無添加
無添加シャンプーの落とし穴。成分表示でチェックすべき5つのポイント
2025.05.28
「とりあえず髪のために無添加シャンプーを使っている」…もし、そうなら少しだけお待ちください。
その選択、もしかしたらあなたの髪の悩みを解決できないばかりか、逆効果になっている可能性も。「無添加」という言葉のイメージだけで選んでいませんか?
この記事では多くの人が知らない無添加シャンプーの真実と、本当に美髪を目指すための”本物の”製品選びのコツを徹底解説します。あなたのシャンプー選びの常識がきっと変わるはずです。
1. 無添加シャンプーの定義とは?
さて、あなたが今お使いのシャンプーは、もしかして「無添加シャンプー」ではありませんか?「なんとなく髪に優しそう」という理由で選んでいる方も多いかもしれませんね。でも、「具体的に、何が”無”で、何が”添加”されていないの?」と聞かれると、意外と答えに詰まってしまうのではないでしょうか。
実は、それもそのはず。驚かれるかもしれませんが、この「無添加」という言葉には、国が定めた明確なルールや法的な定義が存在しないんです。つまり、「うちはシリコンを配合していないから無添加です」「私たちは合成香料を使っていないので無添加シャンプーです」というように、それぞれのメーカーが独自の基準で「無添加」を名乗っているのが現状なんですね。
だからこそ、私たちはその言葉の裏側にある「何が無添加なのか」をしっかり理解することが大切になります。ここでは、無添加シャンプーでよく見かける代表的な「〇〇フリー」「〇〇無添加」という表示について、一つひとつ丁寧に解説していきますね。
シリコンフリー(ノンシリコン)
おそらく「無添加」と聞いて最も多くの人が思い浮かべるのが、この「シリコンフリー」ではないでしょうか。シリコンは、化学的には「シロキサン結合を持つ有機ケイ素化合物」の総称で、シャンプーには主に「ジメチコン」や「シクロペンタシロキサン」、「アモジメチコン」といった成分名で配合されています。
シリコンの主な役割は、髪の1本1本を薄い皮膜でコーティングして、指通りを滑らかにしたり、キューティクルの剥がれを防いでツヤを出したりすることです。ドライヤーの熱から髪を守るという大切な働きもあります。
では、なぜシリコンが避けられることがあるのでしょうか。一部で「シリコンが毛穴に詰まって、頭皮トラブルや薄毛の原因になる」という説が広まったことが大きな理由として挙げられます。しかし、現在の化粧品に使われているシリコンは非常に安全性が高く、通常のシャンプーで洗い流せるように設計されています。皮膚科学の分野でも、シリコンが毛穴に詰まるという説を裏付ける有力な科学的根拠は示されていないのが実情です。
ただ、髪をコーティングする性質上、カラーやパーマの薬剤が浸透しにくくなる可能性や、使い続けると髪に皮膜が蓄積して、ゴワつきや重さを感じる人もいるかもしれません。また、軽やかでサラサラな仕上がりを好む方にとっては、シリコンによるしっとり感が不要な場合もあります。
シリコンフリーのシャンプーは、そうした髪本来の軽さを求める方や、後から使うトリートメント成分をより浸透させたいと考える方に選ばれる傾向がありますね。
サルフェートフリー
ここ数年で一気に知名度が上がったのが「サルフェートフリー」です。サルフェートとは、主に「ラウレス硫酸ナトリウム(Na)」や「ラウリル硫酸ナトリウム(Na)」といった、石油を原料として作られる「高級アルコール系」に分類される洗浄成分(界面活性剤)のことです。
これらの成分は、非常に泡立ちが良く、皮脂や汚れをしっかりと落とす高い洗浄力が特徴です。そのため、市販されている多くのシャンプーに採用されており、ワックスなどの整髪料をしっかり使う方や、皮脂分泌が多くて頭皮がベタつきやすい方には、さっぱりとした洗い上がりが得られるというメリットがあります。価格も比較的安価なため、製造コストを抑えられるというメーカー側の利点もあります。
一方で、その洗浄力の強さが、時としてデメリットになることも。必要な皮脂まで取り過ぎてしまい、頭皮の乾燥やかゆみ、フケを引き起こす原因になる可能性があるのです。また、タンパク質を変性させる作用が比較的強いため、敏感肌の方にとっては刺激に感じられることもあります。2005年に北里大学の研究グループが発表した論文でも、ラウリル硫酸ナトリウムが皮膚のバリア機能に影響を与える可能性が示唆されています。
カラーリングをしている髪にとっては、洗浄力が強いことで色落ちが早まる原因にもなり得ます。こうした背景から、頭皮への優しさや、カラーの持ちを重視する方を中心に、「サルフェートフリー」のシャンプーが支持を集めているというわけです。
パラベンフリー
「パラベン」という言葉も、防腐剤の代表格としてよく耳にしますね。「メチルパラベン」「プロピルパラベン」「ブチルパラベン」などがこれにあたります。
シャンプーは水分を多く含み、浴室という高温多湿な環境で保管されるため、雑菌が繁殖しやすい製品です。パラベンは、こうした雑菌(カビや酵母など)の増殖を防ぎ、製品の品質を長期間保つために配合される、非常に優秀な防腐剤です。ごく少量で高い効果を発揮し、安全性も高いことから、100年以上にわたって世界中の化粧品や食品、医薬品で使われてきた実績があります。
では、なぜパラベンフリーが謳われるのでしょうか。これは、20世紀後半に、ごく一部の人にアレルギー反応(接触皮膚炎)を引き起こす可能性があることが報告されたためです。また、過去の研究で内分泌系への影響(環境ホルモン作用)が疑われたこともありましたが、現在化粧品に使用が許可されている濃度では、人体への影響はないというのが専門家の一致した見解です。
とはいえ、過去に化粧品でアレルギーを経験したことがある方や、極力化学的な防腐剤を避けたいという自然派志向の方にとっては、「パラベンフリー」が一つの選択基準となります。パラベンフリーのシャンプーでは、代わりに「フェノキシエタノール」や「安息香酸Na」、あるいは植物由来の抗菌成分(ローズマリー葉エキスなど)が防腐剤として使われることが多くあります。
合成香料フリー
シャンプーの楽しみの一つに「香り」がありますよね。フローラル系、シトラス系、ウッディ系など、様々な香りがバスタイムを彩ってくれます。こうした香りの多くは、化学的に合成された「合成香料」によって作られています。合成香料は、天然香料に比べてコストが安く、品質や香りの強さが安定しているというメリットがあります。
しかし、この合成香料に含まれる特定の化学物質が、人によってはアレルギー反応や頭痛を引き起こす原因となることがあります。特に敏感肌の方や、化学物質に対して過敏な方、強い香りが苦手な方にとっては、刺激に感じられる場合があります。
「合成香料フリー」や「無香料」と表示されているシャンプーは、こうしたリスクを避けたい方のために作られています。ただし、「無香料」と書かれていても、原料そのものの匂いを打ち消すために別の香料(マスキング香料)が使われている場合もあるので注意が必要です。本当に香りがないものを求めるなら、全成分表示を確認するのが確実ですね。一方で、天然のエッセンシャルオイル(精油)で香り付けされた無添加シャンプーも多く、リラックス効果などが期待できるものもあります。
合成着色料フリー
シャンプーに配合されるピンクやグリーンといった色は、そのほとんどが「赤色〇号」「黄色〇号」といった「タール色素」と呼ばれる合成着色料によって付けられています。これらは製品の見た目を華やかにし、ブランドイメージを演出する役割を担っています。
基本的には、国が定めた厳しい安全基準をクリアしたものだけが使用されていますが、一部のタール色素には発がん性やアレルギー誘発の懸念が指摘されているものも存在します。もちろん、シャンプーに配合される量はごく微量であり、洗い流すものであるため、健康への影響を過度に心配する必要はないかもしれません。
しかし、「髪や頭皮を洗浄する」というシャンプー本来の目的を考えたとき、着色料は必ずしも必要な成分ではありません。そのため、余計な化学物質はできるだけ避けたいと考える方や、成分のシンプルさを追求する方にとって、「合成着色料フリー」は安心材料の一つとなるのです。
このように、「無添加」と一口に言っても、メーカーが何を「添加していない」と主張しているのかは様々です。大切なのは、表示を鵜呑みにするのではなく、あなた自身がどの成分を避けたいのか、どんな効果を求めているのかを明確にすること。それが、賢い無添加シャンプー選びの第一歩と言えるでしょう。
2. メリットだけじゃない!無添加シャンプーの長所と短所
「無添加」と聞くと、なんだか髪や頭皮にとって良いことばかりのようなイメージがありますよね。もちろん、刺激の強い特定の化学成分を避けることによるメリットはたくさんあります。でも、物事には必ず表と裏があるように、無添加シャンプーにも、知っておいてほしい「長所」と「短所」の両方が存在するんです。「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、両方の側面を正直に、そして詳しく見ていきましょう!
無添加シャンプーの嬉しい長所(メリット)
まずは、多くの方が期待しているであろうメリットからご紹介します。
頭皮への刺激をマイルドに抑えられる
これが最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。先ほど解説した「サルフェート」のような洗浄力の強い成分や、「合成香料」「合成着色料」「パラベン」といった化学成分は、人によっては頭皮への刺激となり、かゆみ、赤み、乾燥、フケといったトラブルの原因になることがあります。
特に、アトピー性皮膚炎の経験がある方や、季節の変わり目に肌が揺らぎやすい方、カラーやパーマを繰り返して頭皮が敏感になっている方にとって、これらの刺激となりうる成分を排除した無添加シャンプーは、まさに救世主のような存在です。
頭皮という土壌が健康でなければ、美しい髪という作物は育ちません。毎日のシャンプーで頭皮への負担を減らしてあげることは、健やかな髪を育むための基本中の基本なのです。頭皮トラブルに悩んでいる方は、一度、洗浄成分がマイルドな無添加シャンプーを試してみる価値は非常に高いと言えます。
髪本来の素の状態に近づける
シリコンフリーのシャンプーを使うと、髪が本来持っている軽さやしなやかさを実感しやすくなります。シリコンによるコーティングがないため、髪は「素髪(すがみ)」に近い状態になります。
最初は、コーティングがないことできしみを感じるかもしれませんが、使い続けるうちに、髪自身の水分保持力や油分のバランスが整い、サラサラで健康的な状態に変化していくのを感じられることがあります。
また、髪がコーティングされていないということは、その後に使うトリートメントやコンディショナーの補修成分・保湿成分が、髪の内部にダイレクトに浸透しやすくなるというメリットもあります。せっかく良いトリートメントを使っても、髪の表面がシリコンで覆われていては、その効果も半減してしまいますよね。無添加シャンプーで髪をリセットし、トリートメントでしっかりと栄養を補給する。この理想的なヘアケアサイクルを実現できるのも、大きな長所です。
皮脂の過剰な分泌を抑える効果が期待できる
「頭皮がベタつくから、洗浄力の強いシャンプーでしっかり洗わなきゃ!」と思っている方、実はそれ、逆効果かもしれません。
洗浄力の強すぎるシャンプーで頭皮の皮脂を根こそぎ奪ってしまうと、私たちの体は「大変だ!皮脂が足りない!もっと分泌しなきゃ!」と判断し、かえって皮脂を過剰に分泌してしまうことがあるのです。これが、いわゆるインナードライ(乾燥性脂性肌)の状態です。
洗浄力がマイルドなアミノ酸系などの無添加シャンプーに切り替えることで、頭皮に必要な潤いを残しつつ、余分な汚れだけを優しく洗い流せるようになります。すると、頭皮の皮脂バランスが徐々に整い、「洗いすぎ」による皮脂の過剰分泌が抑えられ、日中のベタつきやニオイの軽減に繋がることが期待できるのです。
知っておきたい無添加シャンプーの短所(デメリット)
一方で、良いことばかりではありません。使いこなすために、以下のデメリットもしっかり理解しておきましょう。
髪のきしみや、すすぎ時の絡まりを感じやすい
これは特に「シリコンフリー」のシャンプーで顕著なデメリットです。先ほども触れましたが、シリコンには髪の指通りを良くする役割があります。そのコーティング剤が入っていないため、洗っている最中や、すすぎの時に髪がギシギシときしんだり、指が引っかかったりすることがあります。
濡れた髪はキューティクルが開いて非常にデリケートな状態です。この時に無理に指を通そうとすると、キューティクルを傷つけ、切れ毛や枝毛の原因になってしまいます。
この「きしみ問題」を乗り越えるには、シャンプー前のブラッシングで髪の絡まりをほどいておくこと、シャンプーは直接髪につけず、手のひらでしっかりと泡立ててから、泡で頭皮をマッサージするように優しく洗うこと、そして、シャンプー後は必ずトリートメントやコンディショナーで油分を補い、キューティクルを整えてあげることが不可欠です。
泡立ちが控えめな製品が多い
豊かな泡は、洗っている時の心地よさだけでなく、髪同士の摩擦を防ぐクッションの役割も果たしてくれます。しかし、無添加シャンプーに多く使われるアミノ酸系やベタイン系といった洗浄成分は、サルフェート系の洗浄成分に比べて、一般的に泡立ちが控えめです。
そのため、普段からモコモコの泡で洗うことに慣れている方は、物足りなさを感じてしまうかもしれません。「泡立たないから汚れが落ちていないのでは?」と不安になり、ついついシャンプーをたくさん使い過ぎてしまう…なんてことも。
泡立ちの悪さをカバーするためには、やはり「予洗い」が重要です。シャンプーをつける前に、1分〜2分ほど、ぬるま湯で頭皮と髪をしっかりと洗い流しましょう。これだけで髪表面のホコリや皮脂の7〜8割は落ちると言われており、その後のシャンプーの泡立ちが格段に良くなりますよ。
洗浄力がマイルドなため、汚れが落ちにくい場合がある
頭皮に優しいマイルドな洗浄力は、裏を返せば「汚れを落とす力が弱い」ということにも繋がります。
普段からワックスやヘアオイル、スプレーといったスタイリング剤を多めに使用する方の場合、アミノ酸系などの優しいシャンプーでは一度の洗浄で落としきれず、残留してしまうことがあります。スタイリング剤が髪や頭皮に残ると、毛穴詰まりやニオイ、髪のベタつきの原因となります。
このような場合は、一度で済ませようとせず、二度洗いをするのがおすすめです。一度目のシャンプーでスタイリング剤や表面の汚れを軽く落とし、二度目のシャンプーで頭皮を中心に丁寧に洗うことで、すっきりと洗い上げることができます。あるいは、洗浄力の異なるシャンプーを2種類用意して、スタイリング剤を使った日だけ洗浄力の少し高いものを選ぶ、といった使い分けも賢い方法です。
一般的なシャンプーに比べて価格が高価な傾向
無添加シャンプーは、こだわりの成分を使っていることが多く、特にアミノ酸系の洗浄成分などは、石油系の洗浄成分に比べて原料コストが高くなります。また、植物エキスや天然オイルといった付加価値の高い成分を配合している製品も多いため、どうしても販売価格は高くなる傾向にあります。
ドラッグストアで500円前後で買えるシャンプーに慣れていると、2,000円や3,000円する無添加シャンプーは、少しハードルが高く感じるかもしれません。
しかし、これは「髪と頭皮の未来への投資」と考えることもできます。目先の価格だけでなく、長期的な視点で、トラブルのない健康な頭皮環境を維持できるのであれば、結果的にはコストパフォーマンスが良いと言えるかもしれませんね。まずはトライアルサイズなどで試してみて、自分の髪や頭皮との相性を確かめてから、本製品を購入するのがおすすめです。
3. 無添加シャンプーは洗浄成分が9割
ここまで無添加シャンプーの定義やメリット・デメリットについてお話ししてきましたが、いよいよ核心に迫っていきます!シャンプー選びで最も、最も重要なこと、それはズバリ「洗浄成分」です。
シャンプーの全成分表示を見ると、水の次に書かれているのが、この洗浄成分(界面活性剤)です。シャンプーの価格や品質、使用感を決定づける心臓部と言っても過言ではありません。どんなに「〇〇エキス配合!」とか「美容成分たっぷり!」と謳っていても、ベースとなる洗浄成分があなたの肌質や髪質に合っていなければ、その効果は半減してしまいます。
「無添加」という言葉だけに惑わされず、ぜひ洗浄成分の種類と特徴を理解して、あなたの頭皮と対話するようにシャンプーを選んでみませんか?ここでは、無添加シャンプーによく使われる代表的な3つの洗浄成分グループを、徹底的に比較・解説していきます!
アミノ酸系洗浄成分 - 優しさの代表格
まずご紹介するのは、現在の無添加シャンプー市場の主役とも言える「アミノ酸系」です。人間の体や髪の毛を構成しているタンパク質は、アミノ酸からできています。そのアミノ酸から作られた洗浄成分なので、髪や頭皮に対して非常に親和性が高く、刺激が少ないのが最大の特徴です。
洗い上がりがしっとりとしており、必要な潤いを奪いすぎないため、乾燥肌や敏感肌の方、髪のパサつきが気になる方に特におすすめです。アミノ酸系の中でも、実はさらに細かく種類が分かれていて、それぞれに個性があるんですよ。
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グルタミン酸系(例:ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルグルタミン酸TEAなど)
アミノ酸系の中でも特にマイルドで、コンディショニング効果が高いのが特徴です。洗い上がりのしっとり感は格別で、ダメージヘアや乾燥毛をしなやかにまとめてくれます。一方で、泡立ちが控えめで、洗浄力もかなり穏やかなため、脂性肌の方や、さっぱり感を求める方には物足りないかもしれません。価格も比較的高価な成分です。 -
アラニン系(例:ココイルメチルアラニンNa、ラウロイルメチルアラニンNaなど)
アミノ酸系の中では、比較的さっぱりとした洗い上がりで、泡立ちも良いバランスの取れた成分です。適度な洗浄力を持ちつつ、低刺激性はしっかりとキープしています。きしみも少なく、使い心地の良さから多くの高品質なシャンプーに採用されています。「ラウロイルメチルアラニンNa」は、その中でも特に優れた成分として知られています。 -
グリシン系(例:ココイルグリシンKなど)
クリーミーで豊かな泡立ちが特徴で、アミノ酸系の中でも洗浄力は高めです。さっぱりとした使用感がありながら、肌への刺激は少ないという、これまた優秀な成分。ただし、弱アルカリ性を示すことが多く、髪が少しきしみやすい傾向があります。 -
タウリン系(例:ココイルメチルタウリンNaなど)
こちらも豊かな泡立ちと、さっぱりとした洗い上がりが特徴。他のアミノ酸系成分と比べて、きしみが少なく、指通りが良い使用感が得られます。低刺激で安全性も高く、ベビーシャンプーに使われることもあります。
アミノ酸系シャンプーを選ぶ際は、こうした成分名の「ココイル〇〇」や「ラウロイル〇〇」といった部分に注目してみてください。あなたの求める洗い上がりに合わせて、最適なアミノ酸を見つけるのも、シャンプー選びの楽しみの一つですよ。
ベタイン系洗浄成分 - 刺激緩和のサポーター
次にご紹介する「ベタイン系」は、ベビーシャンプーや敏感肌用の製品に引っ張りだこの、とにかく低刺激な洗浄成分です。サトウダイコン(甜菜)などの植物から作られる両性界面活性剤(プラスとマイナスの両方のイオンを持つ)で、非常にマイルドな洗浄力を持っています。
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代表的な成分名:コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸Naなど
ベタイン系成分は、それ単体でメインの洗浄成分として使われることは少なく、アミノ酸系や、時には高級アルコール系(サルフェートなど)の洗浄成分と組み合わせて使われるのが一般的です。
なぜなら、ベタイン系には、他の洗浄成分が持つ刺激を緩和してくれる「刺激緩和作用」があるからです。例えば、洗浄力の強いラウレス硫酸Naにコカミドプロピルベタインを配合すると、シャンプー全体の刺激性をグッと下げることができます。まさに縁の下の力持ち、名サポーターといった存在ですね。
また、天然のコンディショニング効果も持ち合わせているため、髪の柔軟性を高め、洗い上がりのごわつきを抑えてくれる効果も期待できます。全成分表示の上位に、アミノ酸系成分と並んでベタイン系の成分名があれば、それは「より低刺激で、使い心地の良さにも配慮した処方なんだな」と判断することができます。
石けん系洗浄成分 - シンプル&パワフル
最後は、古くから使われている「石けん系」です。天然の油脂(牛脂やヤシ油など)とアルカリを反応させて作られる、非常にシンプルな洗浄成分です。「石ケン素地」や「カリ石ケン素地」、「脂肪酸ナトリウム」「脂肪酸カリウム」といった成分名で表示されます。
石けん系の最大のメリットは、その高い洗浄力とさっぱりとした洗い上がりです。皮脂や汚れをしっかりと落としてくれるので、頭皮のベタつきやニオイが気になる方、脂性肌の方、短髪の男性などには、根強い人気があります。
また、環境に優しいという側面も見逃せません。石けんは、排水として流された後、水と二酸化炭素に素早く分解される「生分解性」が非常に高いのです。環境への負荷を意識する方にとっては、大きな魅力と言えるでしょう。
しかし、石けん系シャンプーには、使いこなす上で知っておくべき重要な注意点があります。
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アルカリ性によるきしみ
健康な髪や頭皮は弱酸性(pH4.5〜5.5)に保たれていますが、石けん系シャンプーは弱アルカリ性です。アルカリ性に傾くと、髪の表面を覆っているキューティクルが開いてしまい、これが「きしみ」や「ごわつき」の直接的な原因となります。開いたキューティクルは非常に無防備な状態で、ダメージを受けやすくなってしまいます。 -
石けんカスの発生
石けんは、水道水に含まれるマグネシウムやカルシウムといったミネラル分と反応して、「石けんカス(金属石鹸)」という不溶性の成分を生成します。この石けんカスが髪に付着すると、ゴワつきやベタつき、くすみの原因になってしまうのです。
これらのデメリットを解消するために、石けん系シャンプーを使った後は、クエン酸やお酢を主成分とした「酸性リンス」で髪を弱酸性に戻し、キューティクルを引き締めてあげることが、ほぼ必須となります。この一手間を惜しまないことが、石けん系シャンプーを快適に使うための絶対条件なのです。シンプルだからこそ、少しだけ知識と工夫が必要な、上級者向けの洗浄成分と言えるかもしれませんね。
4. 【お悩み別】あなたにピッタリな無添加シャンプーの選び方
さて、ここまで無添加シャンプーの定義、メリット・デメリット、そして心臓部である洗浄成分について、かなりマニアックに解説してきました。「理論はわかったけど、じゃあ結局、私にはどれが合っているの?」そんな声が聞こえてきそうですね!
ご安心ください。ここからは、具体的なお悩み別に、どんな成分に着目して無添加シャンプーを選べば良いのか、具体的な選び方のポイントを分かりやすくガイドしていきます。あなたの髪と頭皮のお悩みに、ぴったりのパートナーを見つけましょう!
乾燥・フケが気になるあなたへ
「頭皮が乾燥して、肩にパラパラと白いフケが…」「なんだか頭皮がつっぱる感じがする」そんな乾燥によるお悩みをお持ちのあなた。シャンプー選びの最優先事項は、何と言っても「保湿」と「優しい洗浄力」です。
チェックすべき洗浄成分
洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮に必要な皮脂まで奪い去り、乾燥をさらに悪化させてしまいます。選ぶべきは、間違いなく「アミノ酸系」の洗浄成分です。特に、しっとりとした洗い上がりが特徴の**「ココイルグルタミン酸Na」や「ラウロイルグルタミン酸TEA」**がメインで配合されているものがおすすめです。これらの成分は保湿力も高く、洗いながら潤いを補給してくれます。もちろん、ベタイン系との組み合わせも大歓迎です。
チェックすべき保湿・保護成分
洗浄成分と合わせて、保湿効果の高い成分がしっかり配合されているかどうかも重要なチェックポイントです。全成分表示を見て、以下のような成分を探してみてください。
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基本の保湿成分: グリセリン、BG、DPG
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高保湿成分: セラミド(特にセラミドNG, NP, APなど)、ヒアルロン酸Na、リピジュア®(ポリクオタニウム-51)
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植物由来の保湿成分: アロエベラ液汁、カミツレ花エキス、ローズマリー葉エキス、シア脂(シアバター)
これらの成分は、角質層の水分を保持し、頭皮のバリア機能をサポートしてくれます。逆に、成分表示の上位に「エタノール」が記載されているものは、清涼感がある一方で水分を蒸発させやすく、乾燥を助長する可能性があるので注意が必要です。
髪のダメージ・パサつきをケアしたいあなたへ
「カラーやパーマの繰り返しで髪がギシギシ…」「毛先がパサついて、ツヤがない」そんな深刻なダメージヘアにお悩みのあなたには、髪を優しく洗い上げながら、内部から補修してくれる成分が配合されたシャンプーが不可欠です。
チェックすべき洗浄成分
ダメージを受けた髪は、キューティクルが剥がれやすく、非常にデリケートな状態です。摩擦は絶対に避けたいので、洗浄力はマイルドで、コンディショニング効果の高い**「アミノ酸系」がベストチョイスです。特に、適度な洗浄力と良好な泡立ちを両立した「ラウロイルメチルアラニンNa」や、しっとりまとまる「ココイルグルタミン酸TEA」**などが配合されたものが良いでしょう。
チェックすべき補修・保湿成分
傷んだ髪には、栄養補給が欠かせません。「加水分解〇〇」という名前の成分は、髪の主成分であるタンパク質(ケラチンなど)を小さく分解したもので、髪の内部に浸透してダメージホールを埋めてくれる効果があります。
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内部補修成分: 加水分解ケラチン(羊毛)、加水分解シルク、加水分解コラーゲン
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特に注目の高機能成分:
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ペリセア(ジラウロイルグルタミン酸リシンNa): わずか1分という短時間で髪の内部に浸透し、ダメージを補修しながらハリ・コシを与える高機能成分です。
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γ-ドコサラクトン(エルカラクトン): 菜種由来の成分で、ドライヤーやヘアアイロンの「熱」に反応して髪のアミノ酸と結合し、キューティクルのめくれ上がりを補修してくれる画期的な成分です。使い続けることで、うねりや絡まりを改善する効果が期待できます。
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また、シリコンフリーのシャンプーでも、指通りを良くするために良質な植物オイルが配合されているものも多くあります。アルガニアスピノサ核油(アルガンオイル)、ホホバ種子油、ツバキ種子油などが代表的です。これらのオイルは、髪の表面を優しくコーティングし、水分の蒸発を防いでくれます。
敏感肌でかゆみが出やすいあなたへ
「新しいシャンプーを使うと、すぐにかゆみや赤みが出てしまう」「使えるシャンプーが限られていて、いつも探すのに苦労する」そんなデリケートな敏感肌のあなたは、とにかく「低刺激」であることを徹底的に追求しましょう。
チェックすべき洗浄成分
刺激の少なさで選ぶなら、「ベタイン系」が配合されているものが最も安心感があります。「コカミドプロピルベタイン」や「ココアンホ酢酸Na」などが全成分表示の上位にあるかチェックしましょう。アミノ酸系の中でも、特にマイルドな「ココイルグルタミン酸」系も良い選択です。洗浄力よりも、とにかく肌への優しさを最優先してください。
チェックすべき添加物と抗炎症成分
敏感肌の方は、「何が入っているか」と同時に「何が入っていないか」も非常に重要です。以下の成分が無添加であるかを確認しましょう。
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サルフェート(ラウレス硫酸Naなど)
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合成香料
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合成着色料
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パラベン
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エタノール
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石油系界面活性剤
これらの成分がフリーであることに加え、「アレルギーテスト済み」「パッチテスト済み」「スティンギングテスト済み」といった記載がある製品は、より安心して試すことができます。(※すべての人にアレルギーや皮膚刺激が起こらないというわけではありません。)
さらに、炎症を抑えて肌荒れを防ぐ効果のある「抗炎症成分」が配合されていると、より心強い味方になってくれます。
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抗炎症成分の代表例: グリチルリチン酸2K(甘草由来)、アラントイン
これらの成分は、医薬部外品(薬用シャンプー)によく配合されています。肌トラブルが深刻な場合は、こうした薬用の無添加シャンプーを選択肢に入れるのも一つの手です。
5. 奥深い無添加シャンプーの世界を楽しもう!
ここまで、本当に長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました!
無添加シャンプーの世界が、あなたが思っていたよりもずっと奥深く、そして面白いものだと感じていただけたなら、私にとってこれ以上の喜びはありません。「髪に良さそう」という漠然としたイメージから一歩踏み出し、「何が無添加で、その成分が自分の髪や頭皮にどんな影響を与えるのか」を理解すること。これこそが、無添加シャンプーの真価を引き出し、その恩恵を最大限に受けるための鍵なのです。
もう、あなたは広告のキャッチコピーや、おしゃれなパッケージの雰囲気だけでシャンプーを選ぶ必要はありません。これからはぜひ、お店でシャンプーを手に取ったら、くるりと裏返して「全成分表示」という名の宝の地図を眺めてみてください。
「お、これはラウロイルメチルアラニンNaが主成分だから、泡立ちも良くて使いやすそうだな」「乾燥が気になるから、セラミドとグリセリンが入っているこっちにしてみようかな」「この香りは天然の精油だけを使っているんだ!」
そんな風に、成分と対話しながら、あなただけの最高のパートナーを見つけ出す旅は、きっと想像以上にエキサイティングなはずです。
正しい知識は、あなたを不要な情報や不安から守ってくれる最強の盾になります。そして、自分にぴったりのシャンプーと出会えた時、毎日のバスタイムは、単なる作業から「自分を慈しむ、特別な時間」へと変わっていくことでしょう。
これからも、奥深い無添加シャンプーの世界を存分に楽しみながら、誰もが羨むような理想の美髪を、あなた自身の手で育てていってくださいね。もっと快適で、もっと心躍るヘアケアライフが、あなたを待っています!

大学を卒業後、酒類・食品の卸売商社の営業を経て2020年2月に株式会社ブレーンコスモスへ入社。現在は「無添加ナッツ専門店 72」のバイヤー兼マネージャーとして世界中を飛び回っている。趣味は「仕事です!」と即答してしまうほど、常にナッツのことを考えているらしい。