は、小腸でショ糖分解酵素によってグルコースと果糖に分解されます。

このようにして、様々な糖質が最終的にはグルコースになり、血液中に吸収されることで血糖値が上がるんです。

インスリンの働き:血糖値を下げる重要なホルモン

血糖値が上がると、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。このインスリンが、血糖値を下げるために重要な働きをするんです!

インスリンは、血液中のグルコースを細胞に取り込ませ、エネルギーとして利用したり、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えたりする働きをします。例えるなら、インスリンはグルコースを細胞に届ける配達員さん、またはグルコースを貯蔵庫にしまう管理人さんみたいなものですね。

具体的には、インスリンは細胞の表面にある「インスリン受容体」という鍵穴のようなものに結合します。すると、細胞の扉が開き、グルコースが細胞内に取り込まれるようになります。インスリンのおかげで、血液中のグルコースが減り、血糖値が下がるというわけです。健康な人なら、食事によって血糖値が上昇しても、インスリンがきちんと働いて血糖値を一定の範囲に保ってくれます。

しかし、糖尿病になると、このインスリンの働きが悪くなったり、量が足りなくなったりして、血糖値がうまくコントロールできなくなってしまうんです。

糖尿病(1型、2型)とインスリンの異常

糖尿病には、大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病があります。これらの違いは、インスリンの分泌や働き方にあります。

1型糖尿病は、自己免疫疾患の一つで、自分の免疫細胞がすい臓のβ細胞(インスリンを作る細胞)を攻撃して破壊してしまう病気です。そのため、インスリンがほとんど作られなくなり、血糖値が非常に高くなってしまいます。1型糖尿病の治療には、インスリン注射が不可欠です。

一方、2型糖尿病は、生活習慣などが原因で発症することが多い糖尿病です。2型糖尿病では、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」と、インスリンの分泌量が減る「インスリン分泌不全」の2つの問題が起こります。

インスリン抵抗性とは、インスリンは分泌されているのに、細胞がインスリンに反応しにくくなり、グルコースを取り込みにくくなる状態です。インスリン分泌不全とは、すい臓のβ細胞の機能が低下し、インスリンの分泌量が減ってしまう状態です。

2型糖尿病の初期では、インスリン抵抗性が主な原因であることが多く、進行するとインスリン分泌不全も加わってきます。

糖質の種類と血糖値への影響:GI値(グリセミック・インデックス)

糖質には色々な種類がある、と先程ご説明しましたが、種類によって血糖値の上がりやすさが違うことはご存知でしょうか。

単糖類(ブドウ糖、果糖など)は、消化・吸収が早いので、血糖値を急激に上昇させやすいです。二糖類(砂糖、乳糖など)も、比較的早く吸収されます。一方、多糖類(でんぷんなど)は、消化・吸収に時間がかかるため、血糖値の上昇は比較的緩やかです。

食品に含まれる糖質の、血糖値の上がりやすさを示す指標として、「GI値(グリセミック・インデックス)」というものがあります。GI値は、ブドウ糖を摂取した時の血糖値の上昇度合いを100として、それぞれの食品の血糖値の上昇度合いを数値で表したものです。GI値が高い食品ほど、血糖値を急激に上昇させやすく、GI値が低い食品ほど、血糖値の上昇が緩やかになります。

例えば、白米や食パンはGI値が高く、玄米や全粒粉パンはGI値が低い傾向にあります。糖尿病の食事療法では、GI値を参考に食品を選ぶことも、血糖値コントロールに役立つことがあります。ただし、GI値はあくまで目安であり、食品の調理法や組み合わせ、食べる量などによっても血糖値への影響は変わってくるので、注意が必要です。

以上のように糖質と血糖値、インスリンは密接な関係があり、これらを理解することは健康管理に非常に役立ちます。

2. 糖質制限が糖尿病に効果的な理由:インスリン感受性改善と血糖値コントロール

「糖質制限」って、最近よく聞くけど、本当に糖尿病に効果があるの?と疑問に思っているあなた! 実は、糖質制限は糖尿病の管理にとても有効な方法の一つとして、注目されているんです。

なぜ糖質制限が糖尿病に効果的なのか、そのメカニズムを詳しく解説していきますね!

血糖値上昇の抑制メカニズム

糖質制限が糖尿病に効果的な最大の理由は、血糖値の上昇を抑えられるからです。先程も説明しましたが、糖質を摂ると血糖値が上がり、インスリンがたくさん必要になりますよね。

でも、糖質制限をすると、食事から摂取する糖質の量が減るので、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの必要量も減ります。すると、インスリンを分泌するすい臓の負担が軽くなり、休ませることができます。

例えるなら、いつもフル稼働している工場(すい臓)の稼働時間を減らして、メンテナンスする時間を与えるようなイメージです。これにより、すい臓の機能が回復し、インスリンの分泌が改善する可能性があります。

また、糖質制限によって血糖値の変動幅が小さくなると、血管へのダメージも軽減されます。血糖値が急激に上がったり下がったりすると、血管が傷つきやすくなり、動脈硬化などの合併症のリスクが高まります。

糖質制限は、血糖値の変動を穏やかにすることで、合併症の予防にもつながるんです。

インスリン抵抗性の改善効果

糖質制限は、インスリン抵抗性を改善する効果も期待できます。

インスリン抵抗性とは、インスリンは分泌されているのに、細胞がインスリンに反応しにくくなり、グルコースを取り込みにくくなる状態でしたね。このインスリン抵抗性は、肥満や運動不足、過剰な糖質摂取などが原因で起こることが多いです。糖質制限をすると、血糖値が上がりにくくなるため、インスリンの過剰な分泌が抑えられます。すると、細胞がインスリンにさらされる機会が減り、インスリンに対する感受性が回復する可能性があるんです。

例えるなら、いつも鳴りっぱなしの警報に慣れてしまっていた体が、静かになることで警報に再び敏感に反応できるようになるようなイメージです。インスリン抵抗性が改善されると、インスリンが少量でも効果を発揮できるようになり、血糖値が下がりやすくなります。これで糖尿病の改善に大きく貢献するのです。

糖質制限と体重減少の関係

糖質制限によって体重が減ると、間接的に糖尿病の管理がしやすくなることもあります。肥満、特に内臓脂肪型肥満は、インスリン抵抗性を悪化させる大きな原因の一つです。内臓脂肪からは、インスリンの働きを妨げる物質(アディポサイトカイン)が分泌されるため、肥満になるとインスリン抵抗性が高まり、血糖値が上がりやすくなります。

糖質制限をすると、体内の糖質(グリコーゲン)が減少し、代わりに脂肪がエネルギーとして使われるようになります。これにより、体重が減少し、内臓脂肪も減ることが期待できます。内臓脂肪が減ると、インスリンの働きを妨げる物質の分泌も減り、インスリン抵抗性が改善され、血糖値が下がりやすくなるんです。

糖質制限に関する研究報告

糖質制限がインスリン抵抗性を改善する可能性については、様々な研究結果があります。例えば、アメリカのバージニア大学の研究では、2型糖尿病患者さんが糖質制限を行うことで、インスリン抵抗性が改善し、HbA1c(ヘモグロビンA1c:過去1~2ヶ月の血糖値の平均を示す指標)が低下したという報告があります。

また、デューク大学の研究では、糖質制限食と低脂肪食を比較した結果、糖質制限食の方が体重減少効果が高く、HbA1cの改善も大きかったと報告されています。これらの研究結果は、糖質制限が糖尿病の改善に有効である可能性を示唆しています。

ただし、全ての研究で同じ結果が出ているわけではなく、糖質制限の効果には個人差があることも理解しておく必要があります。あなたの体質や病状に合わせて、医師や管理栄養士と相談しながら、適切な糖質制限の方法を選ぶことが大切です。

3. 糖尿病患者が知っておくべき糖質制限の種類と方法:ケトジェニックから緩やかな制限まで

糖質制限って一口に言っても、実は色々な方法があるんです。「ケトジェニックダイエット」や「低炭水化物ダイエット」など、聞いたことがある方もいるかもしれませんね。

ここでは、糖尿病患者さんが知っておくべき糖質制限の種類と、それぞれの具体的な方法、メリット・デメリット、注意点などを詳しく解説していきます!

ケトジェニックダイエット:最も厳格な糖質制限

ケトジェニックダイエットは、糖質制限の中でも最も厳格な方法です。

1日の糖質摂取量を極端に少なくし(例えば20g以下、総摂取カロリーの5~10%程度)、代わりに脂質を多く摂る(総摂取カロリーの70~80%程度)食事法です。この食事法では、体が糖質をエネルギーとして利用できなくなり、代わりに脂肪を分解して作られる「ケトン体」をエネルギー源とするようになります。

この状態を「ケトーシス」と呼びます。ケトーシス状態になると、体脂肪が燃焼しやすくなり、体重減少効果が高いと言われています。

メリットとしては、

  • 体重減少効果が高い

  • 血糖値コントロールの改善効果が高い

  • 食欲抑制効果がある などが挙げられます。

デメリットとしては、

  • 食事の制限が厳しいため、継続が難しい

  • 食物繊維不足になりやすい

  • ビタミン、ミネラル不足になりやすい

  • 開始初期に頭痛、倦怠感、便秘などの体調不良(ケトフルー)が起こることがある

  • 長期的な安全性に関するデータが少ない などが挙げられます。

特に糖尿病患者さんの場合、自己判断で行うと、低血糖や糖尿病性ケトアシドーシスなどのリスクが高まる可能性があります。必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行うようにしましょう。

低炭水化物ダイエット:多様なバリエーションが存在

低炭水化物ダイエットは、ケトジェニックダイエットほど厳格ではなく、1日の糖質摂取量を比較的少なくする(例えば50g~130g程度)方法です。この範囲内であれば、比較的自由に食事を組み立てることができます。

低炭水化物ダイエットには、様々なバリエーションがあります。

例えば、

  • アトキンスダイエット:糖質摂取量を段階的に増やしていく方法

  • サウスビーチダイエット:低GI食品を中心に摂取する方法

  • ゾーンダイエット:炭水化物、タンパク質、脂質の割合を一定に保つ方法 などがあります。

メリットとしては、

  • ケトジェニックダイエットよりも緩やかな制限なので、比較的継続しやすい

  • 血糖値コントロールの改善効果が期待できる

  • 体重減少効果が期待できる などが挙げられます。

デメリットとしては、

  • ケトジェニックダイエットほど劇的な効果は期待できない

  • 食事の組み立て方によっては、栄養バランスが偏る可能性がある

  • 自己判断で行うと、効果が出にくい場合がある などが挙げられます。

糖尿病患者さんの場合、低炭水化物ダイエットでも、自己判断で行うのは避けるべきです。医師や管理栄養士と相談し、あなたの状態に合った方法を選びましょう。

緩やかな糖質制限:最も取り組みやすい方法

緩やかな糖質制限は、1日の糖質摂取量を少しだけ減らす方法です。例えばご飯を半分にする、パンを全粒粉パンに変える、間食の甘いものを控える、といったことから始められます。この方法では、厳格な糖質制限のような劇的な効果は期待できませんが、最も取り組みやすく、継続しやすいのがメリットです。

また、極端な食事制限をしないため、体への負担も少なく、比較的安全に行うことができます。

メリットとしては、

  • 無理なく続けられる

  • 食事の満足度を保ちやすい

  • 栄養バランスを整えやすい などが挙げられます。

デメリットとしては、

  • 効果が出るまでに時間がかかる

  • 血糖値コントロールの改善効果は緩やか

  • 体重減少効果は小さい などが挙げられます。

糖尿病患者さんでも、比較的安全に行える方法ですが、それでも自己判断は避け、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。

糖尿病のタイプや状態に合わせた糖質制限の選び方

どの糖質制限の方法を選ぶかは、あなたの糖尿病のタイプ(1型か2型か)、合併症の有無、現在の治療内容、ライフスタイルなどによって変わってきます。

1型糖尿病の方は、インスリン注射をしている場合、厳格な糖質制限は低血糖のリスクを高める可能性があります。医師と相談し、インスリンの量を調整しながら、緩やかな糖質制限から始めるのが安全です。

2型糖尿病の方で、経口血糖降下薬を服用している場合も、低血糖のリスクがあります。医師と相談し、薬の量を調整しながら、糖質制限の程度を決める必要があります。2型糖尿病の方で、食事療法と運動療法のみで治療している場合は、比較的自由に糖質制限の方法を選べますが、それでも自己判断は避け、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。

腎臓の機能が低下している場合は、ケトジェニックダイエットは避けた方が良いでしょう。また、心臓病や脂質異常症などの合併症がある場合は、糖質制限の程度や脂質の摂取量について、医師とよく相談する必要があります。どの方法を選ぶにしても、定期的な血糖値測定や血液検査を行い、体の状態をチェックしながら、安全に糖質制限を行うことが大切です。

4. 糖尿病における糖質制限のリスクと注意点:低血糖、ケトアシドーシス…専門家との連携が必須

糖質制限は糖尿病治療に有効な手段の一つですが、一方で、いくつかのリスクや注意点があることも知っておく必要があります。特に糖尿病患者さんが糖質制限を行う場合は、自己判断で行うと危険な状態になる可能性もあるため、注意が必要です。

ここでは、糖尿病における糖質制限のリスクと注意点について、詳しく解説していきます。

低血糖:最も注意すべきリスク

糖尿病患者さんが糖質制限を行う際に、最も注意すべきリスクは「低血糖」です。低血糖とは、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度が正常値よりも低くなりすぎる状態のことです。通常、健康な人であれば、血糖値が下がりすぎると、体内のホルモン(グルカゴンなど)の働きによって血糖値を上げる仕組みが働きます。

しかし、糖尿病でインスリン注射や血糖降下薬を使用している場合は、この仕組みがうまく働かないことがあります。特に、インスリン注射やスルホニル尿素薬(SU薬)などの血糖降下薬を使用している方が、厳格な糖質制限を行うと、血糖値が下がりすぎて低血糖を起こすリスクが高まります。これは、薬の効果で血糖値が下がる一方で、食事からの糖質摂取が極端に少なくなるためです。

低血糖になると、以下のような症状が現れます。

  • 初期症状:強い空腹感、冷や汗、動悸、手足の震え、脱力感など

  • 中等度症状:頭痛、目のかすみ、集中力の低下、生あくび、イライラ感など

  • 重度症状:意識障害、けいれん、昏睡など

重度の低血糖は、命に関わる危険な状態です。低血糖の症状が現れたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む食品(ブドウ糖タブレット、ジュース、飴など)を摂取し、安静にする必要があります。意識がない場合は、周囲の人がグルカゴン注射を行うか、救急車を呼ぶ必要があります。

糖尿病性ケトアシドーシス:1型糖尿病患者は特に注意

1型糖尿病の方や、インスリン治療中の方が極端な糖質制限を行うと、「糖尿病性ケトアシドーシス」という状態になることがあります。これは、体が糖質をエネルギーとして利用できなくなり、代わりに脂肪を分解してケトン体という物質を作ることで起こります。

通常、健康な人でも、長時間の絶食や激しい運動などによってケトン体が作られることがありますが、糖尿病性ケトアシドーシスは、これとは全く異なる危険な状態です。1型糖尿病では、インスリンがほとんど分泌されないため、糖質をエネルギーとして利用することができません。

そのため、極端な糖質制限を行うと、体は脂肪を分解してケトン体を大量に作り始めます。ケトン体が増えすぎると、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、様々な症状を引き起こします。

糖尿病性ケトアシドーシスの症状としては、

  • 吐き気、嘔吐

  • 腹痛

  • 脱水症状

  • 頻尿

  • 呼吸が速くなる(クスマウル呼吸)

  • 意識障害 などがあります。

糖尿病性ケトアシドーシスは、命に関わる危険な状態であり、緊急の治療が必要です。1型糖尿病の方やインスリン治療中の方は、極端な糖質制限は絶対に避け、必ず医師の指示のもとで食事療法を行うようにしましょう。

その他の注意点:栄養バランス、腎機能、脂質異常症

糖尿病患者さんが糖質制限を行う際には、低血糖や糖尿病性ケトアシドーシス以外にも、注意すべき点があります。

  • 栄養バランスの偏り:
    糖質制限を行うと、炭水化物だけでなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素も不足しがちになります。
    特に、厳格な糖質制限を行う場合は、栄養補助食品(サプリメント)の利用も検討する必要があります。

  • 腎機能への影響:
    糖尿病性腎症がある場合、高タンパク質食(糖質制限ではタンパク質摂取量が増える傾向にある)が腎臓に負担をかける可能性があります。
    腎機能が低下している場合は、糖質制限の程度について、医師とよく相談する必要があります。

  • 脂質異常症の悪化:
    糖質制限を行うと、脂質の摂取量が増えることがあります。
    脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症など)がある場合は、脂質の種類や量に注意する必要があります。
    特に、飽和脂肪酸(動物性脂肪に多く含まれる)の摂りすぎは、動脈硬化を促進する可能性があるため、注意が必要です。

専門家との連携:自己判断は絶対に避ける

糖尿病患者さんが糖質制限を行う際は、これらのリスクを避けるため、自己判断で行うのは絶対に避け、必ず医師や管理栄養士と相談し、指導のもとで行うことが重要です。専門家は、あなたの糖尿病のタイプ、重症度、合併症の有無、現在の治療内容、ライフスタイルなどを考慮し、最適な糖質制限の方法を提案してくれます。

また、定期的な血糖値測定や血液検査を行い、体の状態をチェックしながら、糖質制限の程度を調整してくれます。特に、1型糖尿病の方やインスリン治療中の方は、必ず専門家と連携し、血糖値のモニタリングやインスリンの量の調整を行いながら、安全に糖質制限を行うようにしましょう。

自己判断で糖質制限を行うと、命に関わる危険な状態になる可能性があることを、決して忘れないでください。

5. 糖尿病と糖質制限のまとめ:個別化されたアプローチで血糖値を最適化

これまで、糖尿病と糖質制限について、様々な角度から詳しく解説してきました。糖質制限は、糖尿病管理の有効な手段の一つとして注目されていますが、全ての人に適しているわけではありません。ここでは、これまでの内容を総括し、糖尿病と糖質制限について、改めて重要なポイントを整理していきましょう。

糖質制限は万能ではない:メリットとデメリットを理解する

糖質制限は、血糖値の上昇を抑え、インスリン抵抗性を改善する効果が期待できるため、糖尿病治療の選択肢の一つとして有効です。体重減少効果もあり、肥満を合併している2型糖尿病患者さんにとっては、特に有益な場合があります。

しかし、糖質制限にはメリットだけでなく、デメリットやリスクもあります。特に、糖尿病患者さんが自己判断で糖質制限を行うと、低血糖や糖尿病性ケトアシドーシスなどの危険な状態を招く可能性があります。

また、糖質制限には様々な方法があり、どの方法が自分に合っているかは、糖尿病のタイプ、重症度、合併症の有無、ライフスタイルなどによって異なります。全ての人に同じ方法が有効とは限りません。

個別化されたアプローチの重要性

糖尿病治療の基本は、個々の患者さんの状態に合わせた「個別化されたアプローチ」です。糖質制限においても、この原則は変わりません。

あなたの糖尿病のタイプ(1型か2型か)、インスリン治療の有無、合併症の有無、年齢、性別、活動量、食の好み、ライフスタイルなどを総合的に考慮し、最適な糖質制限の方法を選ぶ必要があります。

例えば、

  • 1型糖尿病でインスリン注射をしている方は、厳格な糖質制限は低血糖のリスクが高いため、医師と相談しながら、緩やかな糖質制限から始めるのが安全です。

  • 2型糖尿病で経口血糖降下薬を服用している方も、低血糖のリスクがあるため、医師と相談し、薬の量を調整しながら、糖質制限の程度を決める必要があります。

  • 2型糖尿病で食事療法と運動療法のみで治療している場合は、比較的自由に糖質制限の方法を選べますが、それでも自己判断は避け、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。

  • 高齢者の場合は、過度な糖質制限は、栄養不足やフレイル(虚弱)のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。

  • 成長期の子供の場合は、糖質制限が成長に悪影響を及ぼす可能性があるため、原則として推奨されません。

専門家との連携:定期的な検査と相談

糖尿病と糖質制限において、最も重要なことは、専門家(医師、管理栄養士、糖尿病療養指導士など)との連携です。自己判断で糖質制限を行うのではなく、必ず専門家と相談し、指導のもとで行うようにしましょう。専門家は、あなたの状態を詳しく評価し、最適な糖質制限の方法を提案してくれます。

また、定期的な血糖値測定や血液検査、尿検査などを行い、糖質制限の効果や副作用をチェックし、必要に応じて食事内容や薬の量を調整してくれます。特に、インスリン治療中の方は、血糖値の自己測定(SMBG)が不可欠です。血糖値の変動を把握し、低血糖や高血糖を早期に発見し、対処することができます。

糖尿病と糖質制限:より良い生活のために

糖尿病の治療目標は、血糖値を良好にコントロールし、合併症を予防し、健康な人と変わらない生活の質(QOL)を維持することです。糖質制限は、この目標を達成するための有効な手段の一つですが、あくまで手段の一つであり、全てではありません。

バランスの取れた食事、適度な運動、適切な薬物療法、そしてストレス管理など、総合的なアプローチが重要です。糖質制限だけに頼るのではなく、他の治療法と組み合わせることで、より効果的に血糖値をコントロールし、健康的な毎日を送ることができます。

糖尿病との付き合いは、長い道のりです。一人で悩まず、専門家や周囲の人々のサポートを受けながら、あなたに合った方法で、より良い生活を目指しましょう。

この情報が少しでもお役に立てたら嬉しいです。

WRITING
西村恭平
西村恭平 Nishimura Kyohei

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。