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人生最高の1本に出会う。私が愛用する究極のアーモンド香水4選!

2025.05.23
人生最高の1本に出会う。私が愛用する究極のアーモンド香水4選!

甘いだけじゃない、ワンランク上のおしゃれを演出したいなら「アーモンド香水」がおすすめです。

実はアーモンドの香りはスイートなものから、ほんのりビターで知的な印象を与えるものまで様々。選び方次第で可愛らしさも大人の落ち着きも表現できる、非常に奥が深い香りなのです。

この記事を読めばあなたのなりたいイメージに合わせたアーモンド香水の選び方が分かり、周りと差がつく香り使いのヒントが得られます。人気アイテムを比較しながら、あなただけの特別な香りを見つけてみませんか?

1. アーモンド香水の世界へようこそ!甘いだけじゃないその魅力とは?

突然ですが、「アーモンドの香水」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?「アーモンドチョコレートみたいに、ただ甘いお菓子のような香りでしょ?」とか、「ちょっと子供っぽい香りなのかな?」なんて思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。もし、あなたがそう思っているなら、それはとっても大きな誤解なんです!

実は、アーモンド香水の世界は、あなたが想像しているよりもずっと奥が深く、複雑で、そして何よりも魅惑的なんですよ。もちろん、美味しそうな甘い香りのアーモンド香水もたくさんありますが、それだけじゃないんです。パウダリーで清潔感あふれる香り、ビターで官能的な香り、意外な素材との組み合わせで個性を放つ香りなど、実に多彩な表情を持っています。

香水の世界で使われるアーモンドには、大きく分けて2つの種類があります。一つは、私たちが普段よく口にする「スイートアーモンド」。そしてもう一つが、独特の強い香りを持つ「ビターアーモンド」です。特にビターアーモンドに含まれる「ベンズアルデヒド」という成分は、杏仁豆腐やチェリーを思わせる、あの特徴的で少しクセのある香りの源。このビターアーモンドをどう活かすかで、アーモンド香水の印象はガラリと変わるんです。

近年、自分だけの個性を表現できるニッチフレグランスの人気や、心を落ち着かせるグルマン系(お菓子のような美味しそうな香り)の香りのトレンドが続いています。その中で、ただ甘いだけではない、ほろ苦さや深み、温かみを持つアーモンド香水が、香水好きの間で改めて注目を集めているんですよ。

この記事では、そんな固定観念を覆す、個性的で特別なアーモンド香水を4つ厳選して、その魅力をたっぷりとご紹介していきます。それぞれの香りが持つ物語や、香りの移り変わり、どんなシーンで纏うのがおすすめかまで、詳しく解説していきますね。読み終わる頃には、きっとあなたも「アーモンド香水って、こんなに素敵だったんだ!」と、その奥深い世界の虜になっているはずです。さあ、私と一緒に、新しい香りの扉を開けてみませんか?これからご紹介する4つの特別なアーモンド香水で、新しい香りの世界を一緒に楽しみましょう!

2. パウダリーで優しいアーモンドの香水:セルジュ・ルタンス『ルーヴの乙女』

まず最初にご紹介するのは、まるで洗い立ての上質なリネンのシーツに包まれるような、あるいは高級な石鹸で丁寧に体を洗った後のような、清潔感あふれるパウダリーなアーモンド香水、セルジュ・ルタンスの『ルーヴの乙女』です。この香水が表現するアーモンドは、お菓子のレシピによく登場する甘くて香ばしいアーモンドとは一線を画します。それは、優しくてどこか懐かしい、人の肌にそっと寄り添うような、柔らかな香り立ちが最大の魅力です。

セルジュ・ルタンスという香りの芸術家

この香水を生み出したセルジュ・ルタンスというブランドについて、少しお話しさせてください。創設者であるセルジュ・ルタンス氏は、写真家、ヘアメイクアップアーティスト、ディレクターなど、多彩な顔を持つフランスのアーティストです。彼は1980年代から日本の化粧品ブランド資生堂の海外イメージクリエイターとして活躍し、その芸術的なビジュアル表現で世界に衝撃を与えました。そして1992年、自身の名前を冠したパルファム・セルジュ・ルタンスを立ち上げます。

彼の作る香水は、単なる「良い香り」ではありません。一つひとつに詩的な物語やインスピレーションが込められており、まるで文学作品や絵画に触れるような、芸術性の高い体験を提供してくれます。流行に左右されず、自らの信じる美を追求する姿勢から生まれる香りは、時にミステリアスで、時に挑戦的。だからこそ、世界中に熱狂的なファンを持つ、唯一無二のブランドなんです。『ルーヴの乙女』もまた、そんなルタンスの美学が凝縮された、忘れられないアーモンド香水の一つと言えるでしょう。

香りの構成と優美な移り変わり

『ルーヴの乙女』の香りを肌に乗せると、まず最初にキラキラとした光のようなアルデヒドと、少しだけひんやりとしたネロリ(オレンジの花)の香りが立ち上ります。このトップノートは、まるで美術館の静かで清らかな空気に入る瞬間のようです。そしてすぐに、この香水の心臓部であるアーモンドと、ヘリオトロープというお花のパウダリーな香りがふんわりと香り立ちます。

ここで香るアーモンドは、アーモンドそのものを砕いた香りというよりは、アーモンドの花や、アーモンドミルクのような、どこまでも優しくクリーミーなニュアンスです。そして、このアーモンドと見事に調和するのが、ヘリオトロープ。ヘリオトロープは「香水草」とも呼ばれ、バニラやチェリー、そしてアーモンドに似た、甘くパウダリーな香りを持つ花です。この二つが重なり合うことで、ベビーパウダーや高級な化粧石鹸を思わせる、清潔感に満ちた柔らかな香りが生まれるのです。

しかし、この香水がただ「優しいだけ」で終わらないのが、セルジュ・ルタンスの真骨頂。香りが肌に馴染んでくると、奥の方からインセンス(お香)やミルラ(樹脂)のスモーキーな香りが、まるで影のようにそっと現れます。このほのかな燻したような香りが、パウダリーな甘さに奥行きと複雑さを与え、どこかミステリアスで大人びた印象を加えてくれるのです。ラストは柔らかなムスクが全体を包み込み、肌そのものが美しく香っているかのような、穏やかな余韻を残して消えていきます。このアーモンド香水は、時間と共に表情を変え、纏う人を飽きさせません。

このアーモンド香水が似合う特別な時間

『ルーヴの乙女』という名前は、フランス・パリにあるルーヴル美術館にインスピレーションを得たと言われています。静謐な美術館で、遠い昔に描かれた乙女の肖像画を眺めているような、穏やかで内省的な時間。そんな情景が目に浮かぶような香りです。

このアーモンド香水は、自己主張が激しくないので、オフィスやフォーマルな場でも気兼ねなく使うことができます。白いシャツや上質なニットといった、シンプルで清潔感のある装いに合わせれば、あなたの魅力をより一層引き立ててくれるでしょう。また、その優しく落ち着いた香りは、休日に家でゆったりと過ごす時間や、一日の終わりに心を鎮めたい就寝前の香りとしても最適です。ベッドに入る前に手首に一吹きすれば、優しいアーモンドの香りに包まれて、穏やかな眠りにつけるはずです。

誰かにアピールするためというよりは、自分自身の心を落ち着かせ、満たすための香り。そんな表現がしっくりくる、お守りのような存在になってくれるアーモンド香水です。お菓子のような甘いアーモンド香水とは全く違う、知的で清潔感のあるアーモンドの魅力を、ぜひこの『ルーヴの乙女』で体験してみてください。きっと、あなたのアーモンド香水に対するイメージが、良い意味で裏切られるはずですよ。

3. グルマン系香水の最高峰!バニラとアーモンドが香るゲランの名香

次にご紹介するのは、甘くて美味しそうな「グルマン系」と呼ばれる香りのジャンルにおいて、まさに頂点に君臨すると言っても過言ではない、フランスの老舗メゾン・ゲランが誇る珠玉の逸品です。ゲランの香水の中から、特にバニラとアーモンドの組み合わせが絶妙な名香を取り上げたいと思います。ここでは、グルマン香水の傑作として名高い「ラール・エ・ラ・マティエール」コレクションの『スピリテューズ ドゥーブル ヴァニーユ』を例に、その魅力を紐解いていきましょう。この香水は、ただ甘いだけのお菓子の香りとは全く違います。温かみのある極上のバニラに、ほろ苦いアーモンドが見事なアクセントを加え、一度知ったら忘れられないほどリッチで深遠な香りの世界を創り出しているのです。

香りの帝王・ゲランの歴史と哲学

まず、ゲランというブランドの偉大さについて触れないわけにはいきません。1828年にピエール・フランソワ・パスカル・ゲランによってパリで創業されて以来、約200年もの長きにわたり、世界中の人々を魅了する香りを生み出し続けてきた「香りの名門」です。ゲランの歴史は、香水の歴史そのものと言ってもいいほど。世界で初めて現代的な香水の構成を持つと言われる『ジッキー』(1889年)や、伝説のオリエンタル香水『シャリマー』(1925年)など、香水史に燦然と輝く名作を数多く世に送り出してきました。

ゲランの香水作りへのこだわりは並大抵のものではありません。世界中から最高品質の天然香料を調達し、それらを芸術的な感性で組み合わせる技術は、まさに門外不出の宝。また、多くのゲランの香水には「ゲルリナーデ」と呼ばれる、ベルガモット、ジャスミン、ローズ、アイリス、バニラ、トンカビーンなどから成る秘伝の香りのベースが使われており、これがゲランの香水に共通する、気品と風格を与えています。今回ご紹介するアーモンドが使われた香水も、そんなゲランの揺るぎない哲学と美学の結晶なのです。

なぜ「グルマンの最高峰」と呼ばれるのか

『スピリテューズ ドゥーブル ヴァニーユ』、その名は「二重のバニラのスピリッツ(魂・お酒)」を意味します。その名の通り、この香水の主役はバニラ。しかし、それは決して単純なバニラエッセンスの香りではありません。ゲランは、香料としてのバニラの魅力を最大限に引き出すため、マダガスカル産の上質なバニラビーンズを使用し、ラム酒を思わせるようなリキュールのような深みと、少しスモーキーでウッディな側面を際立たせています。

香りを肌に乗せた瞬間、まず弾けるのは爽やかなベルガモットと、ピリッとスパイシーなピンクペッパー。このトップノートが、濃厚な甘さのプロローグとして、香りに光と刺激を与えます。そして間もなく、この香水の核心である「ドゥーブル ヴァニーユ」がその姿を現します。温かく、甘く、しかし決して単調ではない、複雑なバニラのアコード。そこに、イランイランやブルガリアンローズといった華やかなフローラルノートがそっと寄り添い、香りに官能的な厚みを与えます。

そして、ここで登場するのが名脇役のアーモンドです。この香水におけるアーモンドは、ほろ苦いビターアーモンドのニュアンス。この僅かな苦みが、バニラの豊かな甘さをぐっと引き締め、大人の知性を感じさせる洗練されたグルマンノートへと昇華させているのです。例えるなら、最高級のバニラアイスクリームに、砕いたばかりのビターアーモンドを散らしたような、あるいは上質なバニラ風味のクレームブリュレの、焦がしたカラメルのほろ苦い部分のような役割。この絶妙なバランス感覚こそ、ゲランが「グルマンの最高峰」と称される所以です。

心まで温まる贅沢な香りの体験

このアーモンド香水の魅力は、その複雑な香りの構成だけではありません。この香りを纏うことで得られる、幸福感に満ちた贅沢な体験こそが、多くの人々を虜にする理由です。ベースノートには、バルサム(樹脂)の一種であるベンゾインや、シダーウッド、インセンス(お香)が使われており、これらがバニラの甘さに温かみと落ち着き、そして驚くほどの持続性を与えています。

特に寒い季節、カシミアのセーターやウールのコートの袖口からこの香りがふわりと漂ってきたら…想像しただけで、うっとりしてしまいませんか?まるで暖炉の前で、大切な人と温かいブランケットにくるまりながら、上質なデザートワインを嗜んでいるかのような、満ち足りた気持ちにさせてくれます。ただ甘いだけではない、ベンゾインの樹脂っぽい深みや、シダーウッドのドライな温かみ、そしてアーモンドの知的なほろ苦さが何層にも重なり合って、まさに「大人のためのお菓子」と呼ぶにふさわしい、芸術的な香りを奏でるのです。

この香水は、アーモンドがいかにバニラの魅力を引き立て、香りに奥行きと洗練をもたらす名脇役であるかを、雄弁に物語っています。日常を忘れさせてくれるような、どこまでもリッチで贅沢な甘いアーモンド香水を探しているなら、ゲランの世界を覗いてみる価値は絶対にあります。それは、あなたの香りの価値観をがらりと変えてしまうほどの、素晴らしい体験になるはずですよ。

4. 官能的なビターアーモンドの香水ならコレ!ディオール『ヒプノティック プワゾン』

可愛らしいだけじゃない、ミステリアスで小悪魔的な魅力を演出したい。そんな気分の時に、あなたの背中をそっと押してくれる、まさに「禁断の果実」のようなアーモンド香水があります。それが、クリスチャン・ディオールが1998年に発表した名作香水、『ヒプノティック プワゾン』です。「Hypnotic Poison」とは、日本語に訳すと「催眠的な毒」。一度聞いたら忘れられない、その挑発的で魅惑的な名前を持つこの香水は、甘さよりも妖艶な「ビターアーモンド」の香りが主役となった、唯一無二の存在感を放ちます。

ファッションと香りの革命児、ディオール

クリスチャン・ディオールは、1947年に「ニュールック」でファッション界に革命を起こした伝説的なクチュリエですが、その香水の世界もまた、常に時代の先端を走り、女性たちに新しい女性像を提示し続けてきました。最初の香水『ミス ディオール』から始まり、1985年に発表された初代『プワゾン』は、その濃厚で大胆な香りで世界に衝撃を与え、「毒」という名の通り、社会現象を巻き起こすほどのセンセーショナルな香りでした。

『ヒプノティック プワゾン』は、そんな伝説的な「プワゾン」シリーズの一つとして誕生しました。初代の挑戦的なイメージを受け継ぎつつも、よりモダンで、纏う人の肌と一体化するような、官能的で中毒性のある香りを追求して作られました。この香水を手がけたのは、天才的な女性調香師として知られるアンニク・メナード。彼女は、この香水でアーモンドという香料の新たな可能性を切り開き、グルマンとオリエンタルが見事に融合した、新しい香りのジャンルを確立したのです。

「催眠的な毒」という名の秘密

なぜ、この香水は「催眠的な毒」と名付けられたのでしょうか。その秘密は、香りの中心に据えられた「ビターアーモンド」に隠されています。ビターアーモンドは、スイートアーモンドとは異なり、微量のシアン化水素(青酸)を含むため、そのままでは食用にできず、毒性があります(もちろん、香水に使われているのは安全に処理された香料ですのでご安心を!)。この「美味しそうなのに、どこか危険」という二面性こそが、『ヒプノティック プワゾン』のコンセプトそのものなのです。

香りを肌に乗せると、まず最初に現れるのが、その特徴的なビターアーモンドの香り。杏仁豆腐やアマレットリキュールを思わせる、甘く、少しパウダリーで、鼻の奥をツンと刺激するような独特の香り立ち。この一口目のインパクトが、まさに「毒」のよう。一度嗅いだら忘れられない、強烈な記憶を脳に刻み付けます。しかし、それは決して不快な香りではありません。むしろ、もっと嗅いでみたいと思わせる、抗いがたい魅力に満ちています。

この強烈なビターアーモンドの香りに、キャラウェイ(姫茴香)やリコリス(甘草)といった、少しスパイシーで独特の甘さを持つ香りが絡み合い、より複雑でミステリアスなオープニングを演出します。まるで、未知の世界への扉がゆっくりと開かれるような、スリリングな感覚を覚えるでしょう。

濃厚な花々と織りなす官能の世界

このアーモンド香水の「催眠的」な魅力は、ミドルノートからさらに加速していきます。濃厚で官能的な花の女王、ジャスミン・サンバック。そして、クリーミーで妖艶な甘さを持つチュベローズ。これらのパワフルなホワイトフローラルの香りが、ビターアーモンドと溶け合うことで、息をのむほどにリッチで官能的な世界観を創り出します。

アーモンドのほろ苦さと、ジャスミンの少しアニマリック(動物的)なニュアンス、そしてチュベローズのバターのような滑らかさが三位一体となり、肌の上でとろけるように香ります。それはまるで、真夜中に咲き乱れる花々の蜜のようであり、高級な洋菓子のような、グルマン的な魅力も感じさせます。この部分が、ただのビターアーモンドの香りで終わらない、『ヒプノティック プワゾン』の天才的な調香の妙と言えるでしょう。

そして、この官能的な饗宴を優しく、そして深く支えるのが、ラストノートのクリーミーなバニラとサンダルウッド、そして温かみのあるムスクです。バニラがアーモンドの甘さを引き立て、サンダルウッドが滑らかさと落ち着きを与え、ムスクが人の肌のぬくもりと一体化するように香りを長く持続させます。全ての香料が渾然一体となり、最終的には「その人自身の肌から発せられる、甘く妖艶な香り」へと変化していくのです。これこそが「催眠」の正体。気づいた時には、あなたもこの香りの虜になっていることでしょう。

この強烈な個性を持つアーモンド香水は、つける人やシーンを選ぶかもしれません。しかし、ここぞという時、自分の内に秘めたミステリアスな魅力や、小悪魔的な一面を解放したいと願うあなたにとって、これ以上ないほど心強い味方になってくれるはずです。黒いドレスや、ベルベットのようになめらかな素材の服に合わせて、特別な夜に纏ってみてください。「禁断の果実」の香りが、あなたの新たな魅力を開花させてくれるに違いありません。

5. 意外な組み合わせが癖になる!アーモンド香るジョー マローンの香水

これまでご紹介してきたアーモンド香水は、アーモンドそのものの香りを主役や名脇役として打ち出した、いわば「王道」のアーモンド香水でした。しかし最後にご紹介するのは、少し視点を変えた、意外な素材との組み合わせによってアーモンドのような魅力を引き出した、ユニークでモダンなアーモンド香水です。その香りを生み出したのは、洗練された香りと「香りの重ね付け(ペアリング)」という新しい楽しみ方を提案し、世界中で絶大な人気を誇る英国のライフスタイルブランド、ジョー マローン ロンドンです。

今回ご紹介するのは、ジョー マローン ロンドンの「コロン インテンス」という、より豊かで希少な香料を使ったコレクションの中から、『スカーレット ポピー コロン インテンス』。この香水は、一見するとアーモンドとは直接関係なさそうですが、その香りを紐解いていくと、驚くほどクリーミーでパウダリーな、まるでアーモンドミルクのような優しい甘さが隠されているんです。

シンプル&エレガントなジョー マローンの世界

ジョー マローン ロンドンは、1994年にロンドンで誕生した比較的新しいブランドですが、そのクリーンで上品なパッケージと、自然からインスピレーションを得た、纏う人を選ばない美しい香りで、瞬く間に世界的な人気ブランドとなりました。ブランドの最大の特徴は、先ほども触れた「フレグランス コンバイニング™」、つまり香りの重ね付けを推奨している点です。2種類以上の香水を組み合わせることで、自分だけのオリジナルの香りを作り出すことができるという、画期的なコンセプトを打ち出しました。

『スカーレット ポピー コロン インテンス』も、もちろん単体で使って非常に美しい香りですが、他の香りと組み合わせることで、また新たな表情を見せてくれます。そんな遊び心と、英国ブランドらしい洗練されたエレガンスが共存しているのが、ジョー マローン ロンドンの大きな魅力と言えるでしょう。

ポピーと大麦という斬新な発想が生む香り

この香水の名前にある「スカーレット ポピー」。ポピー(ケシ)の花は、鮮やかで美しい見た目とは裏腹に、実は香りを持たない花として知られています。では、ジョー マローンは、香りのない花をどのように表現したのでしょうか。その答えは、ポピーが自生する、アジアの草原の風景にありました。

インスピレーションの源となったのは、広大な草原に風に揺れる、深紅のポピー。その風景を香りで表現するために選ばれたのが、「大麦」や「アンブレット」といった、意外な素材でした。香りをスプレーした瞬間に感じるのは、アンブレットという植物の種子から採れる、ムスクに似たパウダリーで少しフルーティーな香り。これが、ポピーの持つ繊細な質感を表現します。

そして、この香水の個性を決定づけているのが、ハートノート(ミドルノート)で豊かに香る「大麦」です。ローストされた大麦の香ばしく、少し穀物的な甘さが、香りに温かみと、どこか懐かしい安心感を与えます。この香ばしい大麦の香りと、パウダリーなアンブレットが重なり合うことで、ふんわりと柔らかく、思わず顔をうずめたくなるような、心地よいテクスチャーが生まれるのです。

アーモンドミルクのようなクリーミーさの秘密

「でも、肝心のアーモンドはどこに?」と思いますよね。実はこの香水、『ヒプノティック プワゾン』のようにビターアーモンドが直接使われているわけではありません。アーモンドミルクのようなクリーミーで優しい甘さを生み出しているのは、ベースノートに使われている「トンカビーン」と、ハートノートに隠された「イチジク」の力なのです。

トンカビーンは、中南米原産のマメ科の植物の種子で、その香り成分の多くを「クマリン」が占めています。このクマリンは、桜餅の葉や杏仁、そしてアーモンドやバニラにも似た、甘くパウダリーな香りを持つのが特徴です。このトンカビーンが持つ、アーモンドを彷彿とさせる甘さが、香りのベースで全体を優しく支えています。

さらに、ハートノートで香るジューシーなイチジクが、ミルキーで青みがかった独特の甘さを加えます。このイチジクのミルキーなニュアンスと、トンカビーンのパウダリーな甘さ、そして大麦の香ばしさが絶妙に混ざり合うことで、まるでアーモンドミルクや、アーモンドプードルをたっぷり使った焼き菓子のような、クリーミーでグルマンな側面が顔を出すのです。これは、直接的なアーモンド香料を使わずに、他の素材の組み合わせで「アーモンドらしさ」を巧みに表現した、非常に洗練されたテクニックと言えるでしょう。

このアーモンド香水は、フローラルなポピーの印象と、穀物の温かみ、そしてアーモンドミルクのようなクリーミーな甘さが一体となった、他にはないユニークな個性を持っています。甘さはありながらも、大麦の香ばしさやパウダリーな質感が、べたっとした甘さになるのを防ぎ、あくまでも上品で心地よい香りに仕上げています。

ジョー マローンらしく、他の香りと重ねてみるのもおすすめです。例えば、同じくコロン インテンスの『ミルラ & トンカ』と重ねれば、トンカビーンの甘さが強調され、より深く官能的なアーモンド香水に。定番ラインの『ウッド セージ & シー ソルト』と重ねれば、塩気とミネラル感が加わり、甘さが引き締められて爽やかな印象に変わります。このように、自分だけのアーモンド香水を見つける楽しみがあるのも、この香水ならではの魅力です。意外な組み合わせが癖になる、モダンで優しいアーモンドの香りをぜひ試してみてはいかがでしょうか。

6. まとめ:あなたのお気に入りのアーモンド香水を見つけよう!

さて、ここまで4つの個性的で魅力あふれるアーモンド香水をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?「アーモンド香水は甘いだけ」というイメージが、少し変わったなら嬉しいです。最後に、今回ご紹介した香水をタイプ別にまとめてみましょう。

  • 優しく清潔感のある香りがお好きなら… セルジュ・ルタンス 『ルーヴの乙女』
    まるで高級な石鹸のような、パウダリーで肌馴染みの良いアーモンド香水です。お菓子の甘さではなく、ヘリオトロープの花と織りなす柔らかな香りが、あなたの日常にそっと寄り添い、心を落ち着かせてくれます。知的で清潔感のある雰囲気を纏いたいあなたにぴったりです。

  • リッチで深みのある甘さを求めるなら… ゲラン 『スピリテューズ ドゥーブル ヴァニーユ』
    グルマン系香水の最高峰とも言える、贅沢の限りを尽くした一本。極上のバニラに、ほろ苦いアーモンドが絶妙なアクセントを加えることで生まれる、複雑で奥行きのある香りはまさに「大人のためのお菓子」。寒い季節に、心まで温めてくれるような幸福感に満ちたアーモンド香水を求めているあなたにおすすめです。

  • ミステリアスで官能的な自分を演出したいなら… ディオール 『ヒプノティック プワゾン』
    「催眠的な毒」という名の通り、一度嗅いだら忘れられない中毒性を持つアーモンド香水。杏仁豆腐を思わせるビターアーモンドと、濃厚なジャスミン、バニラが絡み合い、妖艶でミステリアスな魅力を引き出してくれます。小悪魔的な一面を覗かせたい特別な夜に、あなたの強力な武器となるでしょう。

  • クリーミーでユニークな個性を楽しみたいなら… ジョー マローン ロンドン 『スカーレット ポピー』
    アーモンドそのものではなく、大麦やトンカビーン、イチジクといった意外な組み合わせで、アーモンドミルクのような優しくクリーミーな香りを表現したモダンな一本。ふんわりとパウダリーで、思わず抱きしめたくなるような心地よい香りは、あなたにしかない個性を引き立てます。香りの重ね付けで、自分だけのアーモンド香水を作る楽しみも味わえます。

このように、アーモンド香水と一口に言っても、その表情は実にさまざまです。スイートアーモンドの優しい甘さから、ビターアーモンドの妖艶な香り、そして他の香料との組み合わせで生まれる新しい魅力まで、その世界はどこまでも深く、探求するほどに新しい発見があります。

今回ご紹介した香水以外にも、世界にはまだまだ素晴らしいアーモンド香水がたくさん存在します。ぜひ、この奥深い世界をあなた自身で探求して、日々の暮らしを豊かに彩ってくれる、特別な一本を見つけてみてくださいね。香水カウンターで実際に肌に乗せて、時間が経つにつれて香りがどう変化していくかを体験するのも、香水選びの醍醐味の一つです。

あなただけの特別なアーモンド香水との出会いが、毎日をもっと楽しく、もっと色鮮やかなものにしてくれることを、心から願っています

WRITING
西村恭平
西村恭平 Nishimura Kyohei

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。